悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百十五話 二つの女神

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 ビリビリと電気を流すスタンガンのような役割を果たす魔石を山の神に投げて発動させたセイは、潰れた蛙のような声を出した彼を絶対零度の視線で見つめ、全部を話すように告げる。


「うぅ、何なのよぉっ。ワタシ、山の神なのにぃ」


 えぐえぐと泣く山の神、エイリーン。ただし、洗浄されたその顔は、驚くほど美しさを感じさせる男の顔だった。厳つさは確かにあるものの、それは彫刻のような美しさを持つものであり、キリリとした目に、厚ぼったい唇、太く逞しい首筋……正直、首から上はまともどころか、世の女性が放っておかないだろうと言える容貌だ。ただし……。


「じゃあ、認識の違いに関して、色々と話を詰めよう」


 この場で、それを賛美する者は一人として存在しない。セイは無関心。私は、イルト様以外眼中にない。竜神様は、恐らくその姿を知っていた。と、いうわけで、何一つコメントがないまま、話は進む。


「容姿は、どのようなものでしたか? 私達が知るのは、金の髪をひっつめて、伊達眼鏡をかけた、スタイル抜群の女神なのですが……」

「私が知っているのは、金髪碧眼で、胸がメロンで引きちぎりたいような女神……眼鏡はかけてないし、髪もまとめてはいなかったけど、それだけじゃ判断がつかないかなぁ?」

「そう、ですか……かの女神は、好んで黒の小物を身につけておりましたが、そういったものはありませんでしたか?」

「……覚えている限りは、ない、かな……っ、そうだ! あれを使えばっ」


 同一人物なのか微妙だということで、どうやって確認しようかと思ったところで、かつて、カメラを作った際に、もう一つ作ろうと奮闘して、ようやく完成したものの存在を思い出す。


「念写機! これなら……っ」


 主に、イルト様を前に、カメラを構えられなかった時用に生み出した、その時の情景を思い浮かべれば、それを写し出すことができる機械。頭に被るヘルメット型の機械の右側に、映像を写すためのシャッターやら写真を印刷したものを出す出口やらがあるものを、私は躊躇いなく被って、女神を思い出し、シャッターを押す。それから、使い方を教えて、竜神様にも、山の神にも、いくらかの女神の写真を作ってもらう。その結果……。


「これ、は……」

「うぅん?」

「えーっと……」

「同一人物、かなぁ??」


 竜神様も、山の神も、私もセイも、それぞれを見比べて、首をかしげる。そこに写る女神は、確かに似ている。ただし、その纏う雰囲気が違い過ぎて、同一人物なのかの判断がつかなかった。


「キャリアウーマンと、ポヤポヤお嬢様……??」


 そんな感想を漏らした私は、多分、悪くはない。そのくらいに、この二種類の女神の姿は異なっていた。
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