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第五章 お姉様
第六十二話 平穏な日々
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ライナードが俺に、元の世界に帰す手段を探していたことを打ち明けて以来、そして、ライナードに俺の本来の性別を打ち明けて以来、俺達の仲は良好だった。ただ一つ、問題があったとすれば……。
「性転換の秘術って、そんなに大変なものだったんだな……」
ライナードに教えてもらった、性転換の秘術に関する情報が予想外だったことくらいだろうか。
性転換の秘術は、変化のような一時的に別の姿を仮に取るようなものとは異なり、根本から体を作り替える魔法だ。そのため、術の行使には細心の注意が必要だし、術が成功したとしても、その後は全身の激痛と一週間くらいは戦わなくてはいけないらしい。そして、魔族であれば、よほど体が弱いとかでなければ耐えられるであろう激痛らしいが、人間だと耐えられずに死ぬとのこと。
(そもそもできるわけはないけど、試さなくて良かった……)
と、いうわけで、俺が元の性別に戻る手段はなくなった。説明を聞くに従い、青ざめていった俺に、ライナードが酷く心配したのは、もう仕方のないことだろう。
「カイトは、元の性別に戻りたかったのか?」
「うん、まぁ……でも、今の話を聞いて、きっぱり諦めたから」
「む、すまない。さすがに後遺症なく性転換を行う術はない」
しゅんっと申し訳なさそうにするライナードは、何だか可愛い。
「いや、良いよ。俺も、戻れるかなぁ? くらいの気持ちだったし。ありがとうな」
ほのぼのとした気持ちになりながら微笑めば、ライナードの表情がパァッと明るくなる。
(うん、なんか、大型犬を飼ってる気分)
ライナードに尻尾があれば、きっとそれはブンブンと勢い良く振られていただろう。
一緒にお茶を飲みながら、お菓子を食べながらの一時は、とても安心ができて、ほっこりとする。一日の中では一番好きな時間だ。そんな時間を今日もゆっくりと過ごし、俺は今度こそ、何か仕事がないかとライナードに尋ねるつもりだったのだが……。
「ライナード坊っちゃん。少々よろしいですか?」
そんな幸せな一時は、障子の外からかけられた、遠慮がちなドム爺の声で終わりを告げる。
「む」
少しだけ、不満そうな『む』に、ドム爺は『申し訳ありません』と謝罪しつつも、それでも急用なのだと告げる。
「……分かった。カイト、後で、また来る」
「あぁ、いってらっしゃい」
しょんぼりとした様子で、幻想の耳と尻尾を垂らして言うライナードに、俺は苦笑しながらそう言う。すると、ライナードはみるみるうちに、顔を真っ赤にする。
「っ、い、行ってくる」
どこかギクシャクとした動きで退出したライナードを見て、俺はしばらく首をかしげる。そして……。
(そういえば、あれって、新婚夫婦みたいな会話……っ!?)
ライナードがなぜ、顔を赤くしたのかに思い至った俺は、ライナードが居なくなった部屋で、一人、顔を赤くして、まもなく入ってきたノーラに怪訝な表情をされることとなる。
(あー、もうっ、何で、ライナードはあんなに可愛いんだか)
ライナードの考えが分からないわけではない俺は、そのライナードの乙女思考に、ただひたすら『可愛い』としか思えない。きっと、ライナードが大型犬ならば、俺は溺愛していたことだろう。
(別に、可愛いものが好きってわけでもなかったはずなんだけどな……)
何かの花を象った、ライナードが作ったというピンクの練り切りの最後の一口を口に運んで、幸せな気持ちになると、緑茶をすすって席を立つ。
「どちらへ向かわれますか?」
「うーん、今は、あてもなくブラブラしたいかな」
「畏まりました。案内は必要でしょうか?」
「入っちゃいけないところだけ教えてもらえるかな?」
「畏まりました」
このお屋敷に来てから、かなりの期間が過ぎたものの、俺は未だに、この屋敷の中をあまり把握していなかった。
(もしかしたら、俺にできることが見つかるかもだし、探検も楽しそうだもんな)
外は寒いから出る気にはなれないものの、屋敷の中であればきっと楽しい。そう考えて、俺はノーラを伴って、屋敷の探索に繰り出すのだった。
「性転換の秘術って、そんなに大変なものだったんだな……」
ライナードに教えてもらった、性転換の秘術に関する情報が予想外だったことくらいだろうか。
性転換の秘術は、変化のような一時的に別の姿を仮に取るようなものとは異なり、根本から体を作り替える魔法だ。そのため、術の行使には細心の注意が必要だし、術が成功したとしても、その後は全身の激痛と一週間くらいは戦わなくてはいけないらしい。そして、魔族であれば、よほど体が弱いとかでなければ耐えられるであろう激痛らしいが、人間だと耐えられずに死ぬとのこと。
(そもそもできるわけはないけど、試さなくて良かった……)
と、いうわけで、俺が元の性別に戻る手段はなくなった。説明を聞くに従い、青ざめていった俺に、ライナードが酷く心配したのは、もう仕方のないことだろう。
「カイトは、元の性別に戻りたかったのか?」
「うん、まぁ……でも、今の話を聞いて、きっぱり諦めたから」
「む、すまない。さすがに後遺症なく性転換を行う術はない」
しゅんっと申し訳なさそうにするライナードは、何だか可愛い。
「いや、良いよ。俺も、戻れるかなぁ? くらいの気持ちだったし。ありがとうな」
ほのぼのとした気持ちになりながら微笑めば、ライナードの表情がパァッと明るくなる。
(うん、なんか、大型犬を飼ってる気分)
ライナードに尻尾があれば、きっとそれはブンブンと勢い良く振られていただろう。
一緒にお茶を飲みながら、お菓子を食べながらの一時は、とても安心ができて、ほっこりとする。一日の中では一番好きな時間だ。そんな時間を今日もゆっくりと過ごし、俺は今度こそ、何か仕事がないかとライナードに尋ねるつもりだったのだが……。
「ライナード坊っちゃん。少々よろしいですか?」
そんな幸せな一時は、障子の外からかけられた、遠慮がちなドム爺の声で終わりを告げる。
「む」
少しだけ、不満そうな『む』に、ドム爺は『申し訳ありません』と謝罪しつつも、それでも急用なのだと告げる。
「……分かった。カイト、後で、また来る」
「あぁ、いってらっしゃい」
しょんぼりとした様子で、幻想の耳と尻尾を垂らして言うライナードに、俺は苦笑しながらそう言う。すると、ライナードはみるみるうちに、顔を真っ赤にする。
「っ、い、行ってくる」
どこかギクシャクとした動きで退出したライナードを見て、俺はしばらく首をかしげる。そして……。
(そういえば、あれって、新婚夫婦みたいな会話……っ!?)
ライナードがなぜ、顔を赤くしたのかに思い至った俺は、ライナードが居なくなった部屋で、一人、顔を赤くして、まもなく入ってきたノーラに怪訝な表情をされることとなる。
(あー、もうっ、何で、ライナードはあんなに可愛いんだか)
ライナードの考えが分からないわけではない俺は、そのライナードの乙女思考に、ただひたすら『可愛い』としか思えない。きっと、ライナードが大型犬ならば、俺は溺愛していたことだろう。
(別に、可愛いものが好きってわけでもなかったはずなんだけどな……)
何かの花を象った、ライナードが作ったというピンクの練り切りの最後の一口を口に運んで、幸せな気持ちになると、緑茶をすすって席を立つ。
「どちらへ向かわれますか?」
「うーん、今は、あてもなくブラブラしたいかな」
「畏まりました。案内は必要でしょうか?」
「入っちゃいけないところだけ教えてもらえるかな?」
「畏まりました」
このお屋敷に来てから、かなりの期間が過ぎたものの、俺は未だに、この屋敷の中をあまり把握していなかった。
(もしかしたら、俺にできることが見つかるかもだし、探検も楽しそうだもんな)
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