悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第十三話 テロリストの背景(アルト視点)

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「やつらの背後関係は?」

「まだ、何とも言えねぇが、どうにもティアルーン国の影が見え隠れする状態ではあるな」


 最初にスーリャ様を襲ったテロリスト達が捕縛された後、私は、王家の守り人代行として働く男、ローラン・トーテスと話し合っていた。元々ユミリア嬢に忠誠を誓う彼は、竜人という種族であり、黒目黒髪のたくましい肉体美を持つ男であり、過去に勇者として魔王を倒した英雄でもある。ついでに言うと、このリーリス国で黒目黒髪が嫌われていた原因の一端を担う存在でもあった。


「ティアルーン国……母上の母国、か……」

「あそこは……今、かなり大きな問題を抱えてるからなぁ」


 ティアルーン国は、もう十年以上前から、隣国であるメイリーン国と小競り合いを繰り返している状態だ。
 リーリス国の王妃である私の母上は、元々ティアルーン国の貴族であり、両国間の関係を良好なものにするための政略結婚でこのリーリス国へと嫁いできた。ただ、ティアルーン国と敵対しているメイリーン国からすれば、母上が存在することでリーリス国と敵対するのは避けたいところ。そのため、母上は幾度となく暗殺やら誘拐やらの危機に晒されてきた。メイリーン国の思惑としては、母上を人質にして、ティアルーン国とリーリス国を敵対させるのが目的だったのか、はたまた別の何かがあったのかは今になっても不明だが、ユミリア嬢の魔道具がなければ、母上は今、生きていなかっただろう。
 そして現在、ティアルーン国は未だにメイリーン国との小競り合いを続けていることに変わりはないが、一つだけ、大きな変化が起こっていた。


「天使、か……」


 ティアルーン国に突如として現れた黒目黒髪の少女。彼女は、天から降ってきたと言われており、すぐさま神からの遣いだということで祭り上げられた。
 元々、ティアルーン国は黒目黒髪の人間に対する信仰が深い国だった。黒目黒髪の子供は神殿で保護され、大切に育てられる。彼ら彼女らは、神子として崇められ、讃えられる。そんなお国柄の中に現れた少女は、周囲の声もあったのかもしれないが、自らを天の遣いだと称し、この世界には神子に擬態する悪魔が存在するのだと吹聴した。つまりは……。


「だあっ! 自分以外の黒目黒髪は悪魔って、天使とやらの頭はどうなってやがるんだ!!」


 天使とかいう少女曰く、現在、人間界に神子は存在しないとのこと。今、黒目黒髪を持つ人間は人間界を乗っ取ろうと目論む悪魔であり、密かに本物の神子を殺害して君臨しはじめるところだったのだと。そして、自分はそれを防ぐために天から遣わされたのだと。
 ただただ穏やかに、黒目黒髪を信仰していた国は、天使とやらの言葉によって、凶暴な国へと変貌していた。
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