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第一章 傷だらけの剣姫

第十五話 闇の中の二人

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 剣姫という名は、その身から一振りの剣を生み出すことからつけられたものだ。そして、剣にはそれぞれ名前がある。ネリアの妹であるミリアの剣の真名は『デス』。死を意味するその名ではあるが、その意味は、魔物への死をもたらすモノという意味として捉えられ、歓迎されていた。


「ミリア。あぁ、お前は本当に、強く、美しいな」

「まぁ、カイン様。ありがとうございます。嬉しいですわ」


 罪人の魂がより集まってできた国家。その本質は、やはり悪に満ちていることに変わりはない。
 オチと名付けられた国の城では、月に一度、平民が秘密裏に捧げられる。そして、城の者達は、その平民がどこまで保つかを賭けて、様々な趣向を凝らした虐めを行うのだ。名目上は、使用人だとか、料理人だとかいったもので採用され、城の王侯貴族から使用人に至るまでが、その人間を虐げる。そして、現在、ミリアとカインの二人が見つめ合い、口づけを交わしている場所は、ミリアの剣によって命を奪われ、剥製にされた人間達が飾られたコレクションルームだった。


「『デス』の力は素晴らしいな。人間の命を吸い上げることで、それ以上の死を撒き散らす」


 表向き、ミリアの剣姫としての能力は、殺傷能力に特化したものだと思われている。しかし、それを実現するためには、人間の命が必要だった。


「んっ……カイン様のお力だって、とっても素晴らしいですよ?」


 そう告げるミリアの言葉に、カインは気を良くしたように顔を綻ばせる。


「あぁ、そうとも。私の守王としての能力は、絶大な力を発揮する」


 カインは、歴代最高峰の守王としての力を有している。そして、その代償は、結界内の人間の体力……いや、恐らくは、生命力だということが判明している。そして、その代償を払わせる誰かを、カインは自ら選択することができた。そうすれば、カインの結界の中に居る者は徐々に弱り、死に至る。密かに邪魔な人間を消したい時に、この力はとても有効だった。


「邪魔者も消えた。後は我々が正しく、国を管理すれば良いだけの話だ」

「そうですね。あの女が側に居ると、どうも力が出ませんでしたが、これからはそんなこともありませんわ。二人で楽しく、国を支配しましょう」


 にこやかに笑い合う二人。そこに愛情が本当に存在するのかは疑わしいが、とりあえずは、二人は愛し合っているというのが表向きの情報だ。

 罪人の魂が集まるオチ国。そこで、力を持つ者がどういう存在なのか。そして、ネリアがどんな役割を果たしていたのか。それが明らかになる日は、少しずつ、近づいていた。
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