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プロローグ
第一話 はじまり
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風が吹く。花が舞い散る。そして……狼が駆ける。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
そんな狼の獲物である私、桜夕夏は、食い殺されないように必死に森の中を走っていた。
どこへ行っても木、木、木。道なき道を、日頃運動していない体で必死に、必死に走る。しかし、それももう終わりが近かった。息が完全に上がっているのはもちろんのこと、足も重くて重くて仕方がない。走る道はでこぼこしていて、どんどん足は上がらなくなっていく。だから、それは必然だった。
「あっ!」
木の根につまづいた私は、そのまま体勢を立て直す力もなく倒れてしまう。
「ガウッ」
それを好機と見た狼は、私が立ち上がる前に襲い掛かってきた。
(もうっ、ダメだっ)
死は目前。その事実に、私は恐怖と諦めがない交ぜになった心持ちで、痛そうな狼の牙を眺め……。
「ギャウンッ」
それが急に上に吹き飛んだ瞬間、私は事態を理解できなかった。
「人間がなぜここに居る……? クソッ、また片翼か」
誰かの声がして、私は何も考えられないままに後ろを振り向く。すると、そこには翡翠色の長髪に、サファイアのような瞳をした美青年が、私を睨んでいた。
「《眠れ》」
わけの分からないままに低い声でそう告げられ、私は即座に瞼が重くなるのを感じる。
(まるで、魔法……)
そんな感想を最後に、私の意識は闇の中に落ちるのだった。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
そんな狼の獲物である私、桜夕夏は、食い殺されないように必死に森の中を走っていた。
どこへ行っても木、木、木。道なき道を、日頃運動していない体で必死に、必死に走る。しかし、それももう終わりが近かった。息が完全に上がっているのはもちろんのこと、足も重くて重くて仕方がない。走る道はでこぼこしていて、どんどん足は上がらなくなっていく。だから、それは必然だった。
「あっ!」
木の根につまづいた私は、そのまま体勢を立て直す力もなく倒れてしまう。
「ガウッ」
それを好機と見た狼は、私が立ち上がる前に襲い掛かってきた。
(もうっ、ダメだっ)
死は目前。その事実に、私は恐怖と諦めがない交ぜになった心持ちで、痛そうな狼の牙を眺め……。
「ギャウンッ」
それが急に上に吹き飛んだ瞬間、私は事態を理解できなかった。
「人間がなぜここに居る……? クソッ、また片翼か」
誰かの声がして、私は何も考えられないままに後ろを振り向く。すると、そこには翡翠色の長髪に、サファイアのような瞳をした美青年が、私を睨んでいた。
「《眠れ》」
わけの分からないままに低い声でそう告げられ、私は即座に瞼が重くなるのを感じる。
(まるで、魔法……)
そんな感想を最後に、私の意識は闇の中に落ちるのだった。
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