悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第三十二話 理由

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 ミーシャに話した理由は、もちろん嘘ではない。ただ、それだけではなく、少しばかり気になることがあって、それを調べるのにフィオナ達を一緒に連れてはいけないという理由もあった。


「ユレイラ、協力を求めなくて良かったの?」

「うん、大丈夫。きっと、私達ならどうにでもできるよ」


 ミーシャにフィオナ達の学園行きを打診した日の夜。イリアスに背後から抱き締められながら窓の外を眺めていた私は、ふと、自分の手に視線を落とす。


「私も、随分と神格が上がったよね」

「そうだね。僕のために、色々してくれたから、ね」

「んっ」


 そう言いながら、首筋に口づけを落とすイリアス。たまらず声をあげるものの、それを止めてくれる様子はない。


「あっ、だ、大丈夫だよ? ほら、んっ、これだけ、強ければ、そんなに構える必要なんてないしっ」

「でも、心配だよ。僕は良いとしても、ユレイラに何かあれば、僕は生きていけないから。だから、絶対に、無理だけはしないで」

「ふぁっ!? だ、大丈夫!」


 耳をハムハムとされて、ビクッと反応しながら応じると、そのまま、イリアスは妖艶な微笑みをたたえて、そっと、口づけを交わす。


(あぁ、もうっ! 好き過ぎて、ツラいっ)


 その日の夜は……まぁ、厳重な結界を張っておいたとだけ、報告しておこう。







「お姉様、結論が出ました」


 学園に二人を通わせたいと打診して二日目、ミーシャは、しっかりと返答を持ってやってきていた。ちなみに、この場にはイリアスとルクレチア、それと、アルト殿下も居る。フィオナ達には、セイと鋼、ミルラスと魔王がついて勉強をしているところなので、きっと、大きな問題は起きないはずだ。


「とりあえず、お二人の編入は許可しようとのことです」

「本当に? それなら良かった」


 最悪の場合、断られるだろうと思っていたため、許可が下りたのはありがたかった。


「ですが、もうすぐ長期休暇に入る時期ですし、フィオナちゃん達にはもう少し常識を持ってもらわなければいけないという意見は多くてですね……これから一月の間は、この城で勉強をしてはどうかという話になりました」

「そうだね。それが一番良いかも。なら、それでお願いできるかな?」

「はい、では、そのように手配しておきますね?」


 長期休暇と言われて、ほとんど学園に通っていなかった私にはピンとこなかったものの、それなら次に開始される時期を見計らった方が良いというのは分かる。


「それじゃあ、私とイリアス、それとルクレチアは、しばらく留守にするから、フィオナ達のことをお願いしても良いかな?」

「え? どちらに行かれるんですか?」

「んー、神様同士のお・は・な・し、かな?」

「……無事に帰ってきてくださいね?」

「もちろん!」


 端的に言えば、神様同士の喧嘩、もしくは殺し合いなのだが、そこら辺を汲み取った上で、ミーシャは無事を祈ってくれる。そうであるならば、ちゃんと期待に応えなければならないだろう。
 そうして、ある程度の手続きを終えた私は、イリアスとルクレチアを伴って、転移した。
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