悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第百十七話 結界の中で

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「ユミリア! 今すぐこの結界を解きなさい!」


 ぐったりとしたアルト王子を近くのベッドに結界ごと移動しながら、イルト王子と一緒に運んだ後、なぜか、お父様の焦ったような声が聞こえて振り向く。


「お父様、陛下……?」

「ゆみりあじょう。ここは、はいってもらったほうがいいとおもう」

「みゅっ、そうですね」


 お父様と陛下、そして、その背後に居るのは、恐らくお医者様なのだろうが、先にお父様達へ事情説明をした方が良さそうだと、私は二人にだけ、結界が作用しないように設定して声をかける。


「お父様と陛下は、そのまま入って来てください。まだ、結界を解くわけにはいきませんので」


 そう言えば、お父様と陛下には私の声が届いたらしく、お父様を先頭に真っ黒なドーム状の結界へと入ってきてくれる。


「ユミリアっ、これはいったい、どういうことだ!?」


 そして、私の姿を確認するや否や、お父様は厳しい表情で私に問いかける。


「ゆみりあじょうをせめないでください。かのじょは、ぼくたちにとってのさいぜんのこうどうをとってくれたんです」

「最善の行動? しかし、ユミリアがこのようなことをしなければ、もっと早くにアルト王子を医者へ診せることができたはずですが?」

「みゅっ、そこは私が説明します。お父様、アルト王子の獣つき化が始まりました」

「なっ!?」

「ほう、アルトは、後天的な獣つきだと? しかし、なぜそう思う? ユミリア嬢は医者でもなんでもないはずだが?」


 絶句するお父様とは反対に、陛下の方はすぅっと目を細めて、問いかける。その返答如何では、私は処罰を下されることとなるだろう。


「はい、私は確かに医者ではありません。ですが、獣つきになる際、体に負荷がかかること、そして、初めに起こるのが魔力の暴走だということは知っています。そして、その時のために用意しておいた魔導具が、効力を発揮しました。現在、アルト王子の状態は落ち着いています」


 その言葉で、陛下はアルト王子の方へと視線を向け、すやすやと寝息を立てるその姿を確認する。


「解せんな。ユミリア嬢の言い分では、アルトが獣つきになることをあらかじめ知っていたように聞こえる」

「そのことについて、答えはございますが、それで納得してもらえるとは全く思えませんので、聞くかどうかは陛下ご自身にお任せしたいと存じます。もちろん、父は知っているので、私に直接聞くより、父に聞きたいというのであれば、それでもよろしいかと」


 前世の記憶。ゲームの記憶。そんなものを理解してもらえるなんて、欠片も思ってはいない。しかし、陛下に隠すことはできないだろう。そして、きっと、イルト王子にも、隠せない。背後から向けられるイルト王子の戸惑ったような視線に、私は応えないなどということはできないだろうから。


「よかろう。私は、ユミリア嬢の口から聞こうと思う」

「承知しました」


 幸い、今、私の話が聞けるのは、陛下とイルト王子、そして、お父様くらいだ。アルト王子は、目が覚めれば聞くことになるかもしれないが、それよりも先に説明が終わりそうだった。だから、私は覚悟を決めて、話し始めるのだった。
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