俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌

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第五章 お姉様

第七十八話 救われて(ニナ視点)

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 カイトお姉ちゃんがなぜかお説教されているのを、ニナはカイトお姉ちゃんにしがみついて耐える。


(こわい……)


 カイトお姉ちゃんにも、最初会った時は怖かったけれど、カイトお姉ちゃんだけは、あの怖い目を向けてこなかった。だから、普段なら口にしないようなことを言って、ニナは無理矢理ついてきてしまっていた。


(なんで、ニナは……)


 多分、カイトお姉ちゃんは信頼できる。ただ、ライナードという人や、ノーラという人は良く分からない。特に、ライナードという人は、ちょっと前までニナに厳しい視線を投げかけていたから、わりと怖い。


(はやく、おわって……)


 早く、このお説教を終わらせてほしい。そうすれば、きっと、ニナはカイトお姉ちゃんと一緒に居られるはずだ。

 しばらくすれば、お説教が終わり、カイトお姉ちゃんがうなだれながら反省の言葉を口にする。


(カイトおねえちゃん、わるくないのに。カイトおねえちゃんは、ニナをたすけてくれたのに……)


 誰も、助けてはくれなかった。それどころか、皆が皆、ニナのことを怖い目で見てきて、嫌なことをいっぱいされた。


「えっと、ニナ? これから私の部屋についてきますか?」

「うん」


 ニナを誘ってくれたカイトお姉ちゃんに、ニナは何も疑うことなくついていく。


「む……その娘も一緒か……」

「いや、だって、何か懐かれてるみたいだし、放っておけないし……」

「いや、カイトが優しいのは良いことだ。何か甘いものでも用意させようか?」

「あっ、それ良いかも」

(あまいもの……)

「やっ」


 甘いものを持ってきそうだったカイトお姉ちゃんに、ニナは服をギュッと掴んで反対する。


「うん? ニナは甘いものは嫌いですか?」

「きらいっ」


 前は、甘いものも好きだった。けれど、お父さんに閉じ込められて、いっぱい体にクリームを塗られて……その甘い匂いと、その後にされた嫌なことが、甘いものへの拒絶となっていた。


「そっかぁ……じゃあ、ポテチとかは?」

「ぽてち?」

「薄く切ったじゃがいもを揚げて、塩を振ったものだ」


 ポテチが何か分からないニナに、ライナードという人が説明をしてくれるものの、『じゃがいも』とか『あげる』とかが分からない。


(でも、おしお……?)


 塩ということは、甘くはない。つまりは、美味しいものかもしれない。


「美味しいですよ?」

「たべりゅっ」


 きっと、カイトお姉ちゃんが言うなら、それは正しい。ニナは迷わずそう言って、カイトお姉ちゃんのお部屋に一緒に行く。


「失礼します。ポテトチップスをお持ちしました」

(うゆ? ぽてちじゃないの?)


 何やら長ったらしい名前を告げられて、ニナは首をかしげる。


「うん? どうしましたか? ニナ?」


 カイトお姉ちゃんが優しく問いかけてくるものの、ニナは何が何だか分からなくて、上手く言葉にできない。


「……ポテチは、ポテトチップスの略称だ。ものは同じだ」


 そんなニナの心を読んだように答えたのは、ライナードだった。


「うゆ? おなじ?」

「あぁ、同じですよ」


 『りゃくしょう』が何かは分からないけれど、どうやらポテチとポテトチップスが同じものだということが判明して、ニナはテーブルの上に置かれた薄いそれをジーッと眺める。


「うすい」

「うん」

「ピラピラ」

「そうですね」

「ちょんちょん」

「……」

「ほわっ、パリってした!」

「……ライナード、何か、この子、すごく可愛い」

「む、そうか……」

「うゆ?」


 まだ、ポテチを食べてはいない。ただ、観察して、つっついて、力を入れて、パリッと割っただけだ。
 カイトお姉ちゃんは、そんなニナを前に顔を覆っているし、ライナードはそんなカイトお姉ちゃんを微笑ましいといった表情で見つめている。


(???)


 良く分からないものの、とりあえず、このパリパリしたものは食べ物らしいから、食べてみるべきだろう。
 小さな欠片を手に取って、ニナは思いきってパクっとそれを口に入れる。


「ふおっ、おしおっ!」


 食べてみれば、それは塩がしっかりと効いていて、歯ごたえも良く、美味しい。


「おねえちゃんっ、おねえちゃんっ、おいしーのっ」

「う、うん、良かった、ですね」


 身振り手振りで、しっかりとニナはカイトお姉ちゃんにこの感動を伝える。


「まだまだたくさんある。しっかりと食べると良い」

「……うん」


 ライナードにそう言われて、ニナはちょっと戸惑いながらもうなずく。


(ライナードは、ニナ、きらってない?)


 ちょっと前まではにらんできていたのに、今は何だか優しい。もしかしたら、にらまれていたのは気のせいだったのかもしれないとさえ思えてくるほどだ。


「はむっ」

「……体は大人だけど……ライナード、子供って可愛いんだな」

「っ、そ、そうだな」


 パリパリを口にいっぱい入れて、幸せもいっぱいになっていると、カイトお姉ちゃんがライナードとそんなことを話している。その様子はまるで……。


「カイトママ?」

「マっ……」


 お気に入りの絵本に出てきた、『ママ』と『パパ』みたいだった。


「カイトとの、子供……」

「いやいやいや、この年で子持ちはないからっ! ニナ? 私のことは、お姉ちゃんでお願いしますっ」

「うゆ? わかったのっ」

(ママじゃない……ざんねん)


 そんなことを思いながら、手を塩でジャリジャリにして美味しいポテチを頬張る。


「失礼します。ライナード様、リリス様とローレル様が至急、取り次ぎをとのことでしたが、いかがなさいますか?」

「む?」

「リリスさんとローレルさんが?」

「何でも、魅了使いに関する話があるとのことです」

「っ、すぐ、向かう!」


 頬張っている途中にそんな会話があったものの、カイトお姉ちゃんはニナの側に残ってくれるということだったので、気にしない。


(みりょーつかいって、なにかな?)


 何か他の食べ物だろうかと思いながら、ニナはカイトお姉ちゃんと一緒に過ごすのだった。
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