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第一章 復讐の聖女候補
第四十話 もう一つの復讐1
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最初にターゲットにしたシエラ・ポンピーネは、ほどなくして領地に居た家族にも復讐の手が及んでいた。対して、アルリエ・リナスは、未だにその家族への復讐は行われていない、というのは、実は間違いだ。
アルリエには、両親と三人の兄が居る。アルリエの両親と兄達は、末娘のアルリエを散々に甘やかし、兄の内の一人に至っては、アルリエに暴力を教えていた。代々文官を輩出するその家系において、武力、暴力なんてものは、その兄が居なければ縁のないものだったが、文官の家系でありながら武官を目指した彼によって、アルリエは幼い頃から武術を磨いてきた。
甘やかしによる我儘な性格の形成と、武術教育による暴力を至上とする思考回路。アルリエ・リナスという人間は、そうやって作り出された存在だった。だから、こそ……レアナが、それを許すはずもなかったのだ。
「アルリエは、今頃元気にしているだろうか?」
「父上、アルリエが心配なのは私達も同じことですが、聖華塔ほど警備の厳重な場所ならば、何事もありませんよ」
「兄上、そう言いながら、先程から手が止まっていますよ?」
「っ、し、仕方ないだろう? 可愛い妹のことを思って、何が悪いっ」
宮廷の文官として働くのは、アルリエの父親と上の兄二人だ。
可愛い可愛い妹を思いながら、珍しく一堂に介した彼らは、王太子の命令で、しばらく一緒に行動することを義務づけられていた。王太子には、前世の記憶が残っている。だからこそ、次に異変が起こるとしたら誰なのかを、感覚的に理解して、守ろうとしていたのだ。そっと警備を配置して、異変が起こらないことを祈りながら、何かが起こった時にすぐさま対応できるようにしていた。ただし……それは、人間が相手ならば、どうにかできるというレベルでしかない。
家族仲の良いリナス家は、和気藹々といった様子で可愛い妹を思いながら、三つ用意された机に載る書類を片付けていく。
「そろそろ、アルリエから手紙が届いてないかなぁ」
「さぁ、アルリエも忙しいでしょうし、そんなに頻繁には届かないのでは?」
次男と長男がそんな話をしながら、最後の書類を仕上げてペンを置く。
「父上、そちらはどう……父上?」
自分達で回せるものがあるのであれば、父親を手伝おう。そんな、親切心で声をかけた長男は、父親を見て首をかしげる。
穏やかで優しい父親は、長男の声に気づかずに、一心不乱に、血走った目で、何かを書き綴っていた。
「父上?」
「父上……何を、なさっているんですか?」
ガリガリガリガリと何事かを書き連ねる父親の様子に、戸惑う次男と、勇気を出して問いかける長男。しかし、やはり、父親は、顔をあげることなく、ガリガリガリガリと書き続ける。
アルリエには、両親と三人の兄が居る。アルリエの両親と兄達は、末娘のアルリエを散々に甘やかし、兄の内の一人に至っては、アルリエに暴力を教えていた。代々文官を輩出するその家系において、武力、暴力なんてものは、その兄が居なければ縁のないものだったが、文官の家系でありながら武官を目指した彼によって、アルリエは幼い頃から武術を磨いてきた。
甘やかしによる我儘な性格の形成と、武術教育による暴力を至上とする思考回路。アルリエ・リナスという人間は、そうやって作り出された存在だった。だから、こそ……レアナが、それを許すはずもなかったのだ。
「アルリエは、今頃元気にしているだろうか?」
「父上、アルリエが心配なのは私達も同じことですが、聖華塔ほど警備の厳重な場所ならば、何事もありませんよ」
「兄上、そう言いながら、先程から手が止まっていますよ?」
「っ、し、仕方ないだろう? 可愛い妹のことを思って、何が悪いっ」
宮廷の文官として働くのは、アルリエの父親と上の兄二人だ。
可愛い可愛い妹を思いながら、珍しく一堂に介した彼らは、王太子の命令で、しばらく一緒に行動することを義務づけられていた。王太子には、前世の記憶が残っている。だからこそ、次に異変が起こるとしたら誰なのかを、感覚的に理解して、守ろうとしていたのだ。そっと警備を配置して、異変が起こらないことを祈りながら、何かが起こった時にすぐさま対応できるようにしていた。ただし……それは、人間が相手ならば、どうにかできるというレベルでしかない。
家族仲の良いリナス家は、和気藹々といった様子で可愛い妹を思いながら、三つ用意された机に載る書類を片付けていく。
「そろそろ、アルリエから手紙が届いてないかなぁ」
「さぁ、アルリエも忙しいでしょうし、そんなに頻繁には届かないのでは?」
次男と長男がそんな話をしながら、最後の書類を仕上げてペンを置く。
「父上、そちらはどう……父上?」
自分達で回せるものがあるのであれば、父親を手伝おう。そんな、親切心で声をかけた長男は、父親を見て首をかしげる。
穏やかで優しい父親は、長男の声に気づかずに、一心不乱に、血走った目で、何かを書き綴っていた。
「父上?」
「父上……何を、なさっているんですか?」
ガリガリガリガリと何事かを書き連ねる父親の様子に、戸惑う次男と、勇気を出して問いかける長男。しかし、やはり、父親は、顔をあげることなく、ガリガリガリガリと書き続ける。
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