俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌

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第一章 囚われの身

第二話 処遇

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 魔法の鎖が外れたにもかかわらず、俺は絶望が深すぎて立ち上がれずに居た。すると、誰も居ないはずのその部屋で、俺以外の声が聞こえてきた。


「ふむ、さすがにこれは予想外だったな」

「そうだね。さて、この女はどうしようか?」


 そこに居たのは、眼が覚めるほどの美丈夫。翡翠の長髪に、サファイアの瞳、黒い角を持つ男性魔族。先程倒したはずの魔王と、灰色の髪とトパーズの瞳、真っ赤な角を持つどこか妖艶な男性魔族。
 明らかに好意的ではない視線に、俺はさすがに飛び起きる。


(ど、どうする? 俺、攻撃手段なんてないぞ?)


 聖女として召喚された俺には、攻撃手段など欠片もない。癒しの魔法は数多く覚えているものの、それだけだ。俺が一人の状態で襲われれば、対抗手段など、全くない。


(逃げる? いや、でも、これは逃がしてくれそうな感じじゃないよな?)


 ここで、あのエルヴィス達の言う通り、殺されてしまうのだろうかと考えれば、震えることしかできない。
 プルプルと震えて立ち尽くしていると、不意に、玉座の近くにあった扉がパンッと大きく開け放たれる。


「ジーク、ハミル」


 低い声で告げる少女の声に、恐る恐る視線を向けてみれば、そこには……。


(日本、人?)


 日本人の中でも、身長が低めの女の子にしか見えない、黒目黒髪の人間の少女が魔王達をにらんでいた。ちなみに、背後には護衛らしき男性魔族が一人居る。


「ユ、ユーカ?」

「えっ? あれ? なんでユーカが!?」

「……メアリーが教えてくれました。ジーク達が、何か企んでいる、と」

「……メアリー、か」

「ジークのところの専属侍女は、どうなってるんだいっ!?」


 ジトッとした目で彼らを睨むユーカさん(?)に、魔王達はタジタジだ。意識は完全に俺から逸れていて、もしかしたら逃げるチャンスかもしれなかった。


(いや、けど、な……)


 しかし、そんな中でも俺の事を警戒しているらしい者が一人居る。魔王に良く似た翡翠の髪に、ルビーの瞳、翡翠の角を持つ、ユーカさんの護衛らしき強面の男性魔族。その彼が、穴が開くのではないかと思えるくらいに、じーっと俺を観察し続けているのだ。


(や、やっぱ無理、逃げられないっ。ど、どうしよう?)


 瞬きもせずにこちらを見る魔族に、俺は恐怖を覚える。


「それで? 勇者に倒されたフリをして様子を見てみようっていう企みはどうなったんですか?」

「全部バレてる、だと?」

「ジーク、やっぱり、君のところの専属侍女達、怖いよ」


 冷や汗をかきながら立ち尽くしていると、何やら衝撃的な一言がもたらされる。


(倒された、フリ?)


 確かに、エルヴィス達の戦闘能力は、お世辞にも高いとは言えない。それは、素人の俺ですら分かったことだ。だから、そんな奴に倒される魔王という存在は、よくよく考えてみればおかしかったのだ。


(いや、でも、様子を見て何がしたかったんだ?)


 そう思いながら、どうにかこちらをじっと観察する護衛魔族から視線を逸らすと、ユーカさん達の方を見てみる。


「いや、それがだな……一応成功はしたんだが……一人、置き去りにして他の連中は転移で帰ってしまって……」

「ちなみに、帰った奴らの方がターゲットだったんだよ」

「そう、ですか……じゃあ、とりあえず、二人はモフモフの刑で許してあげます」

「モっ!?」

「ユ、ユーカ? その、考え直しては「あげません」そ、そんなぁ」


 話は分からないが、何やらあの魔王達は、ユーカさんに頭が上がらないらしい。


(えっ? 何だろう? 母親……って感じじゃないよな? それに、モフモフの刑……?)


 逃げることも忘れて、疑問だらけになっていた俺は、影が射し込んだことで、ようやくそいつの存在に気づく。


「えっ?」

(護衛魔族!?)


 先程までユーカさんの側に居たはずの護衛魔族が、なぜか、俺の側でじっとルビーの瞳を向けていた。


「名は?」

「っ!?」


 問われているのは、俺だ。しかし、そのあまりの威圧感に、俺は言葉を失う。


「……名は、何という?」


 しばらくして、もう一度問いかけてきた彼に、俺は、答えたせいで呪いをかけられるようなことなんてないことを願いながら、ゆっくり口を開く。


「カイト・リクドウ……」

「カイト……カイト……そうか、カイト……」


 何度も何度も、俺の名を繰り返すそいつに、もう、俺は逃げたくてたまらない。


「ライナード? どうした?」


 と、そこで、ジークと呼ばれていた魔王が護衛魔族に声をかける。


「この娘、もらいうけても?」

「それは、構わないが……?」

「寛大なお心、感謝する」


 そうして、何がなんだか分からないままに、俺はこのライナードと呼ばれる護衛魔族に預けられることとなったのだった。
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