俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌

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第五章 お姉様

第七十話 手紙

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「ライナード、大丈夫かなぁ?」


 とにかく大人しくしているように、とのことだったため、俺は、柄にもなく本を手にページをパラパラとめくる。場所は、ライナードの部屋だ。


「ライナード様であれば、どのような事態に陥っても、必ずカイトお嬢様の元へ帰ってこられますよ」


 いつの間にかそこに居たノーラに、独り言の返事をされて、俺はビクッとしながら顔を上げる。


「驚かせてしまったようで、申し訳ありません。こちらを、ライナード様より預かって参りました」


 そう言われて渡されたのは、何やら紋章が描かれた手紙。赤い封蝋がしてあるそれを見ると、ここが日本ではないことを強く意識させられる。


「こちらをどうぞ」


 普通に開封しようと思ったら破れそうだと思っていると、ノーラからペーパーナイフを渡される。


(そういえば、こういうのはペーパーナイフで開けるんだっけ?)


 慣れない手つきで手紙を開封した俺は、そっとライナードからの手紙を広げてみる。


『愛しいカイトへ。

仕事の間、俺はきっとカイトに会いにいけない。

そのため、手紙を送りたいと思う。

こんな風に個人的な手紙を書くのは初めてで、至らない点は多いと思うが、もし良ければ返事をくれるとありがたい。

窮屈な思いをさせてすまない。

すぐに解決して戻る。

ライナードより』


 そこにあったのは、何ともライナードらしい、言葉足らずで……しかし、懸命に考えて書いたのが良く分かる手紙だった。


「ふふっ」


 ライナードに拒絶されたのはショックだったが、こうして手紙を読めば、そのショックも和らぐ。


(きっと、何か理由があったんだよな)


 例えば、俺が思っている以上に、俺が動くことは危険を伴うとか。


(大人しく待っておこう)


 きっと、その方がライナードも安心して仕事ができるはずだ。


「カイトお嬢様、お返事は書かれますか?」

「えっ? うーん……一応、便箋とか持ってきてくれるか? 手紙を書くなんて経験、ほとんどないけど……頑張ってみる」


 手紙なんて、小学校の頃の授業中に何かを書いたような気がする、くらいの記憶しかない。そもそも、パソコンやスマホやらが普及している現代に、手紙を書く機会なんてほとんどない。あったとしても、手書きなんて珍しいだろう。

 ノーラが道具を取りに行っている間、俺は何を書こうか、とか、ライナードほど上手な字は書けないぞ、とか、そんなことを考えながら、気持ちを浮上させる。もう、ライナードに拒絶されたショックは、完全に抜けていた。


「お待たせいたしました。便箋各種をお持ちしました」

「うん、ありが……と……」


 持ってきてもらった便箋を前に、俺は自分が女の子なのだということを思い知る。

 ピンクや赤の比重が大きい、可愛らしい便箋の数々。そして、何に使うのか良く分からない香りのする袋が多数に、羽根ペンとインクが一式。


「カイトお嬢様、どの便箋をお使いになられますか?」

「う、うんんっ、そ、そうだな……えーっと……」

「これなどはいかがでしょう? 花柄が可愛らしいですよ?」

「ソ、ソウダナ」

「こちらは、小動物シリーズです。カイトお嬢様、ウサギはお好きですか?」

「……フツー、カナ?」


 その他にも、ゴージャスなレース柄の便箋やら、お菓子が可愛く描かれた便箋なども勧められて、俺はどうにかかわしていく。


(中身が男だって知ってるライナードに、これは、さすがに送れないっ!)


 無難な便箋を選べば、どことなくノーラが不満そうにしていたものの、そんなの知るものかと無視する。


(いや、まぁ、森のイメージで、可愛くないわけじゃないけど、これはきっと、許容範囲……であってほしい)


 仕事で頑張っているライナードをドン引きさせる便箋は選べないと、必死になって、俺はその便箋が良いのだと主張し、羽根ペンの使い方を教わりながら慎重に手紙を認める。


(うん、これでよしっ)


 何回か失敗して、便箋をダメにしてしまったものの、何とか文章を書くことに成功する。


「これを送りたいんだけど、どうすれば良いんだ?」

「送る方法はいくつかございますが、今回は確実に届けるために、最近開発された転移ポストを使いましょう」

「転移ポスト?」

「はい、何でも、魔王妃様が開発されたもののようです。転移魔法の魔法陣をこのくらいの箱の中に描いて、対を作ることで、手紙や小さなものを相互に送ることが可能になるものです。今回、ライナード様は転移ポストで手紙を送ってきましたので、対のポストを使えば確実に届けられます」


 そんな説明になるほどと思うと同時に、確か、魔王妃様も日本人なのだと思い出す。


(郵便制度は、あまり整ってないのかな?)


 そう思いながらも、俺は手紙をノーラに託すのだった。
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