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第二章 少女期 瘴気編
第百九十一話 クリスタルロード攻略2(ミーシャ視点)
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私は確かに、イルト殿下に向けて、浄化魔法を放った。イルト殿下もイルト殿下で、私が浄化魔法を放つ時は素直に受け入れるようにしていたため、特にそれを避けるようなことはなかったのだが……その途中で、異変が起こった。
「えっ?」
私の放った浄化魔法が、ある一点の場所へ吸い寄せられて、吸収されたのだ。
「上に、何が……?」
浄化魔法が消えた先は、天井。ただし、天井は随分と距離があるらしく、このままでは暗くて良く見えない。
「ようは、光が必要ってことだよね」
私の魔法属性は光。普段は、そこから派生した浄化魔法を使っているものの、もちろん、光を生み出すくらいならできる。だから、私はそっとサッカーボールほどの大きさの光の玉を五つほど生み出し、天井へと浮上させてみる。
「ひっ」
そこで見たものに、私は小さく悲鳴をあげる。
「ミーシャ様? どう……あれは……」
私の一番近くで作業していたのはメリーさん。私の視線を辿って、上を見上げたことで、どうやらメリーさんもそれに気づいたらしい。
そこにあったのは、水晶で覆われた、竜のアギト。
「うわぁ、あれ、聖竜じゃない?」
「あ? ……何で、聖竜なんかがこんなところに居るんだ?」
「あれが、聖竜?」
「?? じーちゃんに似てる!!」
「「「「じーちゃん??」」」」
セイさん、ローラン先生、イルト殿下の後に発言した鋼君の言葉に、私達は全員で突っ込みを入れる。
「うん、じーちゃんっ。ユミリアと会う前に、ぼくに唯一優しくしてくれた、聖竜のじーちゃんっ。確か、建国の竜の末裔とかって言ってたよ?」
建国の竜と言われても、このリーリス王国の建国神話に、竜は出てこない。そして、鋼君の言葉の意味を理解できないのは私だけではないようで、他の面々も訝しげな表情だ。
「……リーリス王国ができる前に、ここにあったとされる国のこと、か?」
唯一、イルト様だけがそんな憶測を口にしたものの真相は分からない。そもそも、リーリス王国ができる前に存在したとされる国は、ただの伝説とされており、その国の存在を裏付けるものは残っていないとされている。
「鋼様、その国の名前などは知りませんでしょうか?」
「んー? えーっと、マル……マル、なんだったっけ?」
「マルディックゲイン、か?」
「そうっ、それっ!」
マルディックゲイン。それは、確かに伝説とされているリーリス王国建国以前にこの地に存在したとされる国の名前だった。
「なんかねー、そのマル何とかって国は、じーちゃんのご先祖様が気に入った男の人が治める国だったんだけど、ある日、一夜にして滅んだんだって!」
マルディックゲインの国土は、現在のリーリス王国よりも大きかったとされている。にもかかわらず、それが一夜で滅ぶなど、尋常ではない。むしろ、竜と人の感覚が違うせいで、そんな勘違いが生まれていると思った方が良いかもしれないくらいだ。
「あっ、そういえば、その国を滅ぼした人は、カチカチの石の空間に、厳重に封印されてるって、じーちゃん、話してた!」
そんな鋼君の言葉に、魔王が国を滅ぼしたこと、カチカチの石とクリスタル、二つに分かれた魔王の封印という符号が重なる。
「……ねぇ、まさかと思うけど、あの口の中が入り口とか言わない、よね?」
鋼君の言葉の意味をしっかりと考えていると、セイさんからギョッとするような疑念が提示され、思わずそのアギトに向けて光を動かしたところで……それは、竜の口の中に吸収されたのだった。
「えっ?」
私の放った浄化魔法が、ある一点の場所へ吸い寄せられて、吸収されたのだ。
「上に、何が……?」
浄化魔法が消えた先は、天井。ただし、天井は随分と距離があるらしく、このままでは暗くて良く見えない。
「ようは、光が必要ってことだよね」
私の魔法属性は光。普段は、そこから派生した浄化魔法を使っているものの、もちろん、光を生み出すくらいならできる。だから、私はそっとサッカーボールほどの大きさの光の玉を五つほど生み出し、天井へと浮上させてみる。
「ひっ」
そこで見たものに、私は小さく悲鳴をあげる。
「ミーシャ様? どう……あれは……」
私の一番近くで作業していたのはメリーさん。私の視線を辿って、上を見上げたことで、どうやらメリーさんもそれに気づいたらしい。
そこにあったのは、水晶で覆われた、竜のアギト。
「うわぁ、あれ、聖竜じゃない?」
「あ? ……何で、聖竜なんかがこんなところに居るんだ?」
「あれが、聖竜?」
「?? じーちゃんに似てる!!」
「「「「じーちゃん??」」」」
セイさん、ローラン先生、イルト殿下の後に発言した鋼君の言葉に、私達は全員で突っ込みを入れる。
「うん、じーちゃんっ。ユミリアと会う前に、ぼくに唯一優しくしてくれた、聖竜のじーちゃんっ。確か、建国の竜の末裔とかって言ってたよ?」
建国の竜と言われても、このリーリス王国の建国神話に、竜は出てこない。そして、鋼君の言葉の意味を理解できないのは私だけではないようで、他の面々も訝しげな表情だ。
「……リーリス王国ができる前に、ここにあったとされる国のこと、か?」
唯一、イルト様だけがそんな憶測を口にしたものの真相は分からない。そもそも、リーリス王国ができる前に存在したとされる国は、ただの伝説とされており、その国の存在を裏付けるものは残っていないとされている。
「鋼様、その国の名前などは知りませんでしょうか?」
「んー? えーっと、マル……マル、なんだったっけ?」
「マルディックゲイン、か?」
「そうっ、それっ!」
マルディックゲイン。それは、確かに伝説とされているリーリス王国建国以前にこの地に存在したとされる国の名前だった。
「なんかねー、そのマル何とかって国は、じーちゃんのご先祖様が気に入った男の人が治める国だったんだけど、ある日、一夜にして滅んだんだって!」
マルディックゲインの国土は、現在のリーリス王国よりも大きかったとされている。にもかかわらず、それが一夜で滅ぶなど、尋常ではない。むしろ、竜と人の感覚が違うせいで、そんな勘違いが生まれていると思った方が良いかもしれないくらいだ。
「あっ、そういえば、その国を滅ぼした人は、カチカチの石の空間に、厳重に封印されてるって、じーちゃん、話してた!」
そんな鋼君の言葉に、魔王が国を滅ぼしたこと、カチカチの石とクリスタル、二つに分かれた魔王の封印という符号が重なる。
「……ねぇ、まさかと思うけど、あの口の中が入り口とか言わない、よね?」
鋼君の言葉の意味をしっかりと考えていると、セイさんからギョッとするような疑念が提示され、思わずそのアギトに向けて光を動かしたところで……それは、竜の口の中に吸収されたのだった。
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