悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第二章 異質な神界

第九十四話 ぼくのむかし2(ラルフ視点)

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 外に出た僕は、様々なことを学習した。白い部屋で何も教えてもらえないまま、ただ純真であれとされていた僕は、もう居ない。

 そして、外に出たからこそ僕は自分がどんな立場であったのかも理解できた。僕を失えば、世界は終わる。僕の力が変質してしまえば、やはり世界が終わる。そう思われたがために、僕は、力の変質が起こらないように、真っ白な部屋で、純真な心を忘れないようにと閉じ込められた。ちなみに、僕が何度も女神達に襲われたのは、僕が異性愛者であれば、世界もそちらにシフトすると思われて、誘惑するように指示されていたからでもあったらしい。


「フィル、僕って、何だろう……」

「ん? そりゃあ、可愛い男の娘?」

「何それ」

「いや、多分そのまんま」


 僕の勉強に付き合ってくれるのは、罪悪感を司る男神、フィル。僕とそう年齢の変わらない彼は、異世界の神達の間に生まれたらしい。そして、その能力を駆使して、彼は、僕を救出してくれていた。


「まぁ、そんなことはこれから追々考えれば良いと思うぞ? 俺の両親も、若い頃は色々あったとか話してたからなぁ」


 基本的に僕に優しいフィルは、現在、僕の友人という位置づけらしい。そして、そんなフィルは、両親の話をする時だけ、ちょっとばかし遠い目になる。


(そういえば、僕の両親ってどんな神々なんだろう……?)


 フィルが両親の話をするものだから、つい、僕の中には余計な考えが生まれる。白い部屋に居た頃は、両親などという存在すら知らなくて、いつからそこに居たのかも思い出せなかったが、今の僕は、それに思考を巡らせることができた。


(……僕は、捨てられたのかなぁ?)


 まだ、神々の子供に関する知識はない。だから、捨てられることが普通なのかどうかも分からない。


「ん? どうした?」


 ただ、この優しいフィルに、それを聞くのは違う気がした。


「何でもない。ねぇ、フィル。僕は、色々と変わっちゃったけど、世界は滅びに向かってる?」

「いや、そんな話は聞かないな。それに、ラルフはそんなことを気にする必要はない。だって、世界を滅亡に向かわせてる責任なんてのは、世界を管理してたやつらにあるんだからな」

「そういうもの?」

「そういうもの、そういうものっ」


 大真面目に教えてくれるフィルを見ていると、何だか、僕が思い悩んでいたことが随分と小さなものに思えた。


「まぁ、そこら辺は気にするな。きっと今頃、お母様達が……あ、いや、やっぱり何でもない」


 何やらブルリと震えるフィルに首をかしげるものの、フィルは答えなかった。
 後々聞いたところによると、僕を捕まえていた神々や、僕を襲った神々は、軒並み、何かの実験施設で酷い目にあったらしいとのことで……きっと、ユレイラ様が動いたのだろうということを知ることになるが、この時はまだ、理解していなかった。
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