貶められた聖女候補は、復讐します

星宮歌

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第一章 復讐の聖女候補

第五十九話 サミュエルの答え

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 魔王の居城にして、レアナの安息の地。その場所へと足を踏み入れたサミュエルは、捜し回るまでもなく、レアナの姿を見つける。


「あなたが、今代の真の聖女だな?」


 真っ黒なドレスを身に纏う黒目黒髪の少女。玄関で待ち構えていた少女は、元々庶民であるとは思えないほど優雅に見えた。


「ふふっ、あハハっ、ネェ? 魔王をどコニやっタノ?」


 しかし、彼女が壊れてしまったことに、そのどこかおかしな笑みを見て気づいてしまう。


「魔王? いや、知らないが。それよりも、私は、あなたを止めに来た」

「シラナイ? とめル? トメル? フフ、フフフフッ。ワタシヲ? タカダカ、勇者ゴトキガ?」

「勇者だとかはどうでもいい。私は、この負の連鎖を絶ち切る。ただ、それだけのために生きてきた」


 その言葉に嘘はない。レアナを見つけられなければ、サミュエルは、大切な存在を失うのだから。何度も何度も転生して、大切なものなど作りたくないと思うのに、何度も何度も、大切に想う誰かを得てしまう。


「フフフッ、ジャア、ヤッテミナヨ? ネェ、ユウシャサ、マ…………?」


 何度も何度も説得した。何度も何度も失敗した。そして……何度も何度も思考を巡らせて、サミュエルは、ようやく、勇者としてあり得ない選択肢を取った。


「ァ…………」


 救うべき存在に剣を向けるなど、本当の勇者であればあり得ないこと。しかし、サミュエルは、彼女達を救えないのだと諦める。


「すまない。しかし、こうする以外に、この世界の滅びを止める手段などない」


 絶望の昏い瞳が、徐々に光彩を失う様子を、レアナの心臓に剣を突き立てたサミュエルは黙って眺める。


「ワ、タシ、タチハ…………」


 『ただ、幸せになりたかっただけなのに……』そんな、声にならない声は、サミュエルの耳に届くことなく消えていく。


「安心してくれ。私も、このまま生きながらえるつもりはない」


 完全に力を失ったレアナから剣を引き抜いたサミュエルは、レアナをその場に横たえ、そのまぶたを閉じてやる。


「私は……あなた達とともに、幸せな未来を築きたかった」


 レアナの頬にそっと手を滑らせたサミュエルは、そのまま、短剣を取り出す。予め毒を塗った短剣。少しでも傷つけば死に至る猛毒。それを、サミュエルは躊躇うことなく自身の胸に突き刺す。


 所有者が不明の魔の森に建てられた建築物。そこには、二つの遺体がいつまでも、残されていた……。













 『エラー発生、エラー発生、エラー発生、修正開始、修正、エラー、エラー、修正、エラー、エラー、エラー、エラー、修正――――――。修復不能。上位権限者の応答を求めます。――――承認。十以上のエラー、及び、特異点の出現により、次の段階へ移行します。処理、開始――――完了。魔王、勇者、真の聖女は、これより$%^☆&?*="――――。……を開始します』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

この作品に関しては、年内の更新はこれにて終了です。(キリも良いですし)

第一章が終わりですので、次は第二章。

いや、だって、聖女候補達は残っていましたし、レアナちゃんやらサミュエルやらに救いがなさすぎですからねぇ?

ただ、ちょーっとプロットを練る時間も必要なので、しばらくは休止しているかと思います。

第二章で、ようやく、恋愛要素を書けるっ、と思って張り切っていますので、しばしお待ちください。

それでは、よいお年を~♪
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