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第五章 お姉様
第七十九話 魅了使いのお話(リリス視点)
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なぜかルティアスから外出禁止令を出されて四日目、わたくしは我慢の限界を迎えていた。
「なぜ、ルティは何も教えてくれませんのっ!」
「いや、それは」
「もう良いですわっ! わたくし、家出しますっ」
「えっ!? ちょっ、まっ」
「転移っ!」
外で何かがあったらしいことは分かっても、それ以上の情報をくれないルティアスに業を煮やしたわたくしは、さっさと転移を使って、少し前から何回かお茶会をしているローレルの家に着く。
「突然で申し訳ありませんが、ローレルは居ますか?」
ヴァイラン魔国の中でもかなり大きい部類に入る日本家屋を前に、わたくしは、そう言って、ローレルの元へと向かったのだった。
「それで、何度聞いても、ルティは答えてくれませんのよ?」
「うーん、それは確かに気になる、というか、今、私も同じ状態なんですよねぇ」
聞けば、ローレルもジェドさんから外出禁止令を出されて、職場にも行けない状態になっているという。
わたくし達は、庭の四阿でお茶をしながら話し合う。
「何か、ゲームの中で今の状況を説明できるイベントはありませんの?」
「ゲーム…………あっ!」
ダメ元で聞いてみたものの、どうやら、ローレルには心当たりがあるらしい。
「魅了使い……」
「魅了?」
何やら不穏な単語が出てきたと思いながら尋ねてみれば、どうやら、魅了使いが猛威を奮っている間、魔族達は己の片翼を守るために家に閉じ込めてしまうらしい。
「どうしてそんな重要なことを話してくださいませんでしたのっ!」
「いやっ、ちょっと待って!? リリスにとっては数十年前の記憶でも、私にとっては二百年以上前の記憶ですからねっ!? そんなに鮮明に覚えてるわけじゃないんですっ!」
そう言われて、わたくしは少しだけ落ち着く。確かに、ローレルは魔族で、二百年以上生きている。ゲームのことを覚えているだけでありがたいのだ。
「分かりましたわ。では、覚えているだけ、話してくださいまし」
「そうですねぇ……確か、魅了魔法っていうのは先天的なものと後天的なものがあって、ゲームの中で登場するのは、先天的に魅了魔法が使える女の子が出てきましたね」
魅了魔法は、先天的に使える場合と後天的に覚えて使える場合があり、現在のヴァイラン魔国では、先天的に使える者が居るという認識はないらしい。そして、先天的に魅了魔法を使える者の多くは、赤子の頃からその力を暴走させており、両親に閉じ込められて一生を終えることが多いのだとか。
「それで、女の子の名前は忘れたんですけど、その子は例に漏れず、自身に魅了された両親に愛されていて、その愛が暴走して、性的虐待を受けながら育った女の子っていう設定だったと思います」
「それは……随分救いのない設定ですわね」
そう言いながらも、この世界に、その魅了使いが実在する可能性を考えれば、真剣にもなる。
「それで、ある日、その女の子が家から逃げたことが事件の発端になるんです」
そう言われて、魅了魔法を暴走させた状態で外に出るということを考えると、酷く納得できた。
「他の魔族を魅了してしまった、ということですわね?」
「はい。知っての通り、魔族は片翼一筋です。それが、魅了魔法で歪められたら、色々な問題が起こるのは必至で……まぁ、しばらくしたら魅了使いの存在が上層部でも話題になって、彼ら彼女らは、自分の片翼を守るために家に閉じ込めると同時に、魅了使いの捜索に乗り出すんです」
『ちなみに、このイベントを一番大きく扱ってるのはライナードルートです』と言いながら、ローレルはしばらく目を閉じて、ウンウン唸りながら、ゲームの内容を思いだそうとしているようだった。
「確か……結局のところ、その女の子はライナードさんに捕まるんですけど、ヒロインは必死に女の子を庇うんです。女の子自身、無自覚で魅了を使っていたこともありますし、ヒロインが聖女カイリの場合は、彼女が側に居る時に限り、女の子の魅了が使えなくなる、なんて設定があったような気がします」
そうして、お茶を一口飲んで、息を吐いたローレルは、眉間にシワを寄せる。
「でも、その頃の魔国は魔王が居なくなったばかりで荒れていて、その女の子は結局処刑されちゃうんです」
「っ!」
あまりにも、その女の子にとって救いのない話に、わたくしは思わず息を飲む。
「処刑って……ただ、魔法をコントロールできなかっただけで、ですの?」
「うーん、それが、女の子が捕まった後も色々とゴタゴタがあって、結局、その事件で魔族が何人か死んじゃうって話だったと思うんです。それで、ライナードも庇いきれなくなって、女の子は魔力を封じられて断頭台に……って流れだったような?」
うーんと唸るローレルに、わたくしはこれ以上の情報は引き出せそうにないと判断する。そして……。
「では、わたくし達で、その女の子を救いましょうっ」
「救うって……あぁっ、そうですよねっ! ライナードさんに話せば、分かってくれるかもですもんねっ!」
そういうわけで、わたくし達は、ジェドさんに置き手紙を残して、海斗とライナードさんが居る家へと転移するのだった。
「なぜ、ルティは何も教えてくれませんのっ!」
「いや、それは」
「もう良いですわっ! わたくし、家出しますっ」
「えっ!? ちょっ、まっ」
「転移っ!」
外で何かがあったらしいことは分かっても、それ以上の情報をくれないルティアスに業を煮やしたわたくしは、さっさと転移を使って、少し前から何回かお茶会をしているローレルの家に着く。
「突然で申し訳ありませんが、ローレルは居ますか?」
ヴァイラン魔国の中でもかなり大きい部類に入る日本家屋を前に、わたくしは、そう言って、ローレルの元へと向かったのだった。
「それで、何度聞いても、ルティは答えてくれませんのよ?」
「うーん、それは確かに気になる、というか、今、私も同じ状態なんですよねぇ」
聞けば、ローレルもジェドさんから外出禁止令を出されて、職場にも行けない状態になっているという。
わたくし達は、庭の四阿でお茶をしながら話し合う。
「何か、ゲームの中で今の状況を説明できるイベントはありませんの?」
「ゲーム…………あっ!」
ダメ元で聞いてみたものの、どうやら、ローレルには心当たりがあるらしい。
「魅了使い……」
「魅了?」
何やら不穏な単語が出てきたと思いながら尋ねてみれば、どうやら、魅了使いが猛威を奮っている間、魔族達は己の片翼を守るために家に閉じ込めてしまうらしい。
「どうしてそんな重要なことを話してくださいませんでしたのっ!」
「いやっ、ちょっと待って!? リリスにとっては数十年前の記憶でも、私にとっては二百年以上前の記憶ですからねっ!? そんなに鮮明に覚えてるわけじゃないんですっ!」
そう言われて、わたくしは少しだけ落ち着く。確かに、ローレルは魔族で、二百年以上生きている。ゲームのことを覚えているだけでありがたいのだ。
「分かりましたわ。では、覚えているだけ、話してくださいまし」
「そうですねぇ……確か、魅了魔法っていうのは先天的なものと後天的なものがあって、ゲームの中で登場するのは、先天的に魅了魔法が使える女の子が出てきましたね」
魅了魔法は、先天的に使える場合と後天的に覚えて使える場合があり、現在のヴァイラン魔国では、先天的に使える者が居るという認識はないらしい。そして、先天的に魅了魔法を使える者の多くは、赤子の頃からその力を暴走させており、両親に閉じ込められて一生を終えることが多いのだとか。
「それで、女の子の名前は忘れたんですけど、その子は例に漏れず、自身に魅了された両親に愛されていて、その愛が暴走して、性的虐待を受けながら育った女の子っていう設定だったと思います」
「それは……随分救いのない設定ですわね」
そう言いながらも、この世界に、その魅了使いが実在する可能性を考えれば、真剣にもなる。
「それで、ある日、その女の子が家から逃げたことが事件の発端になるんです」
そう言われて、魅了魔法を暴走させた状態で外に出るということを考えると、酷く納得できた。
「他の魔族を魅了してしまった、ということですわね?」
「はい。知っての通り、魔族は片翼一筋です。それが、魅了魔法で歪められたら、色々な問題が起こるのは必至で……まぁ、しばらくしたら魅了使いの存在が上層部でも話題になって、彼ら彼女らは、自分の片翼を守るために家に閉じ込めると同時に、魅了使いの捜索に乗り出すんです」
『ちなみに、このイベントを一番大きく扱ってるのはライナードルートです』と言いながら、ローレルはしばらく目を閉じて、ウンウン唸りながら、ゲームの内容を思いだそうとしているようだった。
「確か……結局のところ、その女の子はライナードさんに捕まるんですけど、ヒロインは必死に女の子を庇うんです。女の子自身、無自覚で魅了を使っていたこともありますし、ヒロインが聖女カイリの場合は、彼女が側に居る時に限り、女の子の魅了が使えなくなる、なんて設定があったような気がします」
そうして、お茶を一口飲んで、息を吐いたローレルは、眉間にシワを寄せる。
「でも、その頃の魔国は魔王が居なくなったばかりで荒れていて、その女の子は結局処刑されちゃうんです」
「っ!」
あまりにも、その女の子にとって救いのない話に、わたくしは思わず息を飲む。
「処刑って……ただ、魔法をコントロールできなかっただけで、ですの?」
「うーん、それが、女の子が捕まった後も色々とゴタゴタがあって、結局、その事件で魔族が何人か死んじゃうって話だったと思うんです。それで、ライナードも庇いきれなくなって、女の子は魔力を封じられて断頭台に……って流れだったような?」
うーんと唸るローレルに、わたくしはこれ以上の情報は引き出せそうにないと判断する。そして……。
「では、わたくし達で、その女の子を救いましょうっ」
「救うって……あぁっ、そうですよねっ! ライナードさんに話せば、分かってくれるかもですもんねっ!」
そういうわけで、わたくし達は、ジェドさんに置き手紙を残して、海斗とライナードさんが居る家へと転移するのだった。
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