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第三章 悪魔
第五十九話 拐われて
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「う……ここ、は?」
その日、私はようやくお姉様に会えると、これで、現状を打開できると思っていた。しかし、実際には、どこか分からない薄暗い場所に縛られて押し込められている。
(まさか、拐われました?)
人生二回目の誘拐。公爵令嬢という身分上、拐われそうになる機会は何度かあったものの、身分を捨てた今、こう何度も拐われるのは納得がいかない。
(いえ、そういえば、今の私は寵妃、でしたね)
寵妃。しかも、仮初のと頭につく身分。安全な地位だと聞いてはいたものの、こんなの、ちっとも安全ではない。
(それでも、アルムの側が良いと思ってしまう私は、重症なのでしょうね)
そう思いながら、私は顔を上げる。そこに居るであろう男を睨むために。
「あぁ、目が覚めましたか。シェイラ様」
「えぇ、目覚めは悪いことこの上ないですけどね? ……ギース」
いつもは黒い布で顔を隠しているギースは、今はその布を取り去り、黒い短髪とギョロリとした赤い瞳をあらわにしている。褐色の肌に、しなやかな筋肉を持つ彼は、その口許に大きな笑みを浮かべる。
「それはそれは、ようございました」
私が、最後に正気に戻った時、掴んだ情報。それは、ギースが悪魔と何らかの繋がりがある。もしくは、ギース自身が悪魔かもしれないというものだった。しかし、現状を見る限り、私はその情報を伝えることには失敗したらしい。
(ですが、大丈夫。きっと、お姉様もアルムも私を見つけ出してくれる)
残念ながら、お姉様からもらった魔法具は、ただ一つを除いて全て取り払われている。私を守るのは、見えない指輪ただ一つ。
「抵抗しなければ、あなたに手荒な真似をするつもりはありませんよ。まぁ、魔力を封じられたあなたに何かができるとは思えませんが」
「そうですね。では、何もできない私にご教示願えないかしら? あなたの目的は何?」
本来なら、ここは大人しくしておくべきなのだろうが、残念ながら、私はそこまで淑やかではない。できる限りの情報を引き出し、相手を破滅させる機会をそっと窺う。それこそが、今までの私の本質。
ギースは、私を捕らえたことで口が軽くなっているのか、あっさりとそれを教えてくれる。
「そうですね。シェイラ様には特別に教えましょう。私の目的は、伴侶を得ることです」
……しかし、ギースの言葉の意味が分からない。
「より具体的に言うのであれば、シェイラ様。あなたが目的ですよ」
そして、そんなギースの言葉に、私はこれ以上ない身の危険を感じる。
「ふふっ、怯えた顔も良い。だが、その前には邪魔者を消して、ついでに契約も果たさなければ」
二の句が継げない私を前に、ギースは私のおでこに口づけを落とす。
(ひぃっ!)
ゾワゾワゾワッと背筋が粟立つ。そんな私を、ギースはうっとりと見つめて……それから四日くらいの間、鎖で繋がれて、行動を制限されながら、一日三食、きっちり与えられて過ごすこととなる。何とか、それ以上の情報を得ようとしても、のらりくらりとかわされてしまう。そして、今……。
「っ、危ない!」
アルムの背後に迫るギースの姿に、私は声を上げて必死にアルムに危機を伝える。しかし、アルムが反応する前に、その凶刃は振り下ろされ…………。
ガキンッという音を立てて止まった。
その日、私はようやくお姉様に会えると、これで、現状を打開できると思っていた。しかし、実際には、どこか分からない薄暗い場所に縛られて押し込められている。
(まさか、拐われました?)
人生二回目の誘拐。公爵令嬢という身分上、拐われそうになる機会は何度かあったものの、身分を捨てた今、こう何度も拐われるのは納得がいかない。
(いえ、そういえば、今の私は寵妃、でしたね)
寵妃。しかも、仮初のと頭につく身分。安全な地位だと聞いてはいたものの、こんなの、ちっとも安全ではない。
(それでも、アルムの側が良いと思ってしまう私は、重症なのでしょうね)
そう思いながら、私は顔を上げる。そこに居るであろう男を睨むために。
「あぁ、目が覚めましたか。シェイラ様」
「えぇ、目覚めは悪いことこの上ないですけどね? ……ギース」
いつもは黒い布で顔を隠しているギースは、今はその布を取り去り、黒い短髪とギョロリとした赤い瞳をあらわにしている。褐色の肌に、しなやかな筋肉を持つ彼は、その口許に大きな笑みを浮かべる。
「それはそれは、ようございました」
私が、最後に正気に戻った時、掴んだ情報。それは、ギースが悪魔と何らかの繋がりがある。もしくは、ギース自身が悪魔かもしれないというものだった。しかし、現状を見る限り、私はその情報を伝えることには失敗したらしい。
(ですが、大丈夫。きっと、お姉様もアルムも私を見つけ出してくれる)
残念ながら、お姉様からもらった魔法具は、ただ一つを除いて全て取り払われている。私を守るのは、見えない指輪ただ一つ。
「抵抗しなければ、あなたに手荒な真似をするつもりはありませんよ。まぁ、魔力を封じられたあなたに何かができるとは思えませんが」
「そうですね。では、何もできない私にご教示願えないかしら? あなたの目的は何?」
本来なら、ここは大人しくしておくべきなのだろうが、残念ながら、私はそこまで淑やかではない。できる限りの情報を引き出し、相手を破滅させる機会をそっと窺う。それこそが、今までの私の本質。
ギースは、私を捕らえたことで口が軽くなっているのか、あっさりとそれを教えてくれる。
「そうですね。シェイラ様には特別に教えましょう。私の目的は、伴侶を得ることです」
……しかし、ギースの言葉の意味が分からない。
「より具体的に言うのであれば、シェイラ様。あなたが目的ですよ」
そして、そんなギースの言葉に、私はこれ以上ない身の危険を感じる。
「ふふっ、怯えた顔も良い。だが、その前には邪魔者を消して、ついでに契約も果たさなければ」
二の句が継げない私を前に、ギースは私のおでこに口づけを落とす。
(ひぃっ!)
ゾワゾワゾワッと背筋が粟立つ。そんな私を、ギースはうっとりと見つめて……それから四日くらいの間、鎖で繋がれて、行動を制限されながら、一日三食、きっちり与えられて過ごすこととなる。何とか、それ以上の情報を得ようとしても、のらりくらりとかわされてしまう。そして、今……。
「っ、危ない!」
アルムの背後に迫るギースの姿に、私は声を上げて必死にアルムに危機を伝える。しかし、アルムが反応する前に、その凶刃は振り下ろされ…………。
ガキンッという音を立てて止まった。
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