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第一章 第一フロア
情報整理(二)
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性格の悪そうな文章にすっかりご立腹な琴音を宥め終えた僕は、ひとまず『水蔦』を持ち上げて眺めてみる。
「一応、『食糧編』ってなってるから、食べ物で間違いないんだよな」
「お兄ちゃん、何でそんなに冷静なのっ」
状況が状況なだけに、少しのことでも苛立つのであろう琴音の様子に、僕は苦笑しながら頬を掻く。
「うん、まぁ、怒っても仕方ないし」
「お兄ちゃんはもうちょっと怒るべきだよっ」
「でも、それで何か不利な出来事が襲いかかるかもしれないし……ここは冷静な方が良いんじゃないか?」
「それは……」
僕の言葉に、現状を思い出したのか、琴音は不満をありありと顔に浮かべたものの、一応は大人しくなる。ちなみに、自分が冷静じゃなかった出来事はとりあえず棚に上げておく。
「それで、この……『みずづた』とでも読むのか? とにかく、これを食べてみようと思うんだけど、琴音はどうする?」
「……お兄ちゃん、本気? そんな得体の知れないものを食べるの?」
「うん、だって、琴音の話じゃ食料はなかったんだろ? だったら、もしかしたらモンスターを倒さなきゃ食料が得られないのかもしれないじゃないか」
そう言えば、琴音はお腹を押さえて切なそうな表情をする。無理もない。琴音は、昨日から何も食べていないはずなのだから。
「……お兄ちゃんが食べて、大丈夫そうなら食べる」
そう、毒味役を押しつけてきた琴音は、そう言えば、僕が食べることはないと思っているのだろう。心配そうに、チラチラと視線を向けてくる。
「分かった。なら、食べてみる」
「えっ!?」
予想通り、僕が本当に食べるとは思っていなかったというような反応を返した琴音は、僕の決意を聞いて慌て出す。
「待って、待って! ほらっ、もしかしたら、もっとまともな食料も探せばあるかもしれないよっ。しかも、『青臭い』とか『折り紙つきの不味さ』って書いてあるしっ」
「うん、そうなると、どのくらい不味いのか気になるよな」
「うん、まぁそれはそうかも……って、違うっ! 私はお兄ちゃんを心配してるのっ」
「大丈夫だって。琴音の料理を食べてお腹を壊したことがないんだから、今回もきっと何ともないって」
「ちょっと、お兄ちゃん、それ、どういうことっ!」
目を吊り上げて怒る琴音に笑いかけながら、僕は一思いに『水蔦』を噛む。
「あっ! お、お兄ちゃん?」
「……」
そして、一度噛んだ瞬間、僕はあまりにも不味いそれに固まる。
「お兄ちゃん? お兄ちゃんっ! ね、ねぇ、返事してよっ!」
あまりの不味さに放心した僕を揺らす琴音は、そろそろ泣きそうだ。
「……う」
「お、お兄ちゃん!? 大丈夫? ほらっ、その変なのは口から出しちゃおうっ! ねっ?」
言われるがままに口から出して、僕は、とにかく不味かったその味を紛らわせるべく頭を振る。
「……った」
「えっ? なんて言ったの? お兄ちゃん?」
「……青汁の濃縮版だった」
そう言えば、琴音は『水蔦』を恐怖の眼差しで見つめる。琴音は、飲みやすくしたタイプの青汁でも嫌いなのだ。それ以上に不味い『水蔦』は、恐ろしいものでしかないだろう。
「滅茶苦茶不味かった。一瞬、お花畑が見えるくらいに」
「私、絶対、かじらない」
「うん、その方が良さそうだな」
本当は、今すぐにでも口を濯ぎたいところだが、水もない状況ではどうにもならない。
「もし、本当に青汁の濃縮版なら、『栄養満点』っていうのは間違いなさそうだけど……」
「それでも無理っ」
「そうだな」
僕も、またこれをかじってみろと言われてかじる勇気はない。これをかじるのは、本当に食料がなかった時の最終手段にしよう。
「体がどこか痛いとか、気分が悪いとかはない?」
「ん? 大丈夫みたいだな。心配かけてごめん」
「し、心配なんてしてないよっ! ……ちょっと不安だっただけだから」
素直じゃない琴音はそのままそっぽを向いてしまう。しかし、その時だった。『キュルルルルゥゥ』という可愛らしい音が琴音のお腹から響いてきたのは。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
不味いもの=青汁?と思って書いてみました。
でも、お花畑が見えるほどの不味さっていったい…………。
絶対経験したくないですねっ。
それでは、また!
「一応、『食糧編』ってなってるから、食べ物で間違いないんだよな」
「お兄ちゃん、何でそんなに冷静なのっ」
状況が状況なだけに、少しのことでも苛立つのであろう琴音の様子に、僕は苦笑しながら頬を掻く。
「うん、まぁ、怒っても仕方ないし」
「お兄ちゃんはもうちょっと怒るべきだよっ」
「でも、それで何か不利な出来事が襲いかかるかもしれないし……ここは冷静な方が良いんじゃないか?」
「それは……」
僕の言葉に、現状を思い出したのか、琴音は不満をありありと顔に浮かべたものの、一応は大人しくなる。ちなみに、自分が冷静じゃなかった出来事はとりあえず棚に上げておく。
「それで、この……『みずづた』とでも読むのか? とにかく、これを食べてみようと思うんだけど、琴音はどうする?」
「……お兄ちゃん、本気? そんな得体の知れないものを食べるの?」
「うん、だって、琴音の話じゃ食料はなかったんだろ? だったら、もしかしたらモンスターを倒さなきゃ食料が得られないのかもしれないじゃないか」
そう言えば、琴音はお腹を押さえて切なそうな表情をする。無理もない。琴音は、昨日から何も食べていないはずなのだから。
「……お兄ちゃんが食べて、大丈夫そうなら食べる」
そう、毒味役を押しつけてきた琴音は、そう言えば、僕が食べることはないと思っているのだろう。心配そうに、チラチラと視線を向けてくる。
「分かった。なら、食べてみる」
「えっ!?」
予想通り、僕が本当に食べるとは思っていなかったというような反応を返した琴音は、僕の決意を聞いて慌て出す。
「待って、待って! ほらっ、もしかしたら、もっとまともな食料も探せばあるかもしれないよっ。しかも、『青臭い』とか『折り紙つきの不味さ』って書いてあるしっ」
「うん、そうなると、どのくらい不味いのか気になるよな」
「うん、まぁそれはそうかも……って、違うっ! 私はお兄ちゃんを心配してるのっ」
「大丈夫だって。琴音の料理を食べてお腹を壊したことがないんだから、今回もきっと何ともないって」
「ちょっと、お兄ちゃん、それ、どういうことっ!」
目を吊り上げて怒る琴音に笑いかけながら、僕は一思いに『水蔦』を噛む。
「あっ! お、お兄ちゃん?」
「……」
そして、一度噛んだ瞬間、僕はあまりにも不味いそれに固まる。
「お兄ちゃん? お兄ちゃんっ! ね、ねぇ、返事してよっ!」
あまりの不味さに放心した僕を揺らす琴音は、そろそろ泣きそうだ。
「……う」
「お、お兄ちゃん!? 大丈夫? ほらっ、その変なのは口から出しちゃおうっ! ねっ?」
言われるがままに口から出して、僕は、とにかく不味かったその味を紛らわせるべく頭を振る。
「……った」
「えっ? なんて言ったの? お兄ちゃん?」
「……青汁の濃縮版だった」
そう言えば、琴音は『水蔦』を恐怖の眼差しで見つめる。琴音は、飲みやすくしたタイプの青汁でも嫌いなのだ。それ以上に不味い『水蔦』は、恐ろしいものでしかないだろう。
「滅茶苦茶不味かった。一瞬、お花畑が見えるくらいに」
「私、絶対、かじらない」
「うん、その方が良さそうだな」
本当は、今すぐにでも口を濯ぎたいところだが、水もない状況ではどうにもならない。
「もし、本当に青汁の濃縮版なら、『栄養満点』っていうのは間違いなさそうだけど……」
「それでも無理っ」
「そうだな」
僕も、またこれをかじってみろと言われてかじる勇気はない。これをかじるのは、本当に食料がなかった時の最終手段にしよう。
「体がどこか痛いとか、気分が悪いとかはない?」
「ん? 大丈夫みたいだな。心配かけてごめん」
「し、心配なんてしてないよっ! ……ちょっと不安だっただけだから」
素直じゃない琴音はそのままそっぽを向いてしまう。しかし、その時だった。『キュルルルルゥゥ』という可愛らしい音が琴音のお腹から響いてきたのは。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
不味いもの=青汁?と思って書いてみました。
でも、お花畑が見えるほどの不味さっていったい…………。
絶対経験したくないですねっ。
それでは、また!
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