71 / 121
第五章 お姉様
第七十話 手紙
しおりを挟む
「ライナード、大丈夫かなぁ?」
とにかく大人しくしているように、とのことだったため、俺は、柄にもなく本を手にページをパラパラとめくる。場所は、ライナードの部屋だ。
「ライナード様であれば、どのような事態に陥っても、必ずカイトお嬢様の元へ帰ってこられますよ」
いつの間にかそこに居たノーラに、独り言の返事をされて、俺はビクッとしながら顔を上げる。
「驚かせてしまったようで、申し訳ありません。こちらを、ライナード様より預かって参りました」
そう言われて渡されたのは、何やら紋章が描かれた手紙。赤い封蝋がしてあるそれを見ると、ここが日本ではないことを強く意識させられる。
「こちらをどうぞ」
普通に開封しようと思ったら破れそうだと思っていると、ノーラからペーパーナイフを渡される。
(そういえば、こういうのはペーパーナイフで開けるんだっけ?)
慣れない手つきで手紙を開封した俺は、そっとライナードからの手紙を広げてみる。
『愛しいカイトへ。
仕事の間、俺はきっとカイトに会いにいけない。
そのため、手紙を送りたいと思う。
こんな風に個人的な手紙を書くのは初めてで、至らない点は多いと思うが、もし良ければ返事をくれるとありがたい。
窮屈な思いをさせてすまない。
すぐに解決して戻る。
ライナードより』
そこにあったのは、何ともライナードらしい、言葉足らずで……しかし、懸命に考えて書いたのが良く分かる手紙だった。
「ふふっ」
ライナードに拒絶されたのはショックだったが、こうして手紙を読めば、そのショックも和らぐ。
(きっと、何か理由があったんだよな)
例えば、俺が思っている以上に、俺が動くことは危険を伴うとか。
(大人しく待っておこう)
きっと、その方がライナードも安心して仕事ができるはずだ。
「カイトお嬢様、お返事は書かれますか?」
「えっ? うーん……一応、便箋とか持ってきてくれるか? 手紙を書くなんて経験、ほとんどないけど……頑張ってみる」
手紙なんて、小学校の頃の授業中に何かを書いたような気がする、くらいの記憶しかない。そもそも、パソコンやスマホやらが普及している現代に、手紙を書く機会なんてほとんどない。あったとしても、手書きなんて珍しいだろう。
ノーラが道具を取りに行っている間、俺は何を書こうか、とか、ライナードほど上手な字は書けないぞ、とか、そんなことを考えながら、気持ちを浮上させる。もう、ライナードに拒絶されたショックは、完全に抜けていた。
「お待たせいたしました。便箋各種をお持ちしました」
「うん、ありが……と……」
持ってきてもらった便箋を前に、俺は自分が女の子なのだということを思い知る。
ピンクや赤の比重が大きい、可愛らしい便箋の数々。そして、何に使うのか良く分からない香りのする袋が多数に、羽根ペンとインクが一式。
「カイトお嬢様、どの便箋をお使いになられますか?」
「う、うんんっ、そ、そうだな……えーっと……」
「これなどはいかがでしょう? 花柄が可愛らしいですよ?」
「ソ、ソウダナ」
「こちらは、小動物シリーズです。カイトお嬢様、ウサギはお好きですか?」
「……フツー、カナ?」
その他にも、ゴージャスなレース柄の便箋やら、お菓子が可愛く描かれた便箋なども勧められて、俺はどうにかかわしていく。
(中身が男だって知ってるライナードに、これは、さすがに送れないっ!)
無難な便箋を選べば、どことなくノーラが不満そうにしていたものの、そんなの知るものかと無視する。
(いや、まぁ、森のイメージで、可愛くないわけじゃないけど、これはきっと、許容範囲……であってほしい)
仕事で頑張っているライナードをドン引きさせる便箋は選べないと、必死になって、俺はその便箋が良いのだと主張し、羽根ペンの使い方を教わりながら慎重に手紙を認める。
(うん、これでよしっ)
何回か失敗して、便箋をダメにしてしまったものの、何とか文章を書くことに成功する。
「これを送りたいんだけど、どうすれば良いんだ?」
「送る方法はいくつかございますが、今回は確実に届けるために、最近開発された転移ポストを使いましょう」
「転移ポスト?」
「はい、何でも、魔王妃様が開発されたもののようです。転移魔法の魔法陣をこのくらいの箱の中に描いて、対を作ることで、手紙や小さなものを相互に送ることが可能になるものです。今回、ライナード様は転移ポストで手紙を送ってきましたので、対のポストを使えば確実に届けられます」
そんな説明になるほどと思うと同時に、確か、魔王妃様も日本人なのだと思い出す。
(郵便制度は、あまり整ってないのかな?)
そう思いながらも、俺は手紙をノーラに託すのだった。
とにかく大人しくしているように、とのことだったため、俺は、柄にもなく本を手にページをパラパラとめくる。場所は、ライナードの部屋だ。
「ライナード様であれば、どのような事態に陥っても、必ずカイトお嬢様の元へ帰ってこられますよ」
いつの間にかそこに居たノーラに、独り言の返事をされて、俺はビクッとしながら顔を上げる。
「驚かせてしまったようで、申し訳ありません。こちらを、ライナード様より預かって参りました」
そう言われて渡されたのは、何やら紋章が描かれた手紙。赤い封蝋がしてあるそれを見ると、ここが日本ではないことを強く意識させられる。
「こちらをどうぞ」
普通に開封しようと思ったら破れそうだと思っていると、ノーラからペーパーナイフを渡される。
(そういえば、こういうのはペーパーナイフで開けるんだっけ?)
慣れない手つきで手紙を開封した俺は、そっとライナードからの手紙を広げてみる。
『愛しいカイトへ。
仕事の間、俺はきっとカイトに会いにいけない。
そのため、手紙を送りたいと思う。
こんな風に個人的な手紙を書くのは初めてで、至らない点は多いと思うが、もし良ければ返事をくれるとありがたい。
窮屈な思いをさせてすまない。
すぐに解決して戻る。
ライナードより』
そこにあったのは、何ともライナードらしい、言葉足らずで……しかし、懸命に考えて書いたのが良く分かる手紙だった。
「ふふっ」
ライナードに拒絶されたのはショックだったが、こうして手紙を読めば、そのショックも和らぐ。
(きっと、何か理由があったんだよな)
例えば、俺が思っている以上に、俺が動くことは危険を伴うとか。
(大人しく待っておこう)
きっと、その方がライナードも安心して仕事ができるはずだ。
「カイトお嬢様、お返事は書かれますか?」
「えっ? うーん……一応、便箋とか持ってきてくれるか? 手紙を書くなんて経験、ほとんどないけど……頑張ってみる」
手紙なんて、小学校の頃の授業中に何かを書いたような気がする、くらいの記憶しかない。そもそも、パソコンやスマホやらが普及している現代に、手紙を書く機会なんてほとんどない。あったとしても、手書きなんて珍しいだろう。
ノーラが道具を取りに行っている間、俺は何を書こうか、とか、ライナードほど上手な字は書けないぞ、とか、そんなことを考えながら、気持ちを浮上させる。もう、ライナードに拒絶されたショックは、完全に抜けていた。
「お待たせいたしました。便箋各種をお持ちしました」
「うん、ありが……と……」
持ってきてもらった便箋を前に、俺は自分が女の子なのだということを思い知る。
ピンクや赤の比重が大きい、可愛らしい便箋の数々。そして、何に使うのか良く分からない香りのする袋が多数に、羽根ペンとインクが一式。
「カイトお嬢様、どの便箋をお使いになられますか?」
「う、うんんっ、そ、そうだな……えーっと……」
「これなどはいかがでしょう? 花柄が可愛らしいですよ?」
「ソ、ソウダナ」
「こちらは、小動物シリーズです。カイトお嬢様、ウサギはお好きですか?」
「……フツー、カナ?」
その他にも、ゴージャスなレース柄の便箋やら、お菓子が可愛く描かれた便箋なども勧められて、俺はどうにかかわしていく。
(中身が男だって知ってるライナードに、これは、さすがに送れないっ!)
無難な便箋を選べば、どことなくノーラが不満そうにしていたものの、そんなの知るものかと無視する。
(いや、まぁ、森のイメージで、可愛くないわけじゃないけど、これはきっと、許容範囲……であってほしい)
仕事で頑張っているライナードをドン引きさせる便箋は選べないと、必死になって、俺はその便箋が良いのだと主張し、羽根ペンの使い方を教わりながら慎重に手紙を認める。
(うん、これでよしっ)
何回か失敗して、便箋をダメにしてしまったものの、何とか文章を書くことに成功する。
「これを送りたいんだけど、どうすれば良いんだ?」
「送る方法はいくつかございますが、今回は確実に届けるために、最近開発された転移ポストを使いましょう」
「転移ポスト?」
「はい、何でも、魔王妃様が開発されたもののようです。転移魔法の魔法陣をこのくらいの箱の中に描いて、対を作ることで、手紙や小さなものを相互に送ることが可能になるものです。今回、ライナード様は転移ポストで手紙を送ってきましたので、対のポストを使えば確実に届けられます」
そんな説明になるほどと思うと同時に、確か、魔王妃様も日本人なのだと思い出す。
(郵便制度は、あまり整ってないのかな?)
そう思いながらも、俺は手紙をノーラに託すのだった。
31
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
本編完結済み。
続きのお話を、掲載中です。
続きのお話も、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる