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第一章 幼少期編
第八十七話 我に返って
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黒ずくめ達が全員沈黙したところで、私はハッと我に返る。
(や、やっちゃった……)
確かに、許せない状況ではあった。そして、下手をすれば、せっかくお友達になれたレイア嬢達を失うかもしれない事態でもあった。しかし、ここは王妃様主催のお茶会会場。勝手に暴れて良いわけがないし、こんなことをすれば、余計に黒が嫌われるとも考えられる。
(ご、誤魔化さないと……えーっと)
「み、みゅう?」
咄嗟に私は、『何かあった?』的に小首をかしげてみせる。
その瞬間、こちらに注目していた貴族のご令嬢、ご令息達が、ザッと一歩後退る。しかし、その後に予想外のことが起こった。
「ご苦労でした、アルテナ嬢。さすが、『王家の守り人』です」
いち早く正気に戻った王妃様からのそんな言葉に、私は必死に頭を回転させる。
(お、王家の守り人? そんなものになった記憶は……いや、でも、対外的にそういうことにしておけば、私を咎める者は居ない……?)
恐らくは、私を守ろうとしてであろう発言に、私はほぼ一瞬で答えを出して、その場でカーテシーを披露する。
「これも、『王家の守り人』として当然のことです」
「面を上げなさい。此度の働き、私は大いに評価したいと思います。後程、陛下からの報奨もあるでしょう」
「ありがたきお言葉」
他の貴族のご令嬢、ご令息が居るために、私は王妃様の言葉にどうにか合わせて、不都合が出ないようにしていく。
「しかし、これではお茶会の再開、というわけにはいきませんね。ひとまずは、解散いたしましょう。アルテナ嬢には、話がありますので、少し残ってもらいます」
「はい」
そんなやり取りを行った後、その場は解散となった。ご令嬢、ご令息達が急いで帰っていく中、私の元へは、愛しい人が駆け寄ってくる。
「ゆみりあっ! どうして、あんなむちゃを! けがはない? くるしかったり、きぶんがわるかったりしない?」
酷く取り乱したイルト王子は、普段の丁寧な呼び方を変えて、呼び捨てで私を呼んで心配してくれる。
(はぅっ、イルト様から、呼び捨てで呼ばれた……どうしよう、これ、ご褒美かな?)
「ゆみりあっ、きいてるの!?」
「はっ、イルト様が素敵過ぎて、意識が飛んでましたっ」
肩を揺すられたことで、ようやく現実世界に戻れた私は、そのまま、不機嫌そうなイルト王子に両手で頬を押さえられる。
「ゆみりあ、もう、ぜったい、あんなむちゃはしないでっ。もし、つぎがあったら、ゆみりあをぼくのへやにとじこめちゃうから」
うっすらと狂気が宿ったその瞳。しかし、私はその執着が嬉しくて、思わず微笑んでしまう。
「ゆみりあ?」
「はい、努力しますっ」
とりあえずは、模範解答を答えておこう。イルト王子の脅しにドキドキしていることがバレるのは、何となく不味い気がするのだ。
「やくそくだよ?」
「はい、約束です」
約束ならば、守らなければならない。きっと、大切な人が危機に陥れば我慢はできないのだろうが、約束を守ろうとすることにこそ、意味があるだろう。
そんな風に、イルト王子と話していると、いつの間にか、レイア嬢達が、私の近くに来ていた。
(や、やっちゃった……)
確かに、許せない状況ではあった。そして、下手をすれば、せっかくお友達になれたレイア嬢達を失うかもしれない事態でもあった。しかし、ここは王妃様主催のお茶会会場。勝手に暴れて良いわけがないし、こんなことをすれば、余計に黒が嫌われるとも考えられる。
(ご、誤魔化さないと……えーっと)
「み、みゅう?」
咄嗟に私は、『何かあった?』的に小首をかしげてみせる。
その瞬間、こちらに注目していた貴族のご令嬢、ご令息達が、ザッと一歩後退る。しかし、その後に予想外のことが起こった。
「ご苦労でした、アルテナ嬢。さすが、『王家の守り人』です」
いち早く正気に戻った王妃様からのそんな言葉に、私は必死に頭を回転させる。
(お、王家の守り人? そんなものになった記憶は……いや、でも、対外的にそういうことにしておけば、私を咎める者は居ない……?)
恐らくは、私を守ろうとしてであろう発言に、私はほぼ一瞬で答えを出して、その場でカーテシーを披露する。
「これも、『王家の守り人』として当然のことです」
「面を上げなさい。此度の働き、私は大いに評価したいと思います。後程、陛下からの報奨もあるでしょう」
「ありがたきお言葉」
他の貴族のご令嬢、ご令息が居るために、私は王妃様の言葉にどうにか合わせて、不都合が出ないようにしていく。
「しかし、これではお茶会の再開、というわけにはいきませんね。ひとまずは、解散いたしましょう。アルテナ嬢には、話がありますので、少し残ってもらいます」
「はい」
そんなやり取りを行った後、その場は解散となった。ご令嬢、ご令息達が急いで帰っていく中、私の元へは、愛しい人が駆け寄ってくる。
「ゆみりあっ! どうして、あんなむちゃを! けがはない? くるしかったり、きぶんがわるかったりしない?」
酷く取り乱したイルト王子は、普段の丁寧な呼び方を変えて、呼び捨てで私を呼んで心配してくれる。
(はぅっ、イルト様から、呼び捨てで呼ばれた……どうしよう、これ、ご褒美かな?)
「ゆみりあっ、きいてるの!?」
「はっ、イルト様が素敵過ぎて、意識が飛んでましたっ」
肩を揺すられたことで、ようやく現実世界に戻れた私は、そのまま、不機嫌そうなイルト王子に両手で頬を押さえられる。
「ゆみりあ、もう、ぜったい、あんなむちゃはしないでっ。もし、つぎがあったら、ゆみりあをぼくのへやにとじこめちゃうから」
うっすらと狂気が宿ったその瞳。しかし、私はその執着が嬉しくて、思わず微笑んでしまう。
「ゆみりあ?」
「はい、努力しますっ」
とりあえずは、模範解答を答えておこう。イルト王子の脅しにドキドキしていることがバレるのは、何となく不味い気がするのだ。
「やくそくだよ?」
「はい、約束です」
約束ならば、守らなければならない。きっと、大切な人が危機に陥れば我慢はできないのだろうが、約束を守ろうとすることにこそ、意味があるだろう。
そんな風に、イルト王子と話していると、いつの間にか、レイア嬢達が、私の近くに来ていた。
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