悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百四十六話 ままならない日々

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「うーん、これもダメ、かぁ……」


 私は今、ギリア君を治すために、薬の制作を行っている。ストレージがあるならば、もしかしたら、『コツ生』の能力も使えるのかもしれないと思って試してみれば、案の定だったのだ。
 ついでに、ステータスを表示してみれば、こんな感じだった。


『ユミリア・リ・アルテナ(12歳・女)

攻撃力   500(+500000000)
防御力   450(+670000000)
魔法攻撃力 エラー
魔法防御力 エラー

スキル
生産時間短縮、生産効能調整、同時生産数アップ、全属性魔法、****

称号
料理の神、錬金術の神、鍛冶の神、設計の神、建築の神、裁縫の神、調薬の神、機械の神、細工の神、音楽の神、演出の神、生体科学の神、魔道の神、突っ込み魔神、ヤンデレ予備軍、ヤンデレの愛を受ける者、トラブルメーカー、魔を救いし者、神に目をつけられし者

装備
退魔シリーズ・壱のワンピース、退魔シリーズ・壱の腕輪、退魔シリーズ・壱の手袋、退魔シリーズ・壱のブーツ』


 ……突っ込みどころは、もう、満載過ぎて、どうすれば良いのか分からなかった。


(……見なかったことにしよう)


 記憶を失う前の自分が何をして、こんな異常な力を持ったのかとか、ヘンテコな称号を受け取ることになったのかとか、考えたくもない。
 そして、現在身につけているのは、退魔シリーズの装備で、胸元に青いリボンがつくゴシック系の黒いワンピースに、黒い手袋、金の腕輪、膝下までの編み上げブーツというものであり……ちょっとだけ、興味本意で着てみたのだが、案外ユミリアに似合っていて、何となくそのまま着ているのだ。
 そんな姿の私が行っているのは、完成させた薬の実験だ。実験台には、次々と効能の確認のために薬を飲ませたり打ったり、塗ったりしている。ただ、実験台に関しては、前に考えていた犯罪者というものではなかった。


「まさか、こんなものが作れるなんてね」


 ストレージの中にあった『実験キット』。それを取り出してみれば、大きな棺サイズの様々な管が繋がった箱と、仕様書らしきものが出てきた。箱の中にあったのは、人を象ったマネキンっぽい人形。錬金術、設計、機械、生体科学、魔道の力を使って作り上げた、最高の実験台人形。効果を与えたい人間の髪や爪などを取り込ませれば、その人物の現在の健康状態の人形となり、それを直接実験台にすれば、薬の効果がどのように現れるのかが分かる優れものだ。新たに与えられた薬や魔法によって、その人物が起こす体の異常を、この実験台は言葉にして伝えてくれるのだ。


「ゼンシンノイタミ、ケイレン、ガンメンソウハク、ナイゾウヨウカイ。セイチョウヤク、ウチケシ。ミカンセイヤク、ノウドテイカ。サンフンゴ、ショックシ、シマス」


 そんな片言を聞いて、私はため息を吐く。どうにも、調薬のみでは、危険物が出来上がる率が高い気がするのだ。


「お姉様、進捗の方はどうですか?」

「今、これまでで一番最悪な副作用を確認したところ」

「……まだまだ、遠いみたいですね」

「うん」


 知識を集めながらの実験は、そこそこ難航していた。しかし、それでも諦めるという選択肢はない。とにかく研究して、薬を作り上げたいのだから。


「ちょっと記録したら、これに錬金術を試してみるよ」

「いえ、記録が終わったら、お昼を食べましょうっ」


 そう言いながら、右手でトントンと自分の左手首を叩いて、私が腕時計の時間を見るよう指示してきたため、確認してみると……なるほど、確かにもうお昼の時間だった。


「うん、分かった。食べてから、続きをするよ」


 この世界で目覚めてから三日。私は、未だに薬を完成させることも、帰るための手がかりも得られず、待機している状態だった。
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