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プロローグ
第一話 置き去り
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俺は、頑張った。頑張って頑張って、我慢し続けた。それなのに、この仕打ちは何だろう?
「貴様には、ここに残ってもらう。精々、その貧相な体を使って生き残るんだな」
そう言って俺を見下すのは、金髪碧眼の顔面偏差値が高いものの、性格が最悪な男、エルヴィス・レイリン。何でも、彼はレイリン王国の第一王子らしい。
「ごめんなさいね? 私は、エルヴィス様と幸せになりたいの」
その瞳に蔑みを浮かべながら嗤う栗色の髪と瞳を持つ彼女は、可愛らしい顔立ちとは裏腹に、かなり陰湿だ。今回の旅の道中も、何度も何度も、殺されかけた。彼女の名前は、ホーリー・ヴィッツ。ヴィッツ男爵家の令嬢で、エルヴィスと一緒になれると思い込んでいる頭のおかしい女だ。
「……」
無言で俺を見つめてくる男は、リオン・ミード。何でも、レイリン王国の宰相の息子らしい。銀の長髪に緑の瞳を持つ彼の目は、何だか苦手だ。
「まっ、仕方ないだろ? お前は存在しなかったことになってんだからよ」
あっけらかんとそんなとんでもない言葉を口にするのは、ロッシュ・ケイドール。レイリン王国の兵団長の息子らしい。赤い短髪に赤い瞳を持つ彼は、粗暴ものという印象しかない。
「僕達のホーリーのためにも、君には消えてもらうよ」
ニコリと微笑む可愛らしい顔立ちの悪魔のような男、ダルトは、レイリン王国の公爵家の息子らしい。黄色の髪にピンクの瞳を持つ彼は、多分、ヤンデレというやつだ。ホーリーに関わる度に、視線が痛くて、怖くて怖くて仕方がなかった。
「どう、して……」
地面に這いつくばってそう言う俺は、六道海斗。こことは違う世界の、日本という国からこの目の前の面々に呼び出された聖女だ。
いや、本当は、日本では黒目黒髪のどこにでもいそうな男子高校生だったのだが、この世界に召喚された瞬間、なぜかふんわりとした水色の髪に、金と赤のオッドアイを持つ美少女へと姿が変わっていたのだ。
召喚された直後、それを知った俺は、演劇部で培った演技力で女を演じ、今の今まで、魔王討伐のために俺の力が必要だという彼らと旅してきた。それもこれも、全ては元の世界に帰るために。しかし、ようやく魔王を討伐したと思ったこの瞬間、俺は一人、転移用の魔法具の範囲から離れた場所に魔法の鎖で縫い止められて、彼らが転移する瞬間を眺めることしかできない状態になってしまっていた。
「はっ、良い機会だから教えといてやろう。貴様を元の世界に帰す魔法なんて存在しない。それに、聖女の召喚は秘密裏に行ったことだからな。他に知られるわけにはいかないんだ。だから、貴様にはここで消えてもらう」
「そ、そんなっ!」
帰れると、思っていた。いや、帰れると、信じたかった。例え、彼らがどんなに最悪な連中でも、何度も夜這いをかけられて恐怖したとしても、彼らが日本への帰還を約束してくれたからこそ、俺はずっと、彼らに従ってきたのだ。
「それじゃあ、精々凄惨に殺されると良い」
そうエルヴィスが言った直後、魔法具が発動したらしく、彼らの姿は消えてしまう。
「……ぁ……あぁぁぁぁぁぁあっ!!!」
魔王と戦った魔王城の謁見の間。そこで、俺はどうにもならない現実を前に、慟哭するのだった。
「貴様には、ここに残ってもらう。精々、その貧相な体を使って生き残るんだな」
そう言って俺を見下すのは、金髪碧眼の顔面偏差値が高いものの、性格が最悪な男、エルヴィス・レイリン。何でも、彼はレイリン王国の第一王子らしい。
「ごめんなさいね? 私は、エルヴィス様と幸せになりたいの」
その瞳に蔑みを浮かべながら嗤う栗色の髪と瞳を持つ彼女は、可愛らしい顔立ちとは裏腹に、かなり陰湿だ。今回の旅の道中も、何度も何度も、殺されかけた。彼女の名前は、ホーリー・ヴィッツ。ヴィッツ男爵家の令嬢で、エルヴィスと一緒になれると思い込んでいる頭のおかしい女だ。
「……」
無言で俺を見つめてくる男は、リオン・ミード。何でも、レイリン王国の宰相の息子らしい。銀の長髪に緑の瞳を持つ彼の目は、何だか苦手だ。
「まっ、仕方ないだろ? お前は存在しなかったことになってんだからよ」
あっけらかんとそんなとんでもない言葉を口にするのは、ロッシュ・ケイドール。レイリン王国の兵団長の息子らしい。赤い短髪に赤い瞳を持つ彼は、粗暴ものという印象しかない。
「僕達のホーリーのためにも、君には消えてもらうよ」
ニコリと微笑む可愛らしい顔立ちの悪魔のような男、ダルトは、レイリン王国の公爵家の息子らしい。黄色の髪にピンクの瞳を持つ彼は、多分、ヤンデレというやつだ。ホーリーに関わる度に、視線が痛くて、怖くて怖くて仕方がなかった。
「どう、して……」
地面に這いつくばってそう言う俺は、六道海斗。こことは違う世界の、日本という国からこの目の前の面々に呼び出された聖女だ。
いや、本当は、日本では黒目黒髪のどこにでもいそうな男子高校生だったのだが、この世界に召喚された瞬間、なぜかふんわりとした水色の髪に、金と赤のオッドアイを持つ美少女へと姿が変わっていたのだ。
召喚された直後、それを知った俺は、演劇部で培った演技力で女を演じ、今の今まで、魔王討伐のために俺の力が必要だという彼らと旅してきた。それもこれも、全ては元の世界に帰るために。しかし、ようやく魔王を討伐したと思ったこの瞬間、俺は一人、転移用の魔法具の範囲から離れた場所に魔法の鎖で縫い止められて、彼らが転移する瞬間を眺めることしかできない状態になってしまっていた。
「はっ、良い機会だから教えといてやろう。貴様を元の世界に帰す魔法なんて存在しない。それに、聖女の召喚は秘密裏に行ったことだからな。他に知られるわけにはいかないんだ。だから、貴様にはここで消えてもらう」
「そ、そんなっ!」
帰れると、思っていた。いや、帰れると、信じたかった。例え、彼らがどんなに最悪な連中でも、何度も夜這いをかけられて恐怖したとしても、彼らが日本への帰還を約束してくれたからこそ、俺はずっと、彼らに従ってきたのだ。
「それじゃあ、精々凄惨に殺されると良い」
そうエルヴィスが言った直後、魔法具が発動したらしく、彼らの姿は消えてしまう。
「……ぁ……あぁぁぁぁぁぁあっ!!!」
魔王と戦った魔王城の謁見の間。そこで、俺はどうにもならない現実を前に、慟哭するのだった。
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