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第二章 旅と王都

第三十七話 自立を目指すネリア(ネリア視点)

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「っ、ハルクさん、どうでしたか?」


 許可がどうなるかと待ちわびる私に、ハルクさんは相変わらずの怖そうな顔で眉間にシワを寄せる。


「今は、外に出すのは難しいが、前向きに検討するとアルマが」

「っ、じゃあ、いずれは働けるんですねっ!」

「あぁ、だが、アルマが……」

「ありがとうございます。ハルクさんっ」

「…………あぁ」


 アルマさんに許可をもらえるのてあれば、きっと大丈夫だと喜ぶ私に、ハルクさんは重々しくうなずく。
 きっと、働くにしても、すぐには準備ができないことなのだろうということは、一応、予想していた。何事にも準備は必要で、唐突に言ってすぐにそれが叶うのは、裏方の人間がとても忙しく動いているからだと知っている。何せ、私は裏方の人間側であることが多かったのだから。


「そ、その、どのような仕事かとか、お話されましたか?」

「……いや、何も」

「そうですか。ふふっ、楽しみです」


 そんな私を、ハルクさんが複雑な表情で眺めていたことなど、この時は全く気づかなかった。


(お仕事、私にもできるものかな? ううん、できなくても、頑張ってできるようになれば良い。きっと、そうすれば……落ちこぼれって言われない、よね……?)


 私は私で、そんな考えに囚われて、ハルクさんを見る余裕などなかった。

 落ちこぼれの剣姫。その称号は、私の心にこびりついて離れない。私が落ちこぼれでさえなければ、きっと、虐げられることも、蔑まれることも、婚約破棄されることもなかった。ただ……。


(そうしたら、ゼス様達には、会えなかった……?)


 まだ、分からない。まだ、信用してはいけない。そう思うはずなのに、信じたい、という気持ちが生まれ始めている。そんな希望を持って、傷つくのは自分だというのに……。


「……アルマは、早ければ明日。遅くとも明後日には、この件に関して話すそうだ」

「っ、そうなんですね。ありがとうございます」


 鬱々とした考えに沈みかければ、ハルクさんの言葉で現実に引き戻される。


(今は、お仕事の話しが大切なんだった)


 きっと、遠からずこの城を出て生活することになるであろうことを思えば、それは死活問題だ。アルマさんが話してくれるとなれば、そこまで悪いことにはならないと思われるものの、それでも、気を引き締めなければならない。
 そして翌日、早速とばかりに、アルマさんが訪ねて来たのだった。
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