悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第百十八話 イルト王子の反応

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 前世の話と、ゲームとこの世界の関係性、それと、現在のアルト王子の状態を説明し終えると、その場には沈黙が満ちる。


「……ガイアスは、この話を信じたのか?」

「はい。他でもない娘の言うことです。実際、ユミリアの話には多くの符合点があります。それを考えれば、むやみに否定するべきではないと考えます」

「ゆみりあじょう、いたかった? もう、つらくない?」


 大人組が真剣に話し合う中で、私の話を一緒に聞いていたイルト王子は、なぜか瞳を潤ませてそんな問いかけをしてくる。


「えっと……私は何ともないですけど?」

「でも、さされたって、しんだって……さしたやつは、なんぜんかいでもころしてやりたいけど、それよりも、ゆみりあじょうがしんぱいだよ」


 すでに、その時の痛みも恐怖も過去のものだ。しかし、イルト王子にそう心配されて、私の胸はキュンッとなる。


「大丈夫ですっ! 今は何ともありませんし、イルト様が居てくれたらいつだって幸せ、ふみゅ!?」


 幸せいっぱいで力説をしていたら、なぜか、イルト王子にギュッと抱き締められる。


(ふわわわっ、何? ご褒美!? ご褒美なの!?)


 本当は、ちょっとだけ、前世のことを話せば、イルト王子がショックを受けるのではないかと心配していた。前世で生きていた時を合わせると、私はイルト王子よりかなり年上だし、知識も経験も多い。もし、それでイルト王子が離れていったら、寂しいし、耐えられないとさえ思っていたのだが……ぎゅうぎゅう抱き締めてくるイルト王子を見れば、それは杞憂だと分かる。


「ゆみりあじょう、どこにもいかないで? かってにしんだら、ちのそこまででもついていくから」

「ひゃいっ」


 ただし、前世で死んだ時の記憶を話したせいで、イルト王子は少し不安定になって……とっても嬉しい愛の告白をしてくれる。


(これって、死が二人を分かつまでじゃなくて、死してなお、共にあろうってことだよね!?)


 実際、そこまで思ってもらえているのは、とんでもなく嬉しい。それが多少、ヤンデレと呼ばれる者の言動っぽくとも、イルト王子ならばどんなことをされても許せてしまえるだろう自分が居た。


「おほんっ。ユミリア?」

「お父様、邪魔しないでください。イルト様をもっと堪能したいです」

「……ユミリア?」

「イルト様っ、私もギューです!」

「ぎゅーっ」


 どこか悲しみを帯びたお父様は無視だ。今、私が全力を注ぐべきことは、イルト様を堪能すること。それ以外は邪魔者でしかない。


「……諦めろ、ガイアス」

「う、うぅ……」


 私達がお互いから体を離した頃には、お父様は四つん這いになってうなだれており、陛下は何事かをブツブツと呟いたかと思えば、イルト王子に視線を向けて青ざめて黙り込む。


「みゅ?」

「おとなはたいへんそうだね? ゆみりあじょう」

「そうですね」

「じゃあ、まだふっかつしないみたいだから、もうすこしゆみりあじょうをだきしめても「ま、待て! 話が進まぬから、それは後にせよ」……ちっ、わかりました」


 何やら、イルト王子から舌打ちが聞こえた気もするが、きっと気のせいだろう。そうして、前世の話はひとまず置いておいて、アルト王子のことについて、話が進められるのだった。
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