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第二章 少女期 瘴気編
第二百三十五話 薬(イルト視点)
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浄化の能力には、実は質というものが存在する。現在、浄化を扱えるのはユミリアとミーシャ嬢のみだが、ユミリアの浄化より、ミーシャ嬢の浄化の方が質が良い。だから、ユミリアだけで浄化が行えない場合、ミーシャ嬢の力が必要不可欠だった。今回だって、ユミリアの自己防衛の本能なのか、ユミリア自身、自分へ向けて浄化をずっと発動している。そして、ミーシャ嬢も時間が許す限り、体力や魔力がもつ限り、浄化をかけ続けてくれているが、それでも、この瘴気は祓えない。
「姉上……」
今は、ユミリアの弟であるギリアがユミリアの側に居る。
何者がユミリアを攻撃したのか分からない以上、万全の警備態勢を敷かなければならないということで、セイ、ローラン、コウ、ミルラス、魔王達は、それぞれ、ユミリアを守るために結界を張ったり周囲を警戒したりしている。兄さん達やユミリアの家族は、犯人探しやユミリアの回復手段を探すべく奔走している。だから、本当に何もできていないのは、僕だけだった。
「……義兄上。あの……姉上が持っていた、赤い液体が入った小瓶を知りませんか?」
ユミリアが倒れてから五日。その間、度々僕に何か聞きたそうにしていたギリアが、今日、初めて、僕に質問をしてきた。
(赤い液体入りの小瓶……それなら)
何の薬かは分からないものの、ユミリアは色々とおかしな薬を作り出しては、自分で把握できるようにラベルを貼って、保管していた。もちろん、そのほとんどはユミリアのストレージの中なのだが、いくつかはユミリア自身の部屋に置いてある。
「これ?」
「っ、はいっ、それです!」
『年』と書かれたラベルが貼ってあるそれを、ユミリアの机の引き出しの仕掛けを解いて取り出せば、ギリアはユミリアが側で眠っているというのに、大きな声をあげる。
(いや、まぁ、これで起きてくれれば良いんだけど……)
ギリアの声にも全く反応せずに眠り続けるユミリア。僕も、しばらく喉を休めたら、また、ユミリアへの呼び掛けを続けるつもりでいるのだが、こうも反応がないと、心臓が締め付けられるように痛い。
「これ、どうするの?」
「……飲みます」
「……この引き出しに入ってたってことは、まだ未完成のはずなんだけど?」
「それでも、飲みます」
言外に、どんな副作用が出るか分からないと告げたのだが、ギリアは言うことを聞いてくれそうにない。
「これ、本来の効果は?」
「姉上は、大人になれる薬だと言っておられました。まだ、十二歳になる前、早く浄化の力を使いたくて、開発を続けていた薬だそうです」
その薬ができた経緯を聞いて、なるほどと思ったものの、なぜ、それをギリアが飲もうと思っているのかが分からない。
「姉上が言うには、僕には、何らかの形で、聖属性の魔力があるのだとのことでした。この前、僕だけが姉上の側に居ても瘴気の影響を受けなかったのは、それが理由なのだと」
「っ、じゃあ、その薬で十二才を越えれば……っ」
「確証は、ありません。ですが、姉上のために、僕だって力を尽くしたいんですっ」
ギリアが何をしようとしているのかは、しっかりと理解できた。その赤茶色の瞳は、真っ直ぐ、揺るぎなく、僕を見据えている。しかし……。
「それで、お前にもしものことがあれば、ユミリアが悲しむ」
心情としては、何としてでもユミリアを助けたい。しかし、それでギリアにもしものことがあれば、ユミリアは酷く後悔するはずだ。
「それでも……僕は、姉上を助けたいんです」
そこで、そういえば、ギリアこそ、一番、ユミリアのために何もできないと嘆いていたのではないかということに思い至る。ユミリアのために、様々なことを調べ、奔走しているのは、全員が大人だ。まだ幼いギリアは、ただ一人取り残され、ユミリアにずっとついていることも許されていない。
その気持ちが、痛いほどに理解できてしまった僕は、一瞬、手の中にある薬から意識を逸らしてしまい、その隙をついて、ギリアに薬を奪われてしまう。
「っ、やめろっ!」
反応が遅れた僕は、素早く薬を飲み干すギリアから、薬を奪い返そうとするものの、一歩遅かった。空の小瓶が床に落ちて割れ……ギリアは、力なく倒れたのだった。
「姉上……」
今は、ユミリアの弟であるギリアがユミリアの側に居る。
何者がユミリアを攻撃したのか分からない以上、万全の警備態勢を敷かなければならないということで、セイ、ローラン、コウ、ミルラス、魔王達は、それぞれ、ユミリアを守るために結界を張ったり周囲を警戒したりしている。兄さん達やユミリアの家族は、犯人探しやユミリアの回復手段を探すべく奔走している。だから、本当に何もできていないのは、僕だけだった。
「……義兄上。あの……姉上が持っていた、赤い液体が入った小瓶を知りませんか?」
ユミリアが倒れてから五日。その間、度々僕に何か聞きたそうにしていたギリアが、今日、初めて、僕に質問をしてきた。
(赤い液体入りの小瓶……それなら)
何の薬かは分からないものの、ユミリアは色々とおかしな薬を作り出しては、自分で把握できるようにラベルを貼って、保管していた。もちろん、そのほとんどはユミリアのストレージの中なのだが、いくつかはユミリア自身の部屋に置いてある。
「これ?」
「っ、はいっ、それです!」
『年』と書かれたラベルが貼ってあるそれを、ユミリアの机の引き出しの仕掛けを解いて取り出せば、ギリアはユミリアが側で眠っているというのに、大きな声をあげる。
(いや、まぁ、これで起きてくれれば良いんだけど……)
ギリアの声にも全く反応せずに眠り続けるユミリア。僕も、しばらく喉を休めたら、また、ユミリアへの呼び掛けを続けるつもりでいるのだが、こうも反応がないと、心臓が締め付けられるように痛い。
「これ、どうするの?」
「……飲みます」
「……この引き出しに入ってたってことは、まだ未完成のはずなんだけど?」
「それでも、飲みます」
言外に、どんな副作用が出るか分からないと告げたのだが、ギリアは言うことを聞いてくれそうにない。
「これ、本来の効果は?」
「姉上は、大人になれる薬だと言っておられました。まだ、十二歳になる前、早く浄化の力を使いたくて、開発を続けていた薬だそうです」
その薬ができた経緯を聞いて、なるほどと思ったものの、なぜ、それをギリアが飲もうと思っているのかが分からない。
「姉上が言うには、僕には、何らかの形で、聖属性の魔力があるのだとのことでした。この前、僕だけが姉上の側に居ても瘴気の影響を受けなかったのは、それが理由なのだと」
「っ、じゃあ、その薬で十二才を越えれば……っ」
「確証は、ありません。ですが、姉上のために、僕だって力を尽くしたいんですっ」
ギリアが何をしようとしているのかは、しっかりと理解できた。その赤茶色の瞳は、真っ直ぐ、揺るぎなく、僕を見据えている。しかし……。
「それで、お前にもしものことがあれば、ユミリアが悲しむ」
心情としては、何としてでもユミリアを助けたい。しかし、それでギリアにもしものことがあれば、ユミリアは酷く後悔するはずだ。
「それでも……僕は、姉上を助けたいんです」
そこで、そういえば、ギリアこそ、一番、ユミリアのために何もできないと嘆いていたのではないかということに思い至る。ユミリアのために、様々なことを調べ、奔走しているのは、全員が大人だ。まだ幼いギリアは、ただ一人取り残され、ユミリアにずっとついていることも許されていない。
その気持ちが、痛いほどに理解できてしまった僕は、一瞬、手の中にある薬から意識を逸らしてしまい、その隙をついて、ギリアに薬を奪われてしまう。
「っ、やめろっ!」
反応が遅れた僕は、素早く薬を飲み干すギリアから、薬を奪い返そうとするものの、一歩遅かった。空の小瓶が床に落ちて割れ……ギリアは、力なく倒れたのだった。
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