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第二章 本当の心
第二十六話 スイーツ学院
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無事にスイーツ学院の入学式を乗り越え、今日は初の授業の日。
普通なら、今までの人生で友達の一人や二人、存在していても良さそうなのものだが、私の場合は政略結婚でライト様達に貢献しようと思って、必要な社交はしていても、特別に仲の良い友達が居なかった。
友達を作って、そこから交友関係が広がってしまえば、もしかしたら、特別な人ができてしまうかもしれない。そして、それは政略結婚の邪魔になってしまうかもしれない。
そんな懸念から、私は友達を作らない、友達らしき人が居ても、必要以上に踏み込む関係にはならないと決めて行動してきた。しかし……。
「友達、できるかな……」
政略結婚で貢献というのは、ただの私のエゴだったと気付いた今、ここで友人を作ることも悪くはないと思っていた。もちろん、無理に作る必要はないのだろうが、少しは楽しむという方向に意識を切り替えても良いのではないかと思うくらいには、私の意識は変わっていた。
「あっ、ねぇっ! あなたもAクラス?」
「は、はい。そうですけど……」
ドキドキしながら教室の前に立つと、ふいに、背後から声をかけられて振り向く。
そこには、ふんわりとしたピンクの髪の明るそうな女の子が居た。
「そっか! 私もAクラスなんだぁ。あっ、自己紹介がまだだったね! 私は、ロレーヌっ! よろしく!」
明るそうという印象に違うことなく、彼女、ロレーヌは元気よく自己紹介をしてくる。
「わ、私は、ミオ・ロットールです。よろしくお願いします」
「えっ! 家名があるってことは、お貴族様!? ご、ごめんなさい。こんな、気安く声をかけてしまって……」
そう言われて、確かに、ロレーヌは名前しか言わなかったと考え、それでもすぐに、それはどうでも良いことだと判断する。
目の前で『貴族に声をかけてしまった』と怯える彼女を、私は逃がすつもりはなかった。
「いいえ、ぜひ、これからもよろしくお願いします。私に声をかけてくれて、ありがとう」
私のコミュニケーション能力は、恐らく、さほど高くはない。声をかけてくれて、友達になれそうな彼女を逃してしまえば、これから友達ができる保証などない。
「えっ? えっ?」
「さ、入りましょう。席が近いと良いですね」
どうにも混乱しているらしいロレーヌを、多少強引に連れて教室へと入る。しかし……。
「おっ、身の程知らずが来たぞ!」
教室の中に居た男子生徒は、ニヤニヤしながらロレーヌを指さして妙なことを言い放つ。
「おいおい、ホントだよ。追放された罪人が何でこの学院に来たんだぁ?」
「っ……」
無礼極まりない彼らの言葉に、ロレーヌはビクッと体を震わせて俯く。
私自身も、『追放された罪人』という言葉は気になるものの……。
「ロレーヌ、席は隣同士みたいですよ。卒業まで一緒に頑張りましょうね」
「えっ、あ、あの、ロットール様……?」
「ミオと呼んでください。それと、Aクラスで次席なのですから、あんな小者の言葉なんて無視すればいいのです」
実は、この学院での席順は成績の順番となっている。
黒板にある席順を見る限り、私が首席で、その隣のロレーヌは次席で間違いない。
それだけ優秀な人物に言いがかりをつけるような者に、私は関わるつもりなどなかった。
「何だと!?」
そう、例え……。
「私は、ミオ・ロットール。何か抗議があるのであれば、ロットール家がお相手をいたしましょう」
権力を振りかざしてでも、私は、この新たな友人を守るつもりだった。
普通なら、今までの人生で友達の一人や二人、存在していても良さそうなのものだが、私の場合は政略結婚でライト様達に貢献しようと思って、必要な社交はしていても、特別に仲の良い友達が居なかった。
友達を作って、そこから交友関係が広がってしまえば、もしかしたら、特別な人ができてしまうかもしれない。そして、それは政略結婚の邪魔になってしまうかもしれない。
そんな懸念から、私は友達を作らない、友達らしき人が居ても、必要以上に踏み込む関係にはならないと決めて行動してきた。しかし……。
「友達、できるかな……」
政略結婚で貢献というのは、ただの私のエゴだったと気付いた今、ここで友人を作ることも悪くはないと思っていた。もちろん、無理に作る必要はないのだろうが、少しは楽しむという方向に意識を切り替えても良いのではないかと思うくらいには、私の意識は変わっていた。
「あっ、ねぇっ! あなたもAクラス?」
「は、はい。そうですけど……」
ドキドキしながら教室の前に立つと、ふいに、背後から声をかけられて振り向く。
そこには、ふんわりとしたピンクの髪の明るそうな女の子が居た。
「そっか! 私もAクラスなんだぁ。あっ、自己紹介がまだだったね! 私は、ロレーヌっ! よろしく!」
明るそうという印象に違うことなく、彼女、ロレーヌは元気よく自己紹介をしてくる。
「わ、私は、ミオ・ロットールです。よろしくお願いします」
「えっ! 家名があるってことは、お貴族様!? ご、ごめんなさい。こんな、気安く声をかけてしまって……」
そう言われて、確かに、ロレーヌは名前しか言わなかったと考え、それでもすぐに、それはどうでも良いことだと判断する。
目の前で『貴族に声をかけてしまった』と怯える彼女を、私は逃がすつもりはなかった。
「いいえ、ぜひ、これからもよろしくお願いします。私に声をかけてくれて、ありがとう」
私のコミュニケーション能力は、恐らく、さほど高くはない。声をかけてくれて、友達になれそうな彼女を逃してしまえば、これから友達ができる保証などない。
「えっ? えっ?」
「さ、入りましょう。席が近いと良いですね」
どうにも混乱しているらしいロレーヌを、多少強引に連れて教室へと入る。しかし……。
「おっ、身の程知らずが来たぞ!」
教室の中に居た男子生徒は、ニヤニヤしながらロレーヌを指さして妙なことを言い放つ。
「おいおい、ホントだよ。追放された罪人が何でこの学院に来たんだぁ?」
「っ……」
無礼極まりない彼らの言葉に、ロレーヌはビクッと体を震わせて俯く。
私自身も、『追放された罪人』という言葉は気になるものの……。
「ロレーヌ、席は隣同士みたいですよ。卒業まで一緒に頑張りましょうね」
「えっ、あ、あの、ロットール様……?」
「ミオと呼んでください。それと、Aクラスで次席なのですから、あんな小者の言葉なんて無視すればいいのです」
実は、この学院での席順は成績の順番となっている。
黒板にある席順を見る限り、私が首席で、その隣のロレーヌは次席で間違いない。
それだけ優秀な人物に言いがかりをつけるような者に、私は関わるつもりなどなかった。
「何だと!?」
そう、例え……。
「私は、ミオ・ロットール。何か抗議があるのであれば、ロットール家がお相手をいたしましょう」
権力を振りかざしてでも、私は、この新たな友人を守るつもりだった。
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