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第一章 肝試しの夜
第十五話 黒く黒く(杉下・中田グループ)
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『昼休み後の生徒集団失踪!
現代の神隠しか!?
七月七日、昼休みが終わり、一人の教師が教室へと訪れたところで、その事件は発覚した。
生徒が誰も居ないことに気づいた教師は、まずは移動教室だと思われる何かがあっただろうかと捜索を開始。
しかし、生徒達は見つからず、集団ボイコットの可能性すらあるとされたが、その教師は生徒に慕われるタイプの優しい教師。
きっとその線はないだろうと、新聞部一同は考えている。
放課後になる前に、全教職員総出での捜索が決定したらしく、学校は騒然とした。
そして本日、七月八日。
学校は急遽休校となって、警察官の姿も見える状態に。
ひとまず、私達新聞部は、己の使命を全うすべく、この記事をこっそり図書室へ貼り付けて帰還する所存である』
そう、締め括られた記事。結局のところ、行方不明になった生徒がどうなったのかは不明で、事の真相はこの後に判明していたのだとしても、今、それを知る術はない。
「集団失踪……神隠し……もしかして、開かずの教室って……」
「た、確か、望月さんも、開かずの教室ができたのは十年くらい前だって……」
少なくとも、記事の内容を見る限りただ事ではない。そして、教室が閉鎖されたことまで考えると……。
「生徒は、戻ってこなかった……?」
突然の集団失踪。恐らくは、一つの教室に居た生徒が丸々全員消えたのではなかろうかと思われる事件。現代においてそんな馬鹿なことが起こるなんて思えないのだが、それでも今、色々とあり得ない状況を体験している身では『あり得る』と思えてしまうのも無理はない。
「あっ、あった。す、杉下さん、新聞にも書いてある」
新聞は、地方紙と全国紙のどちらもあり、そのうちの地方紙の方に、この集団失踪事件が載っていた。
『真っ昼間の集団失踪!
平和な学校で何が?
七日、午後十三時頃、願希小学校の五年五組の教室に居た生徒が、全員失踪するという事件が発生。
事件発生当時、第一発見者である職員はすぐに上司へ連絡し、職員総出での捜索を行ったが、生徒達を発見することはできなかった。
警察は、生徒が何らかの事件に巻き込まれたものとして捜索を開始している』
そこに書かれている情報は、新聞部が書いた内容と多少の差はあるものの、新聞部の学内新聞の方が詳細に書かれている部分が大きい。
「地方紙に載るってことは、そこそこ大きな事件だったみたいね」
「う、うん……でも、これ以上の記録はなさそう……」
残念そうに告げる中田だったが、杉下は首を横に振る。
「大丈夫。私だったら、何の手がかりも見つけられなかったと思うから。ありがとう」
「っ、うん!」
ほんのり頬を赤くする中田。その姿を余所に、杉下はここから導き出せる何かを探ろうと、必死に頭を回転させる。
「まず、ここは十年前の図書室みたいだけど、私達が本当に十年前に来たのか、それとも、十年前の図書室のように見せかけたどこかに居るのか……」
「そ、そうだね……それと、開かずの教室とこの事件、それと、今、僕達が体験している異常が全部繋がってるなら、何が原因なのか、推測くらいはできるかもしれない」
そう言いながら、中田は最後の資料である図書室日誌を慣れた手付きで引き出しの中から取り出す。
「ぼ、僕が知ってる日誌とは違うけど、収める場所は変わってないみたい。これは、その日に図書委員としてここで貸出の受付をしてた人が書くものだから、情報がないかもだけど……」
『図書室日誌』と書かれたノートをペラペラとめくりながら説明していた中田は、その途中で『ひっ』と悲鳴を上げる。
「どうしたの!?」
「に、日誌の中が……」
「日誌?」
訝しげにしながらも、杉下は怯える中田の手にある日誌を覗き込む。
「っ……これって……」
『七月八日』と書かれたそこには、本来書かれているはずの内容を、ぐるぐると黒く塗り潰されたページがあった。
現代の神隠しか!?
七月七日、昼休みが終わり、一人の教師が教室へと訪れたところで、その事件は発覚した。
生徒が誰も居ないことに気づいた教師は、まずは移動教室だと思われる何かがあっただろうかと捜索を開始。
しかし、生徒達は見つからず、集団ボイコットの可能性すらあるとされたが、その教師は生徒に慕われるタイプの優しい教師。
きっとその線はないだろうと、新聞部一同は考えている。
放課後になる前に、全教職員総出での捜索が決定したらしく、学校は騒然とした。
そして本日、七月八日。
学校は急遽休校となって、警察官の姿も見える状態に。
ひとまず、私達新聞部は、己の使命を全うすべく、この記事をこっそり図書室へ貼り付けて帰還する所存である』
そう、締め括られた記事。結局のところ、行方不明になった生徒がどうなったのかは不明で、事の真相はこの後に判明していたのだとしても、今、それを知る術はない。
「集団失踪……神隠し……もしかして、開かずの教室って……」
「た、確か、望月さんも、開かずの教室ができたのは十年くらい前だって……」
少なくとも、記事の内容を見る限りただ事ではない。そして、教室が閉鎖されたことまで考えると……。
「生徒は、戻ってこなかった……?」
突然の集団失踪。恐らくは、一つの教室に居た生徒が丸々全員消えたのではなかろうかと思われる事件。現代においてそんな馬鹿なことが起こるなんて思えないのだが、それでも今、色々とあり得ない状況を体験している身では『あり得る』と思えてしまうのも無理はない。
「あっ、あった。す、杉下さん、新聞にも書いてある」
新聞は、地方紙と全国紙のどちらもあり、そのうちの地方紙の方に、この集団失踪事件が載っていた。
『真っ昼間の集団失踪!
平和な学校で何が?
七日、午後十三時頃、願希小学校の五年五組の教室に居た生徒が、全員失踪するという事件が発生。
事件発生当時、第一発見者である職員はすぐに上司へ連絡し、職員総出での捜索を行ったが、生徒達を発見することはできなかった。
警察は、生徒が何らかの事件に巻き込まれたものとして捜索を開始している』
そこに書かれている情報は、新聞部が書いた内容と多少の差はあるものの、新聞部の学内新聞の方が詳細に書かれている部分が大きい。
「地方紙に載るってことは、そこそこ大きな事件だったみたいね」
「う、うん……でも、これ以上の記録はなさそう……」
残念そうに告げる中田だったが、杉下は首を横に振る。
「大丈夫。私だったら、何の手がかりも見つけられなかったと思うから。ありがとう」
「っ、うん!」
ほんのり頬を赤くする中田。その姿を余所に、杉下はここから導き出せる何かを探ろうと、必死に頭を回転させる。
「まず、ここは十年前の図書室みたいだけど、私達が本当に十年前に来たのか、それとも、十年前の図書室のように見せかけたどこかに居るのか……」
「そ、そうだね……それと、開かずの教室とこの事件、それと、今、僕達が体験している異常が全部繋がってるなら、何が原因なのか、推測くらいはできるかもしれない」
そう言いながら、中田は最後の資料である図書室日誌を慣れた手付きで引き出しの中から取り出す。
「ぼ、僕が知ってる日誌とは違うけど、収める場所は変わってないみたい。これは、その日に図書委員としてここで貸出の受付をしてた人が書くものだから、情報がないかもだけど……」
『図書室日誌』と書かれたノートをペラペラとめくりながら説明していた中田は、その途中で『ひっ』と悲鳴を上げる。
「どうしたの!?」
「に、日誌の中が……」
「日誌?」
訝しげにしながらも、杉下は怯える中田の手にある日誌を覗き込む。
「っ……これって……」
『七月八日』と書かれたそこには、本来書かれているはずの内容を、ぐるぐると黒く塗り潰されたページがあった。
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