悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第四十四話 妄想の力(アメリア視点)

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 先行して時計台に踏み込んだ私は、人気のないその場所を素早く通り抜け、邪神が居ると思われる部屋の扉に手をかけた瞬間、凄まじい神力の嵐に襲われる。


『時計台に辿り着いた暗殺者は、そこで、美しい姫を見初めるの。そして、動き出すのは二人の愛の物語っ』


 どこからかそんな声が聞こえた直後、頭の中に靄がかかったようになって、目の前に邪神が居るというのに、立ち尽くしてしまう。


「まぁっ、私の王子様は女性なのね? うふふ、でも、それもそれで良いわぁ。あぁ、悪い魔法使いもいなくちゃ面白くないわっ。王子様を取られたくないお姫様。いえ、違うわね、お姫様を取られたくない王子様ねっ!」


 甘く、フワフワとした声が、頭の中でじんわりと浸透していく。


(この人は……私の、一目惚れした人……。悪い魔法使い……嫉妬に駆られた、魔法使い……)


 それまでの記憶は混濁し、頭の中にあるのは、ただ、彼女を守らなければという思いのみ。


「あっ、でも、あちらの天使と絡めるのも悪くはないわね? あの子には、全ての黒を根絶して、聖なる乙女として君臨する運命があるけれど、どう絡めましょうか? やっぱり、魔法使いは悪役よね?」


 私の最愛。紫の髪に、緑の瞳を持つ、夢魔……いえ、違う。彼女は、ピンクの髪・・・・・青い瞳・・・を持つ、邪神。私の、最愛、私の、大切な、彼女……。


「うーん、そうよっ! 悪い魔法使いは、この時計台を攻撃して、破壊してでも貴方を奪おうとするの! それで、天使のあの子がそれを食い止めようとする役目を持つのよ!」


 キラキラとした目で宣言した彼女の言葉は、今度は、私よりも後方へ神力を纏って飛んでいく。


「っ、あっ、これは……」


 直後、妄想を司る邪神の力が別の場所に分散されたせいか、私は役目を思い出し……背後で膨れ上がる恐ろしいまでの魔力に青ざめることとなる。


(待って、まさか、妄想の力って、妄想を垂れ流して、それを実現させる力なのでは……?)


 そうなると、背後の魔力は……術中にハマったセイの魔力は、この時計台を破壊するはずで……。
 全てを理解した私は、その場からとにかく退こうとするものの、『ちゃんと悪役に捕まる役はしてねー』との言葉で、思考力はそのままに、動けなくなる。


(待って待って待って待って、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ!!)


 直後、鬼の形相のセイが扉を爆破して現れた。
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