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第二章 旅と王都
第三十六話 ソワソワなネリア(ネリア視点)
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ふと、周りを見渡せば、知識がなくとも理解できるほどの高価な家具や調度品が目に入る。ベッドも天蓋付きのお姫様が使うようなもので、とてもフカフカだ。
(私……場違い、だよね……)
たまたまゼス様に助けられただけの私は、ゼス様にお礼をしたいとは思うものの、返せるものが何もない。それなのに、ゼス様は私をここに泊めてくれている。衣食住を完全に賄ってもらっているこの状況は、きっと、よろしくはない。
(何とかして仕事をもらわないと。それで、お給料をもらって、少しでも、ゼス様達にお礼をしなきゃ)
アルマさんに様々なことを教えてもらえているのだって、護衛をつけてもらっているのだって、私にはもったいない行為でしかない。それでも、それを拒否できないのは、私が臆病だからだ。
(頑張らなきゃ。頑張って、ここを出て、自分で、一人で、生活できるようにならなきゃ)
もう、目は見える。アルマさん達からは、まだまだ細いとは言われているものの、一応、栄養もそこそこ行き渡りつつある。きっと、行動するなら今だ。
(まずは、護衛の人達に話してみよう)
護衛として紹介されたのは、二人。一人は女性で、一人は男性だ。この二人は夫婦で近衛騎士という役職にあるらしく、とても信頼できる人達なのだそうだ。
「ハルクさん」
今の時間の護衛は、きっと夫のハルクさんの方だろうと思って、扉を少しだけ開けて声をかけると、とても大柄な強面の男性がチラリと振り向く。
「何かありましたか?」
最初の顔合わせの時、少し怖そうな人だと思っていたものの、それでも、今は声をかけないわけにはいかない。
「あの、私、仕事がしたいんです。だから、外に出ても良いですか?」
仕事探しをするならば、色々と歩いて確認しなければならない。だから、私は不思議なことを言ったつもりは欠片もなくて……ハルクさんが首をかしげる様子に、思わず、私も首をかしげる。
「仕事……なぜ、仕事をしようと?」
「えっ? あ、あの……」
そんなことを聞かれると思っていなかった私は、戸惑いながらも正直なところを告げる。
「私、こんなに良くしていただいて、それなのに、私は何も持っていません。だから、働いて、何かお礼ができるようになればな、と」
正直に自分の考えを告げた私だったが、私の予想に反して、ハルクさんは眉間に大きくシワを寄せている。
「ハルクさん……?」
やはり、私のような落ちこぼれは、どこでも雇ってもらえないのだろうか。そう、諦めかけたところ、ハルクさんが口を開く。
「今日、護衛の交代の時に、確認を取ってくる。それまでは、大人しくしていてほしい」
「っ、はい!」
もしかしたら、どのタイミングで許可をもらうかを考えてくれていたのかもしれない。すぐに、というわけではないのは残念だが、こればかりは仕方ない。
「よろしくお願いします!」
「あぁ」
それから数時間後の交代の時間まで、私はひたすら、ソワソワすることとなった。
(私……場違い、だよね……)
たまたまゼス様に助けられただけの私は、ゼス様にお礼をしたいとは思うものの、返せるものが何もない。それなのに、ゼス様は私をここに泊めてくれている。衣食住を完全に賄ってもらっているこの状況は、きっと、よろしくはない。
(何とかして仕事をもらわないと。それで、お給料をもらって、少しでも、ゼス様達にお礼をしなきゃ)
アルマさんに様々なことを教えてもらえているのだって、護衛をつけてもらっているのだって、私にはもったいない行為でしかない。それでも、それを拒否できないのは、私が臆病だからだ。
(頑張らなきゃ。頑張って、ここを出て、自分で、一人で、生活できるようにならなきゃ)
もう、目は見える。アルマさん達からは、まだまだ細いとは言われているものの、一応、栄養もそこそこ行き渡りつつある。きっと、行動するなら今だ。
(まずは、護衛の人達に話してみよう)
護衛として紹介されたのは、二人。一人は女性で、一人は男性だ。この二人は夫婦で近衛騎士という役職にあるらしく、とても信頼できる人達なのだそうだ。
「ハルクさん」
今の時間の護衛は、きっと夫のハルクさんの方だろうと思って、扉を少しだけ開けて声をかけると、とても大柄な強面の男性がチラリと振り向く。
「何かありましたか?」
最初の顔合わせの時、少し怖そうな人だと思っていたものの、それでも、今は声をかけないわけにはいかない。
「あの、私、仕事がしたいんです。だから、外に出ても良いですか?」
仕事探しをするならば、色々と歩いて確認しなければならない。だから、私は不思議なことを言ったつもりは欠片もなくて……ハルクさんが首をかしげる様子に、思わず、私も首をかしげる。
「仕事……なぜ、仕事をしようと?」
「えっ? あ、あの……」
そんなことを聞かれると思っていなかった私は、戸惑いながらも正直なところを告げる。
「私、こんなに良くしていただいて、それなのに、私は何も持っていません。だから、働いて、何かお礼ができるようになればな、と」
正直に自分の考えを告げた私だったが、私の予想に反して、ハルクさんは眉間に大きくシワを寄せている。
「ハルクさん……?」
やはり、私のような落ちこぼれは、どこでも雇ってもらえないのだろうか。そう、諦めかけたところ、ハルクさんが口を開く。
「今日、護衛の交代の時に、確認を取ってくる。それまでは、大人しくしていてほしい」
「っ、はい!」
もしかしたら、どのタイミングで許可をもらうかを考えてくれていたのかもしれない。すぐに、というわけではないのは残念だが、こればかりは仕方ない。
「よろしくお願いします!」
「あぁ」
それから数時間後の交代の時間まで、私はひたすら、ソワソワすることとなった。
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