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第一章 帰還と波乱
第十四話 滅亡の危機?(アルト視点)
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天使の言葉によって、ティアルーン国ではほぼ全ての黒目黒髪の人間が捕らえられた。いや、それだけではない。黒目か黒髪か、どちらかの要素を持つ者も捕らえられ、彼らの安否は今もなお不明だ。
「ティアルーン国……ならば、さしずめ、スーリャ様は悪魔の母親といったところか?」
「あぁ、おそらく、な。テロリストどもも、粛清だの何だの言ってたところだし、間違ってねぇと思うぞ」
天使と言われる少女がやってきたのは、約二ヶ月前。黒目黒髪を特別視していたティアルーン国で、悪魔と断じられた人間達が逃げられるはずもなく、二週間ほどで、国内の浄化と称した捕縛が終わったらしい。そして、そこで天使はやらかした。
『私は、悪魔の殲滅のために参りました。ゆえに、他の国に居る悪魔をも捕らえねばなりません。ただ、私一人では力不足です。どうか、どうか、善良なるティアルーンの民達よ。私に、力を貸してくださいませんか?』という演説が、よりにもよってティアルーン国の王城から行われたらしい。ようするに……他国へと、その浄化だか粛清だか殲滅だかの手を伸ばし始めたわけだ。
「頭が痛いとはこのことだな」
「あぁ……それに、今、ユミリア様とイルト王子が帰ってきてるんだろう? ……やばい予感しかしねぇぞ?」
ユミリア嬢に向けられる悪意にはイルトが、イルトに向けられる悪意にはユミリア嬢が、過剰なまでの報復をするであろうことが、やすやすと想像できてしまう自分に、私はさらに頭痛が増した気がした。
「ユミリア様達に喧嘩を売って……ティアルーン国って残るかぁ?」
「やめてくれ。頼むから。想像してしまうだろうっ!」
ティアルーン国、謎の滅亡。そんなことになれば、私はもう、どうして良いのか分からない。少なくとも、父上は卒倒するかもしれないと考えると、自らが王太子という身分にあることが恐ろしくて仕方ない。
「土下座して頼めば、聞いてくんねぇかなぁ?」
「その程度で止まるなら、私はいくらでも土下座する」
「やめとけ、王太子。ぜってー無駄だ」
「なら言うな」
遠い目で希望を述べたのはローランのはずなのに、私が土下座してみせるという意を示せば、あっさりと発言を翻す。しかし、まぁ、私も土下座程度で止まってくれる二人ではないことをよぉく理解しているので、これは、ローランと私の軽い現実逃避のための掛け合いではあった。
「まっ、頼むだけ頼んどこうぜ。そんで滅亡したら、それまでだ」
「極力滅亡は避けたい、が、打てる手は全て打っておかなければな」
「ほっ、報告しますっ! 現在、敷地内にて、テロリストが逃走中です!!」
そして、突如として荒々しく扉を開けてもたらされた報告に、私達は『すぐに安全な場所へ』とか言い始めた騎士を無視して、とにかくユミリア嬢達の元へと向かった。全ては、ティアルーンという国を滅ぼさないために。
「ティアルーン国……ならば、さしずめ、スーリャ様は悪魔の母親といったところか?」
「あぁ、おそらく、な。テロリストどもも、粛清だの何だの言ってたところだし、間違ってねぇと思うぞ」
天使と言われる少女がやってきたのは、約二ヶ月前。黒目黒髪を特別視していたティアルーン国で、悪魔と断じられた人間達が逃げられるはずもなく、二週間ほどで、国内の浄化と称した捕縛が終わったらしい。そして、そこで天使はやらかした。
『私は、悪魔の殲滅のために参りました。ゆえに、他の国に居る悪魔をも捕らえねばなりません。ただ、私一人では力不足です。どうか、どうか、善良なるティアルーンの民達よ。私に、力を貸してくださいませんか?』という演説が、よりにもよってティアルーン国の王城から行われたらしい。ようするに……他国へと、その浄化だか粛清だか殲滅だかの手を伸ばし始めたわけだ。
「頭が痛いとはこのことだな」
「あぁ……それに、今、ユミリア様とイルト王子が帰ってきてるんだろう? ……やばい予感しかしねぇぞ?」
ユミリア嬢に向けられる悪意にはイルトが、イルトに向けられる悪意にはユミリア嬢が、過剰なまでの報復をするであろうことが、やすやすと想像できてしまう自分に、私はさらに頭痛が増した気がした。
「ユミリア様達に喧嘩を売って……ティアルーン国って残るかぁ?」
「やめてくれ。頼むから。想像してしまうだろうっ!」
ティアルーン国、謎の滅亡。そんなことになれば、私はもう、どうして良いのか分からない。少なくとも、父上は卒倒するかもしれないと考えると、自らが王太子という身分にあることが恐ろしくて仕方ない。
「土下座して頼めば、聞いてくんねぇかなぁ?」
「その程度で止まるなら、私はいくらでも土下座する」
「やめとけ、王太子。ぜってー無駄だ」
「なら言うな」
遠い目で希望を述べたのはローランのはずなのに、私が土下座してみせるという意を示せば、あっさりと発言を翻す。しかし、まぁ、私も土下座程度で止まってくれる二人ではないことをよぉく理解しているので、これは、ローランと私の軽い現実逃避のための掛け合いではあった。
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「極力滅亡は避けたい、が、打てる手は全て打っておかなければな」
「ほっ、報告しますっ! 現在、敷地内にて、テロリストが逃走中です!!」
そして、突如として荒々しく扉を開けてもたらされた報告に、私達は『すぐに安全な場所へ』とか言い始めた騎士を無視して、とにかくユミリア嬢達の元へと向かった。全ては、ティアルーンという国を滅ぼさないために。
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