悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

文字の大きさ
109 / 132
第二章 異質な神界

第百九話 嫌がらせの日々8(ピンク頭視点)

しおりを挟む
 聖の神との打ち合わせは、当然、使われていない教室で行っている。転入生としてこの学校に入学することとなったソイツは、ため息を吐きながらどっかりと木製の椅子へ腰掛ける。


「とりあえず、悪役令嬢とやらをやれば元の流れに戻せるんだよね?」

「そうよ。多少のアクシデントはあったけど、攻略対象者として定めていた男神はまだ居るんだから、ソイツらを落とせば問題ないもの」

「……分かった。じゃあ、頑張ってみるよ」


 放課後の打ち合わせ。それは、もうこれで解散という方向に進むはずで、私もコイツも、それを疑ってはいなかった。悪役令嬢は勝手に退散したのだから問題ないなど……今思えば、人間のゲームの感覚に縛られ過ぎていたとしか思えない。神同士の諍いが、ただその場に相手の神が居ないからというだけの理由でなくなるはずがないなんて、思い至りもしなかった。だから……。


「っ、停電?」


 突如として教室を照らしていた明かりが消える。ただ、その程度であれば、周りが見えなくなるなんてことはない。これは、ただの演出に過ぎないということに、この時点では気づきもしなかった。
 ガンッという外からの音とともに、教室の扉が折れる。


「「っ!?」」


 何かが来る。それを察知して、私も聖の神も臨戦態勢に入る。戦いに属する神ではないとはいえ、私もコイツも、上位世界の神。簡単に負けるようなことはない……はずだった。

 ポクポクポクポクと、何か耳慣れない、気の抜けるような音が、同じリズムで流れ始める。ヒュウヒュウと風の音が聞こえ出し、部屋の温度が徐々に下がっていく。


(氷漬けにするつもりでもなさそうだけど……)

「…………ねぇ、これ、何となく何だけど、何か分かったかも」

「っ、何よっ」


 隣に立つ聖の神へと問い正せば、ソイツは、すぐに答えることなく口籠る。その様子に苛立って、私はソイツへと顔を向けて……随分と青ざめている様子に気づく。


「確か、さ……。ホラーっていうジャンルが、人間の世界にはあるんだよ、ね」


 ホラーといえば、私はあまり興味を持てなかったジャンルだ。何やら、怖い話らしいが、怖いものを見たいという気持ちが分からない。


「だ、だから?」

「……つまりは、こういうのって、ホラーっぽい展開というか……もしかしたら、幽霊でも召喚されてるのかも……?」

「ゆ、幽霊くらいなら問題は「問題は、これが嫌がらせの延長かもしれないってことだよっ」なっ……」


 思い出すのは、あまりにもエゲツない嫌がらせの記憶。そして、今回はホラーというジャンルに則った嫌がらせかもしれない。その事実に、私は心底震え上がった。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。 将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。 平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。 根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。 その突然の失踪に、大騒ぎ。

処理中です...