悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第百七十七話 危機回避(アルト視点)

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 こんなことが、前にもあった。あの時は、イルトが私に敵意を見せたことで動揺して何もできなかった。結局は、セイとローランによって助けられ、自身の無力さと向き合うことにもなった。そして、今……。


「私は、前とは違うぞ?」


 私は、魔力をぶつけてくるイルトを真っ直ぐに見据え、それを、私自身の魔力で跳ね返す。


「っ」


 私は、かつての私ではない。自分の無力さを嘆くことしかできなかったあの頃とは違う。
 私の抵抗に、驚いた表情を見せるイルト。そして、その瞬間、ミーシャ嬢の魔力が溢れる。


「浄化!!」


 完璧なタイミングで、ミーシャ嬢の浄化の魔力がイルト達へ降りかかる。


「ぐっ」


 呻き声を漏らしたのは、イルトのみ、セイやローラン、鋼は、その顔をしかめて、退こうとするのを踏み留まっている。


(彼らには、まだ理性が残っていたか?)


 ミーシャ嬢が扱う魔法のことを理解した上で、それが効果を発揮している現状がどういうことなのか悟ったらしい。


「くっ……」

「ミーシャ嬢、私の魔力も使ってくれっ」


 魔力の受け渡しは、通常、恐ろしく困難だとされている。それは、あまりにも精密な魔力コントロールを双方に必要とされるからだ。しかし、私とミーシャ嬢ならば問題はない。


「お願いしますっ!」


 私とミーシャ嬢は、共にユミリア嬢から鍛えてもらった兄妹弟子の関係。魔力の受け渡しなどお手のものだ。
 私は、ミーシャ嬢を抱き締めたまま、魔力の受け渡しを行い、ミーシャ嬢もそれに応えてより強力な浄化を行う。







「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

「ふぅっ、ふぅっ……何とか、なったかな?」


 浄化が終わったのは、いったいいつだったのか、私には分からない。いつの間にか膝をついていた私は、どうにかミーシャ嬢を落とさずにいられたことに安心したものの、魔力の使い過ぎで、ミーシャ嬢ともども、わりと朦朧としていた。


「うぅ」

「うわぁ……僕達、随分と不味かったみたい、だね」

「あぁ、そうみてぇだ」

「くぅん」


 イルトも含め、全員が正気に戻ったが、彼らも彼らで消耗しているようで、動けないようだった。


「……動けるようになるまで、ここに居ると良い。そして、今回の話もしようではないか」


 唯一動けるであろう父上のありがたい言葉で私を含めた全員が頭を垂れる。

 とりあえず、国が滅ぶ危機……いや、もしかしたら、世界滅亡の危機は去ったのだ。父上からの提案は願ってもないものだった。何より、今、しっかりと話をして、今回の一件の原因を突き止めなければ、また同じことがあったりしたら心臓がいくつあっても足りない。


「イルト、セイ殿、ローラン殿、鋼殿。話してくれるな?」


 そうして、私は何があったのかを知ることとなった。
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