貶められた聖女候補は、復讐します

星宮歌

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第二章 戻された世界

第百一話 対面

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 アニエスの居場所は、さほど探すこともなく判明した。彼女は、自分の家に戻っていたのだ。ロジエル、シェナ、レアナの家族とともに過ごしていた家に……。


「お母様……」

「…………レアナ?」


 当然、レアナがアニエスと対面することは危険な行為だった。彼女の目的は、シェナかレアナが持っているかもしれない鍵なのだから。

 メルフィー達ですら、その鍵がどんな形で存在しているのかは知らない。そして、レアナ自身も、自分にそんなものがあるとは思えないという状況。恐らくは、まだ誰にも捕まることなく逃亡しているのであろうシェナの魂にその鍵があるのではないかと思われてはいるものの、それすらも不確かだった。

 ロッキングチェアに腰掛けていたアニエスは、虚ろな表情でレアナの方へ顔を向け、その表情を驚愕で彩る。


「アニエス」

「っ、ロジエル!? な、ぜ……?」


 何があったのか、憔悴してやつれたアニエスの顔。それをロジエルだけが痛ましいとでも言うかのような表情で眺める。


「アニエス、もう、終わりにしよう」


 ロジエルの救出は、実は簡単に行えた。いや、そもそも、ロジエルはアニエスの愛しさゆえに、アニエスの行動を止められなかっただけであり、一の神としての力が本当に奪われたわけではなかった。確かに、力のいくらかを渡すことにはなったものの、ロジエルさえ望めば、それはすぐにでも返ってくるものだったのだ。
 小さな洞窟に封じられていたロジエルは、レアナ達の説得によって、ようやく、アニエスを止めるという方向に動き出した。
 全ては、ロジエルがジリエルの名を騙っていたことが原因で、そのせいで生まれた悲劇の数々を聞けば、ロジエルとて動かないわけにはいかなかったのだ。


「終わり? そんなの嫌よ! ジリエル様を助けなきゃ。私の愛する人を返せっ!」


 鬼の形相でロジエルに詰め寄ろうとしたアニエスだったが、その前にバランスを崩して倒れ込んでしまう。
 アニエスが取り込んだロジエルの力。それは、アニエスにとって負担もあったのだ。ただ、復讐心とジリエルの想いだけで動き続けたアニエスは、今、すでに限界を迎えていた。


「アニエス……すまない。それは、できない」


 『返せ、返せ、返せ、返せ』とひたすらに叫ぶアニエス。それを、悲痛な表情で眺めながらも、受け入れることのないロジエル。
 レアナは、両親のその様子にグッと歯を食いしばりながら、一歩、踏み出す。


「お母様。シェナお姉ちゃんは、お母様が殺したの……?」


 レアナにとって、最も辛いはずの質問。しかし、それでも問わなければならなかった。そして……。


「シェナお姉ちゃんは、どこ?」


 未だ、行方の知れぬ姉の魂。その居場所を知りたいと願うのは、きっと、おかしなことではなかった。


「シェナ、シェナ……アァあぁァァぁァあぁあっ」


 しかし、その問いかけをした途端、アニエスは頭を抱えて叫び出した。
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