冒険の書 ~始の書~

星宮歌

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第一章 冒険の始まり

*モンスタートラップ

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 何とか、スライム同士の争いに決着がつき、俺はホッと安堵する。ただ、俺はまだ分かっていなかったのかもしれない。ここが、何が起こるか分からない危険地帯だということを……。

 ペットの方へ行こうと、一歩踏み出した、その瞬間だった。


「うわっ」


 踏み出した先の、石が不自然に沈んだのは……。


「えっ、なんだ?」


 凄まじく嫌な予感がした俺は、冒険の書を確認しようとして、すぐに、それどころではないことに気づいた。

 コッ…カシャン、コッ…カシャンという随分と耳慣れてしまったその足音で、俺はソイツの接近を知る。ただ、どうにも、音が複数ある気がしてならなかったが……。


「スケルトンっ!?」


 その言葉と同時に、俺が来た道の暗闇からスケルトンは……スケルトンは、両手を大きく広げて襲いかかってくる。


「っ!」


 今まで、こんなに連続で戦闘となることは、スライムが分裂した時以外になかった。しかも、集団で襲い掛かってくることもなかった。それは、今居る場所がたまたまそういう設定で作られた場所なのかもしれないが、俺としては適宜休憩を挟めるため、ありがたいと思っていた。しかし……。


 カシャカシャカシャカシャカシャカシャッ。


 そこに居るのは、スケルトンの群れだった。

 俺は、たまらず後ずさる。こんな量の敵を無傷で捌ききる自信などない。今、俺にできることは、撤退しながら、スケルトンを少しでも減らすことだ。

 何度も何度も、剣を振るいながら後退する。バキバキと音を立て、いくつかは黒い光とともにアイテムへと変わっていたが、今、それを回収する時間などない。

 しかし、状況はさらに悪化した。


 ピチャッ。


 背後から……いや、正確には、右斜め後ろから、その音は聞こえた。それは、もはや嫌というほどに聞き慣れた音。スライムの出現を示す音。

 背後の道は、左右に分かれ、今、その右の道が塞がれたということだ。


 っ、左の道に入らなきゃ、やられるっ!


 このままでは、挟み撃ちにされてしまう。そう思った俺は、目の前のスケルトンを一体弾き飛ばして、形振り構わず左の道へと駆け抜ける。


「なっ!?」


 しかし、現実はいつも、無情だった。駆け抜けた先の通路は……行き止まりだったのだ。


 何だか前にもこんなことがあったな。

 そんなことを思い出しながら、現実逃避している暇はないと自分自身に言い聞かせる。が、行き止まりである以上、立ち止まるしかない。


「戦うしか、ないのか?」


 目の前には、スケルトンとスライムの混成部隊が迫ってきている。スライムよりも速度の出るスケルトンは、すぐにでも追い付いて戦いに入ることになりそうだ。


「い、嫌だ……」


 いかに、俺が数回の攻撃のみでモンスターを倒せるようになったといえど、これだけの敵を前にして、無傷のままでいられるはずもない。むしろ、このまま立ち向かえば、死にかねない。

 薄暗い通路で真っ青になりながら、俺は辺りを見渡す。


 ここが行き止まりのはずはない。


 そんな思考で、俺はどこかに道がないかと探す。事実、ここが行き止まりであれば、道が続いているのはスライムが出現した道となるのだから、そうであれば救いがない。


「あっ……た?」


 そして、見つけた唯一の光。いや……それは光と言うにはあまりにも禍々しく、その存在感を示していた。


「あ……うぁあ…………」


 ソレは、ただただ禍々しいの一言に尽きた。血に濡れた頭骸骨が幾多も埋め込まれ、その隙間にはところ狭しと白い骨が突き出ている。赤く、赤く、おぞましいソレ。悪趣味すぎるオブジェ。

 が、一つだけ、それが何の形を成しているのかだけは分かった。それが…………それこそが、唯一の希望。


「と、びら?」


 そう。それは、両開きの扉の形を形成していた。

 本来ドアノブがあるであろう位置には、手の骨がそのまま生え、その指先からは、ポタリと鮮血が滴る。


「あぁ……ぐっ」


 ただのオブジェ。

 そう言えるならどんなに良かったことか……。

 まるで、つい今しがた『ナニカ』を殺しましたとでも言うようなソレに、俺は完全に気後れしてしまう。

 平時であるなら、絶対に触りたくもない。いや、むしろ視界に入れることさえ嫌だと思えるソレ。しかし、敵は待ってなどくれない。俺がここにいることを理解しているのか、そいつらは盛大に音を立てて近づいて来ている。


 カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ――――。


 音を聞くだけで分かる。奴らは、スケルトンだけで、少なく見積もっても十以上の数だと。迎え撃つには、あまりにも多すぎると。


「やるしかない、やるしかない、やるしかない、やるしかない、やるしかない、やるしかない、やるしかない、やるしかない、やるしかない」


 ブツブツと呟いて、俺は極力視界に入れたくない悪趣味過ぎる扉へと視線を移す。



 ギョロリッ!



「っ!? ひっ!!?」


 が、頑張って覚悟を決めたところで、俺はその扉の頭蓋骨達に眼球ができる瞬間を目撃してしまった。空洞になっていた二つの窪みから……その、暗い闇の奥底から、剥き出しの『眼球』が覗いた瞬間を……。

 グリングリンと両の目が滅茶苦茶に動き回り、その視線を漂わせる。


「む、無理……」


 逃げ道はこの扉しかないと分かっていても、俺には、ノブになっている血が滴る手の骨を取ることは、ギョロギョロと動く 眼球の前に立つことは、できそうになかった。カシャカシャという音が近づく。


 もう、戦うしか道はないのか……。


 そう考えた直後、スケルトンが姿を現し……その頭蓋骨の中にスライムを抱え込んでいるのを見てしまった。


「ぁぁ……」


 万に一つも勝ち目はない。だから、俺は恐怖を圧し殺して、なぜか動きを止めて俺を見つめる眼球達を無視して、そのヌルリとした、ノブとなっている手を取った。


『第一フロア 地帯区分C

柿村啓はC地帯へ進行

これより、スケルトンパラダイス』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こんな扉、絶対に嫌だ、と思えるものを作ってみました!

いやはや、私だったらこんな扉を前にしたら泣きますよ。

扉の描写が若干グロいかなぁと思って、『*』をつけたくらいですしねっ!

さて、次回は、『スケルトンパラダイス』でのお話です。

響きからして、恐ろしいですけど、柿村君は頑張らせます!
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