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第一章 帰還と波乱
第二十九話 舌戦攻防(セイ視点)
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早く、ミーシャの救援に向かわなければならないのに、彼女はしつこかった。
「嫌ですわっ! こんなところに淑女を一人置いて行くだなんて、ひとでなしですわよっ!?」
「知らないよ! ていうか、こんなところって言うけど、ここ、騎士団の詰め所だからね? ちゃんと女性も居る場所だからね!?」
「そんなこと存じています! ですが、比率は圧倒的に男が上回るのです。こんなムサイ男達に襲われたら、わたくしなんてひとたまりもありませんわっ!」
「もう、エルドン侯爵には連絡済みだからっ! すぐに、迎えが来るから!」
「なっ! なぜ、わたくしがエルドン侯爵家と縁があるとご存知ですの!? はっ、まさか、わたくしのストーカー……「違うから!!」」
さすがに、ミーシャが居る危険地帯にか弱いご令嬢を連れて行くわけにもいかず、そして、残念ながら街中でご令嬢を抱えて連れていくというのも憚られ、結果的に、ご令嬢の歩みに合わせて、騎士団の詰め所まで来た……のだが……。
(ちょっと、周りの騎士達が撃沈していく様子なんて見たくないんだけど……?)
詰め所に来た、までは良かった。ただ、彼女は、全く悪意のないままに、騎士達の心を抉っていく。ついでに僕の精神も疲弊させていく。
(早く、あのタヌキを連れてこなきゃ……っ)
とにかく、このじゃじゃ馬令嬢を引き取ってもらわないことには、僕も身動きが取れない。さすがに、これを放置してミーシャの元へ向かえるほど、僕は常識外れではない。
(ユレイラとか、イリアス様とかは、放置しそうだけどね……)
むしろ、放置して、何か問題が起これば気絶させてどこかに監禁するくらいのことはしかねない。いや、そもそも助けるかどうかも分からない。
「って、ダメですわ! わたくしは、まだ、帰るわけにはいきませんの!」
しかし、エルドン侯爵から迎えが来ることを知った彼女は、慌てて立ち上がり、逃げ出そうとしたので……さすがに、僕も我慢の限界だった。
「きゃあっ! なんですの? これはっ!?」
「鎖。拘束具。何とでも呼べば良いけど、とりあえず、君、放置してると危なそうだから、そこでじっとしててもらえないかな?」
「なっ! わ、わたくしが貴族だというのは知っていらっしゃるんでしょう? わたくしはともかく、こんな場面を見られれば、他の者につけいられますわよ!?」
「……まぁ、悪い人間ではないことは分かったけど、それでも、これ以上面倒ごとを増やしたくないんだ。こっちは、早くしないと人死が出かねないんだから」
「えっ……? ちょっと! そういうことは先に言いなさい!! 師匠が行かなければならないのでしたら、わたくしのことは構わず、早く行きなさいな!!」
「え? う、うん、じゃあ、そうさせてもらうよ」
このままでは、ミーシャがユレイラ達を止められずに暴走を引き起こしてしまう可能性が高いというのを、『人死が出るかも』という表現で伝えれば、彼女はあっさりと僕を送り出す決断を下す。
(え? ううん? あれぇ?)
もしかしたら、最初からこれを伝えておけば、問題なかったのかもしれないと思いながら、鎖は一時間ほど解けないと言い捨てて、ミーシャ達の元へと向かった。
「嫌ですわっ! こんなところに淑女を一人置いて行くだなんて、ひとでなしですわよっ!?」
「知らないよ! ていうか、こんなところって言うけど、ここ、騎士団の詰め所だからね? ちゃんと女性も居る場所だからね!?」
「そんなこと存じています! ですが、比率は圧倒的に男が上回るのです。こんなムサイ男達に襲われたら、わたくしなんてひとたまりもありませんわっ!」
「もう、エルドン侯爵には連絡済みだからっ! すぐに、迎えが来るから!」
「なっ! なぜ、わたくしがエルドン侯爵家と縁があるとご存知ですの!? はっ、まさか、わたくしのストーカー……「違うから!!」」
さすがに、ミーシャが居る危険地帯にか弱いご令嬢を連れて行くわけにもいかず、そして、残念ながら街中でご令嬢を抱えて連れていくというのも憚られ、結果的に、ご令嬢の歩みに合わせて、騎士団の詰め所まで来た……のだが……。
(ちょっと、周りの騎士達が撃沈していく様子なんて見たくないんだけど……?)
詰め所に来た、までは良かった。ただ、彼女は、全く悪意のないままに、騎士達の心を抉っていく。ついでに僕の精神も疲弊させていく。
(早く、あのタヌキを連れてこなきゃ……っ)
とにかく、このじゃじゃ馬令嬢を引き取ってもらわないことには、僕も身動きが取れない。さすがに、これを放置してミーシャの元へ向かえるほど、僕は常識外れではない。
(ユレイラとか、イリアス様とかは、放置しそうだけどね……)
むしろ、放置して、何か問題が起これば気絶させてどこかに監禁するくらいのことはしかねない。いや、そもそも助けるかどうかも分からない。
「って、ダメですわ! わたくしは、まだ、帰るわけにはいきませんの!」
しかし、エルドン侯爵から迎えが来ることを知った彼女は、慌てて立ち上がり、逃げ出そうとしたので……さすがに、僕も我慢の限界だった。
「きゃあっ! なんですの? これはっ!?」
「鎖。拘束具。何とでも呼べば良いけど、とりあえず、君、放置してると危なそうだから、そこでじっとしててもらえないかな?」
「なっ! わ、わたくしが貴族だというのは知っていらっしゃるんでしょう? わたくしはともかく、こんな場面を見られれば、他の者につけいられますわよ!?」
「……まぁ、悪い人間ではないことは分かったけど、それでも、これ以上面倒ごとを増やしたくないんだ。こっちは、早くしないと人死が出かねないんだから」
「えっ……? ちょっと! そういうことは先に言いなさい!! 師匠が行かなければならないのでしたら、わたくしのことは構わず、早く行きなさいな!!」
「え? う、うん、じゃあ、そうさせてもらうよ」
このままでは、ミーシャがユレイラ達を止められずに暴走を引き起こしてしまう可能性が高いというのを、『人死が出るかも』という表現で伝えれば、彼女はあっさりと僕を送り出す決断を下す。
(え? ううん? あれぇ?)
もしかしたら、最初からこれを伝えておけば、問題なかったのかもしれないと思いながら、鎖は一時間ほど解けないと言い捨てて、ミーシャ達の元へと向かった。
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