悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第二章 異質な神界

第九十三話 ぼくのむかし1(ラルフ視点)

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 ラルフ・ルマンドという神は、純真を司る神として、生を受けた。僕が住んでいた神界が管理する世界は、同性愛が進んだ場所であり、神々は一応、同性同士でも妊娠ができるように力を加えたものの、妊娠の確率は異性同士と比べると百分の一ほどの確率となってしまっていた。緩やかに滅びの道を歩む世界。それが、僕が生まれた神界が管理する世界だった。
 かの世界に足りないのはいったい何なのか。それは、神々の間で幾度も論争になっていた。そして、僕が生まれたその瞬間を起点に、世界は、緩やかに異性への愛情を持ち始めたのだ。


『そうか、純真さが足りなかったのかっ!』

『となると、どこかの神がそれを捻じ曲げた可能性があるぞ?』

『探せっ、そして、ラルフを守れ!』


 純真を司る神は、確かに少なかった。そして、僕は、そんな神々の中でも異常なほどに強い力を持って生まれていた。だから、僕こそが、世界の救世の神とされた。
 ……生まれたばかりの僕は、その先に、どれだけの苦難が待ち受けることになるのかなんて、知るはずもなかった。


『ねぇ、どーして、ぼくはおそとにでちゃだめ、なの?』

『ラルフ様は、我々の希望なのです。ですから、歪められることがないよう、その純真さを持ち続けてもらわなければ困るのです』


 真っ白な部屋で、年齢以上の幼さを抱えた僕は、周囲を女性だけで固められて、育ってきた。僕が同性愛に目覚めれば、世界は終わるとでも思っていそうな彼女達は、しきりに、女をアピールしてきて、何度も、何度も、危険な目に合ってきた。しかし……。


『ラルフも、随分と面倒な奴らに囲まれてるよな。これで、何度目だ?』


 その度に、僕を助けてくれたのは、フィルだった。黒目黒髪の、僕とそう変わらない年頃の彼は、罪悪感を司る神であり、僕が危険な目に遭う度に、その力で助けてくれていた。そんな環境下で育った僕が、女性嫌いになるのは、当然の帰結だったのだろう。


『いい加減、このことは創世神様に報告するぞ?』

『だ、だめっ。ぼくは、ここにいなきゃ、たいへんだって。せかいが、ほろんじゃうって、だから……』

『それも含めて、大人に判断してもらうんだろうがっ! むしろ、俺はこの状態を維持した方が世界の崩壊に繋がるって考えてんだから、とっとと覚悟を決めろっ』


 そう言われて、僕は、ようやく、白い部屋から出されることとなる。初めて得た自由。初めて見た、フィル以外の男。そして、男は、僕にとても優しかった。だから……きっと、僕は、同性愛だと思われたのだろう。
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