9 / 41
私、異世界で監禁されました!?の番外編
変化魔法(ジークフリート視点)
しおりを挟む
ユーカがリアン魔国から帰ってきて、舞踏会の準備に時間を取られている頃のことだ。俺は、少し休憩に入ってユーカの部屋へ向かおうとしていると、そのユーカ本人が廊下を歩いているのを見つけ、幸せな気分になりながら声をかける。
「ユーカ」
「あっ、ジーク、さん。休憩ですか?」
「あぁ、少しな。ところで、ユーカはどこへ行くつもりだったんだ?」
「えっと、図書室に本を借りに行こうかと」
リリとライナードが遠巻きに俺達を見る中、俺はユーカの手を取る。
「ならば、俺も一緒に行こう」
「ふぇっ? は、はいっ」
顔を赤くするユーカが可愛くて可愛くて、悶えそうになったものの、どうにか理性を総動員させて堪える。
「それで? 何を借りようと思っているんだ?」
「えっと、マナー本の類いと、変化魔法に関する本、ですかね?」
「変化魔法? それなら、俺が教えられるぞ?」
変化魔法は、ユーカがくーちゃんと呼んでいる猫の姿になる魔法だ。いや、基本的にどんな動物にでもなれるのだが、ユーカは猫が好きらしく、ここ最近は猫以外の姿に変化した覚えはない。
「えっと、その……だった、ジークさん、他の動物に変化できたりしますか?」
「もちろんだ。何が良い? 大抵のものにはなれるぞ?」
どうやら、ユーカは俺の変化が見たいらしいと分かり、俺は俄然張り切る。
「じ、じゃあ、狼、とかは?」
「……ユーカは、フォレストウルフに襲われていたから、てっきりウルフ系はダメなものとばかり思っていたが……?」
「いえっ、私っ、狼とかカッコよくて、すごく好きなんですっ」
『好きなんです』『好きなんです』と、頭の中で都合の良い言葉が反響し、俺はあまりの衝撃に固まる。
「そ、そうかっ! 実は、俺が最も得意とするのはウルフへの変化なんだっ」
「そうなんですかっ! ならっ、ぜひ見せてくださいっ!」
「もちろんだっ」
大喜びのユーカを前に、俺は興奮しながら早速変化を試す。
「これでどうだ? ユーカ?」
翡翠色の凛々しい顔立ちのウルフ。それが、俺がウルフに変化した場合の姿で、それを見た瞬間、ユーカは目を丸くする。
「ふわぁっ、か、可愛いっ!」
「かっ、可愛い!? カッコいいとかではなく、って、うおぉっ」
ユーカにギュムッと抱き締められた俺は、不意討ちで香るユーカの甘い匂いにクラッとする。
(っ、ダメだっ、こんなところで理性を手放すわけにはっ!)
「すごい、モフモフっ」
喜んで撫で回してくるユーカには悪いが、これは危ない。とにかく離れてほしいと告げようとした瞬間だった。
「あっ」
なぜか、ユーカはいきなり俺から離れてしまう。そして、若干顔を赤くしているところを見ると……多分、このウルフが俺だということを思い出してくれたのだろう。
(良かったような、残念なような……)
暴走を防げたという面では良かったものの、ユーカが離れていくのはとても寂しい。
そう思って、少し意気消沈していると、しばらく視線を宙に浮かせていたユーカがこちらに意識を戻してくる。
「えっと、ジークさん。他の生き物には変化できますか?」
「あぁ、ウサギやリスにもなれるぞ?」
本当は、蛇やトカゲにも変化できたものの、それを言うのは止めておいた。そんなものに変化して、万が一、ユーカに嫌われたら、俺はもう、生きていけない。
パッと目を輝かせたユーカに、俺はそれぞれの動物へと変化してみせる。そして、リスに変化した後、ユーカは『少し試してみても良いですか?』と言ったので、内容も聞かずに許可をする。
「じゃあ……変化固定っ。ジークさん、これで他の動物に変化してみてください」
「あ、あぁ」
何がしたいのか分からない俺は、とりあえずユーカの言う通り、変化しようとして……なぜか、姿が変わらないことに気づく。
「これは……」
「えっと、変化した姿を固定してみました。できてる、みたいですね」
変化の固定なんて、聞いたこともない。しかし、ユーカはそれをやってのけたらしい。ユーカはすぐに、その未知の魔法を解除すると、もう一つ試したいことがあるのだと言う。
俺はやはり、すぐに許可を出して、ユーカの言葉を待ってみる。
「変化っ」
「? ぬぉっ!」
ユーカが使ったのは、変化魔法のはずだったのだが……なぜか、ユーカではなく、俺の姿の方が変わってしまい、ウルフの姿へ戻ってしまう。
「やっぱりできましたっ」
「すごいな、ユーカ。相手の姿を変えさせることができるのか」
「はい。もしかしたらできるんじゃないかと思って、調べてみようと思ってたんです。でも、実践できて良かったです」
(いや、調べても載ってないと思うぞ?)
そんな内心を隠しながらも、俺はユーカの想像力の高さに感服する。
まさか、この時の出来事のせいで、後々モフモフの刑の際、無理矢理姿を変えられて、その姿を固定されてしまうなど、その時は全く考えもせず、ただただ喜ぶユーカを愛でるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最近、この作品を『片翼シリーズ番外編』にしようかと考え中。
多分、一週間後くらいに変更することになりそうです。
それでは、また!(次回から、ヘルジオン魔国のお話にする予定です)
「ユーカ」
「あっ、ジーク、さん。休憩ですか?」
「あぁ、少しな。ところで、ユーカはどこへ行くつもりだったんだ?」
「えっと、図書室に本を借りに行こうかと」
リリとライナードが遠巻きに俺達を見る中、俺はユーカの手を取る。
「ならば、俺も一緒に行こう」
「ふぇっ? は、はいっ」
顔を赤くするユーカが可愛くて可愛くて、悶えそうになったものの、どうにか理性を総動員させて堪える。
「それで? 何を借りようと思っているんだ?」
「えっと、マナー本の類いと、変化魔法に関する本、ですかね?」
「変化魔法? それなら、俺が教えられるぞ?」
変化魔法は、ユーカがくーちゃんと呼んでいる猫の姿になる魔法だ。いや、基本的にどんな動物にでもなれるのだが、ユーカは猫が好きらしく、ここ最近は猫以外の姿に変化した覚えはない。
「えっと、その……だった、ジークさん、他の動物に変化できたりしますか?」
「もちろんだ。何が良い? 大抵のものにはなれるぞ?」
どうやら、ユーカは俺の変化が見たいらしいと分かり、俺は俄然張り切る。
「じ、じゃあ、狼、とかは?」
「……ユーカは、フォレストウルフに襲われていたから、てっきりウルフ系はダメなものとばかり思っていたが……?」
「いえっ、私っ、狼とかカッコよくて、すごく好きなんですっ」
『好きなんです』『好きなんです』と、頭の中で都合の良い言葉が反響し、俺はあまりの衝撃に固まる。
「そ、そうかっ! 実は、俺が最も得意とするのはウルフへの変化なんだっ」
「そうなんですかっ! ならっ、ぜひ見せてくださいっ!」
「もちろんだっ」
大喜びのユーカを前に、俺は興奮しながら早速変化を試す。
「これでどうだ? ユーカ?」
翡翠色の凛々しい顔立ちのウルフ。それが、俺がウルフに変化した場合の姿で、それを見た瞬間、ユーカは目を丸くする。
「ふわぁっ、か、可愛いっ!」
「かっ、可愛い!? カッコいいとかではなく、って、うおぉっ」
ユーカにギュムッと抱き締められた俺は、不意討ちで香るユーカの甘い匂いにクラッとする。
(っ、ダメだっ、こんなところで理性を手放すわけにはっ!)
「すごい、モフモフっ」
喜んで撫で回してくるユーカには悪いが、これは危ない。とにかく離れてほしいと告げようとした瞬間だった。
「あっ」
なぜか、ユーカはいきなり俺から離れてしまう。そして、若干顔を赤くしているところを見ると……多分、このウルフが俺だということを思い出してくれたのだろう。
(良かったような、残念なような……)
暴走を防げたという面では良かったものの、ユーカが離れていくのはとても寂しい。
そう思って、少し意気消沈していると、しばらく視線を宙に浮かせていたユーカがこちらに意識を戻してくる。
「えっと、ジークさん。他の生き物には変化できますか?」
「あぁ、ウサギやリスにもなれるぞ?」
本当は、蛇やトカゲにも変化できたものの、それを言うのは止めておいた。そんなものに変化して、万が一、ユーカに嫌われたら、俺はもう、生きていけない。
パッと目を輝かせたユーカに、俺はそれぞれの動物へと変化してみせる。そして、リスに変化した後、ユーカは『少し試してみても良いですか?』と言ったので、内容も聞かずに許可をする。
「じゃあ……変化固定っ。ジークさん、これで他の動物に変化してみてください」
「あ、あぁ」
何がしたいのか分からない俺は、とりあえずユーカの言う通り、変化しようとして……なぜか、姿が変わらないことに気づく。
「これは……」
「えっと、変化した姿を固定してみました。できてる、みたいですね」
変化の固定なんて、聞いたこともない。しかし、ユーカはそれをやってのけたらしい。ユーカはすぐに、その未知の魔法を解除すると、もう一つ試したいことがあるのだと言う。
俺はやはり、すぐに許可を出して、ユーカの言葉を待ってみる。
「変化っ」
「? ぬぉっ!」
ユーカが使ったのは、変化魔法のはずだったのだが……なぜか、ユーカではなく、俺の姿の方が変わってしまい、ウルフの姿へ戻ってしまう。
「やっぱりできましたっ」
「すごいな、ユーカ。相手の姿を変えさせることができるのか」
「はい。もしかしたらできるんじゃないかと思って、調べてみようと思ってたんです。でも、実践できて良かったです」
(いや、調べても載ってないと思うぞ?)
そんな内心を隠しながらも、俺はユーカの想像力の高さに感服する。
まさか、この時の出来事のせいで、後々モフモフの刑の際、無理矢理姿を変えられて、その姿を固定されてしまうなど、その時は全く考えもせず、ただただ喜ぶユーカを愛でるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最近、この作品を『片翼シリーズ番外編』にしようかと考え中。
多分、一週間後くらいに変更することになりそうです。
それでは、また!(次回から、ヘルジオン魔国のお話にする予定です)
10
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる