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第一章 肝試しの夜
第十四話 十年(杉下・中田グループ)
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しばらく図書室を散策していた中田は、どんどんその表情を困惑させていた。
「す、杉下さん。ここ、僕達が知ってる図書室じゃなさそう」
「え? どういうこと?」
明るい空間というのは、暗闇に比べれば安心感が大きくなる。それにもかかわらず、中田の表情は青いままで、そっと『新刊』と書かれたコーナーにある本を手に取る。
「そ、その、僕が知る図書室の本と、今並んでる本が、全然違ってて、ここの新刊コーナーの本は、普通の本棚にあったはずなんだ……」
そう言って、背表紙から少しだけページをめくり、出版日などが書かれた『奥付』と呼ばれる場所を確認する。
「二〇一三年……こっちも、二〇一三年、二〇一二年、二〇一三年、二〇一一年……」
「何、見てるの?」
「……これ、出版された日付が、大体十年前のものばっかりだ」
「えっ? でも、新刊でしょ? 普通は、最近発売されたものを置くんじゃないの?」
確かに、本来ならば新しい本がこの場所に並ぶはずだ。もちろん、図書室という性質上、少しくらい昔の本でも生徒や親の要望や学校の方針で取り入れることもある。しかし、それでも、新刊のコーナーが十年前の本ばかりというのはあり得なかった。
「……た、多分、なんだけど……ここ、十年くらい前の図書室だと、思う……」
「はっ……?」
普通ならば、あり得ないと一蹴するようなことだったが、今は、そのあり得ないことばかりが起こっている状態。
杉下は、少しだけ固まると、眉間にシワを寄せて頷く。
「私はあんまり図書室に来ないけど、中田君がそう言うならそうなんだと思う。何で十年前なのかは分からないけど……」
「そう、だよね……手がかりにならなくて、ごめん」
大きな異常は発見できたものの、それ以上の発展がない。それに気づいて、中田は項垂れる。
「っ、そんなことない! とりあえず、何で十年前なのかとか、他に手がかりを探してみよう! ほらっ、当時の状態とか、何かあるかもしれないしっ」
「当時の状態……あっ! 新聞! あと、学内新聞とか図書室日誌もあったはずっ!」
そう言って中田は、いそいそと新聞や学内新聞と思しきものを持ってくる。
「普通の新聞は……うん、やっぱり、十年前だ」
新聞に書かれた年月日は、『二〇一三年七月八日』が最新らしい。そして……。
「学内新聞は……え……?」
学内新聞という名のポスター。そこに書かれていたのは、本来のほのぼのとした内容とは程遠いもの。
「何これ? 生徒集団失踪? 神隠し?」
それは、『二〇一三年七月八日』の日付で書かれた記事だった。
「す、杉下さん。ここ、僕達が知ってる図書室じゃなさそう」
「え? どういうこと?」
明るい空間というのは、暗闇に比べれば安心感が大きくなる。それにもかかわらず、中田の表情は青いままで、そっと『新刊』と書かれたコーナーにある本を手に取る。
「そ、その、僕が知る図書室の本と、今並んでる本が、全然違ってて、ここの新刊コーナーの本は、普通の本棚にあったはずなんだ……」
そう言って、背表紙から少しだけページをめくり、出版日などが書かれた『奥付』と呼ばれる場所を確認する。
「二〇一三年……こっちも、二〇一三年、二〇一二年、二〇一三年、二〇一一年……」
「何、見てるの?」
「……これ、出版された日付が、大体十年前のものばっかりだ」
「えっ? でも、新刊でしょ? 普通は、最近発売されたものを置くんじゃないの?」
確かに、本来ならば新しい本がこの場所に並ぶはずだ。もちろん、図書室という性質上、少しくらい昔の本でも生徒や親の要望や学校の方針で取り入れることもある。しかし、それでも、新刊のコーナーが十年前の本ばかりというのはあり得なかった。
「……た、多分、なんだけど……ここ、十年くらい前の図書室だと、思う……」
「はっ……?」
普通ならば、あり得ないと一蹴するようなことだったが、今は、そのあり得ないことばかりが起こっている状態。
杉下は、少しだけ固まると、眉間にシワを寄せて頷く。
「私はあんまり図書室に来ないけど、中田君がそう言うならそうなんだと思う。何で十年前なのかは分からないけど……」
「そう、だよね……手がかりにならなくて、ごめん」
大きな異常は発見できたものの、それ以上の発展がない。それに気づいて、中田は項垂れる。
「っ、そんなことない! とりあえず、何で十年前なのかとか、他に手がかりを探してみよう! ほらっ、当時の状態とか、何かあるかもしれないしっ」
「当時の状態……あっ! 新聞! あと、学内新聞とか図書室日誌もあったはずっ!」
そう言って中田は、いそいそと新聞や学内新聞と思しきものを持ってくる。
「普通の新聞は……うん、やっぱり、十年前だ」
新聞に書かれた年月日は、『二〇一三年七月八日』が最新らしい。そして……。
「学内新聞は……え……?」
学内新聞という名のポスター。そこに書かれていたのは、本来のほのぼのとした内容とは程遠いもの。
「何これ? 生徒集団失踪? 神隠し?」
それは、『二〇一三年七月八日』の日付で書かれた記事だった。
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