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第七章 過去との決別
第百十一話 突撃(ライナード視点)
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「これは……」
「ライナード、カイトちゃんの救出に協力するよ」
転移した先に待っていたのは、ルティアスを筆頭とした部隊の仲間達。総勢五十人ほどの人数を前に、さすがに俺はラディスに事情を聞きかけて……すぐに、カイトの方へと意識を取られる。
(今はそれどころじゃない)
「助かる」
どんな事情があろうとも、ルティアスの言葉が嘘だとは思えない。ここは素直に協力に感謝し、カイトを助けるに限る。
「タボック家の屋敷はあれです。そして、早くしないとカイト嬢は貞操の危機かも「何だと!?」ちょっ、ライナード!? あぁっ、ルティアス! ライナードの補助を頼みますっ」
「もちろんっ!」
聞き捨てならない言葉が聞こえて、俺は頭に血が上り、一気にカイトが居るはずの場所へと駆け出す。
(っ、カイトの気配! 今行く!)
門に辿り着いた俺は、とりあえず門を飛び越え、玄関扉を蹴破る。途端に、その屋敷は蜂の巣をつついたかのような騒ぎになったが、向かってくる者は全て蹴散らし、背後を気にすることなく、屋敷を駆け回る。
(気配は、こっちかっ!)
後方では、ルティアス達が一緒に突入してきているため、俺はとにかく進むだけで良い。その状況に感謝しながらも、俺はとにかく、カイトを捜して駆け回る。
「ここかっ!」
地下にあった一室から、カイトの強い気配があることに気づき、俺はその扉を蹴破る。
ドカンッと音を立ててぶっ飛んだ扉。そして、その先にあった光景に、俺は我を忘れる。
「貴様、カイトに、何を、した?」
「ひっ」
濃厚な魔力が体から吹き出し、空間を歪める。
カイトは、あろうことか、銀髪の男に組み敷かれていた。
「ライ、ナード?」
可哀想に、カイトは真っ青な顔でプルプルと震えている。きっと、あの男に怖い思いをさせられたのだろう。
「カイト、もう大丈夫だ。この男は、もう終わりだ」
「あ、ぁ、ぁ……」
ガタガタと震える男は、俺がこれだけ威圧しているにもかかわらず、その場から動こうとしない。だから俺は、素早くそいつの側に行き片手で頭を鷲掴みにして持ち上げる。
「や……た、たしゅけ……」
「カイトに手を出した時点で、お前に助けを乞う資格などない」
このまま頭を握り潰してやりたいところではあったが、それをすると、カイトに血が散ってしまう。こんな奴の血で、カイトを汚してしまうなど、絶対にあり得ない。だから、俺はひとまず、そいつの胸ぐらをもう片方の手で掴み、壁に投げつける。
「がぁっ」
大きな音を立てて、男は背中を打ち付けると、そのまま意識を失ったらしく、倒れ込み、動かなくなった。
「ライナード……?」
「カイト……」
未だに震えが治まらないらしいカイトは、ベッドの上で、手枷足枷を嵌められて拘束されている。カイトは、ゆっくりと起き上がって、泣きそうな目で俺を見つめてきた。
「ライナード、本物……?」
「む、そうだ」
「ほんとに、ほんと?」
「もう、カイトを傷つける者は居ない。だから、大丈夫」
言いながらカイトを抱き締め、鎖を魔法で砕いていく。
全ての枷が取り払われると、カイトは、俺の背中に腕を回して、ギュッと力を込める。
「ライナード、ライナードっ」
「大丈夫、大丈夫だ」
グズグズと涙声になるカイトは、やはり恐怖が強かったのだろう。まだまだ震えは治まりそうにない。
「屋敷に、帰ろう」
「うんっ、うんっ!」
カイトを抱き上げた俺は、カイトにあの男を見せないようにしながら、そのまま壊れた扉の元へと向かう。
「ライナード! って……良かった。ちゃんと助けられたんだね?」
「む、協力、感謝する」
「それで、あれがカイトちゃんを虐めた奴だね? よし、後は任せておいて。ちゃんとしかるべきところに収容しておくから」
「ありがとう」
走ってやってきたルティアスに、お礼を告げると、俺は首元に顔を埋めてグズグズと泣き続けるカイトをしっかりと抱き締めて、屋敷の外へと向かう。
「ライナード、馬車を近くに用意していますので、それで帰ると良いですよ。ただ、外は寒いので、暖かくしてくださいね」
そう言われて、俺は、カイトがコートを羽織っていないことに気づく。
「む……カイト、少しだけ、下ろすぞ」
「う、ん」
近くにあったソファにカイトを下ろすと、俺は自分のコートを脱いで、カイトを包み込み、また抱き上げる。すると……。
「ライナードの匂い……」
何やら安心したような声でそう告げられて、俺は思わずつまづきそうになる。
(不意打ちだ……)
やっと戻ってきた愛しい温もりに、安心する間もなくダイレクトアタックされた気分の俺は、顔に熱が集まるのを感じながら、カイトを馬車まで連れて行く。
「カイト……」
馬車に乗り込み、それでも抱き上げ続けていると、カイトの震えが治まっていることに気づく。そして……。
「すぅ……」
「今日は、疲れたな。ゆっくり休むと良い」
安心したような表情で眠るカイトに、俺は笑みを浮かべて、優しくカイトの頭を撫で続けるのだった。
「ライナード、カイトちゃんの救出に協力するよ」
転移した先に待っていたのは、ルティアスを筆頭とした部隊の仲間達。総勢五十人ほどの人数を前に、さすがに俺はラディスに事情を聞きかけて……すぐに、カイトの方へと意識を取られる。
(今はそれどころじゃない)
「助かる」
どんな事情があろうとも、ルティアスの言葉が嘘だとは思えない。ここは素直に協力に感謝し、カイトを助けるに限る。
「タボック家の屋敷はあれです。そして、早くしないとカイト嬢は貞操の危機かも「何だと!?」ちょっ、ライナード!? あぁっ、ルティアス! ライナードの補助を頼みますっ」
「もちろんっ!」
聞き捨てならない言葉が聞こえて、俺は頭に血が上り、一気にカイトが居るはずの場所へと駆け出す。
(っ、カイトの気配! 今行く!)
門に辿り着いた俺は、とりあえず門を飛び越え、玄関扉を蹴破る。途端に、その屋敷は蜂の巣をつついたかのような騒ぎになったが、向かってくる者は全て蹴散らし、背後を気にすることなく、屋敷を駆け回る。
(気配は、こっちかっ!)
後方では、ルティアス達が一緒に突入してきているため、俺はとにかく進むだけで良い。その状況に感謝しながらも、俺はとにかく、カイトを捜して駆け回る。
「ここかっ!」
地下にあった一室から、カイトの強い気配があることに気づき、俺はその扉を蹴破る。
ドカンッと音を立ててぶっ飛んだ扉。そして、その先にあった光景に、俺は我を忘れる。
「貴様、カイトに、何を、した?」
「ひっ」
濃厚な魔力が体から吹き出し、空間を歪める。
カイトは、あろうことか、銀髪の男に組み敷かれていた。
「ライ、ナード?」
可哀想に、カイトは真っ青な顔でプルプルと震えている。きっと、あの男に怖い思いをさせられたのだろう。
「カイト、もう大丈夫だ。この男は、もう終わりだ」
「あ、ぁ、ぁ……」
ガタガタと震える男は、俺がこれだけ威圧しているにもかかわらず、その場から動こうとしない。だから俺は、素早くそいつの側に行き片手で頭を鷲掴みにして持ち上げる。
「や……た、たしゅけ……」
「カイトに手を出した時点で、お前に助けを乞う資格などない」
このまま頭を握り潰してやりたいところではあったが、それをすると、カイトに血が散ってしまう。こんな奴の血で、カイトを汚してしまうなど、絶対にあり得ない。だから、俺はひとまず、そいつの胸ぐらをもう片方の手で掴み、壁に投げつける。
「がぁっ」
大きな音を立てて、男は背中を打ち付けると、そのまま意識を失ったらしく、倒れ込み、動かなくなった。
「ライナード……?」
「カイト……」
未だに震えが治まらないらしいカイトは、ベッドの上で、手枷足枷を嵌められて拘束されている。カイトは、ゆっくりと起き上がって、泣きそうな目で俺を見つめてきた。
「ライナード、本物……?」
「む、そうだ」
「ほんとに、ほんと?」
「もう、カイトを傷つける者は居ない。だから、大丈夫」
言いながらカイトを抱き締め、鎖を魔法で砕いていく。
全ての枷が取り払われると、カイトは、俺の背中に腕を回して、ギュッと力を込める。
「ライナード、ライナードっ」
「大丈夫、大丈夫だ」
グズグズと涙声になるカイトは、やはり恐怖が強かったのだろう。まだまだ震えは治まりそうにない。
「屋敷に、帰ろう」
「うんっ、うんっ!」
カイトを抱き上げた俺は、カイトにあの男を見せないようにしながら、そのまま壊れた扉の元へと向かう。
「ライナード! って……良かった。ちゃんと助けられたんだね?」
「む、協力、感謝する」
「それで、あれがカイトちゃんを虐めた奴だね? よし、後は任せておいて。ちゃんとしかるべきところに収容しておくから」
「ありがとう」
走ってやってきたルティアスに、お礼を告げると、俺は首元に顔を埋めてグズグズと泣き続けるカイトをしっかりと抱き締めて、屋敷の外へと向かう。
「ライナード、馬車を近くに用意していますので、それで帰ると良いですよ。ただ、外は寒いので、暖かくしてくださいね」
そう言われて、俺は、カイトがコートを羽織っていないことに気づく。
「む……カイト、少しだけ、下ろすぞ」
「う、ん」
近くにあったソファにカイトを下ろすと、俺は自分のコートを脱いで、カイトを包み込み、また抱き上げる。すると……。
「ライナードの匂い……」
何やら安心したような声でそう告げられて、俺は思わずつまづきそうになる。
(不意打ちだ……)
やっと戻ってきた愛しい温もりに、安心する間もなくダイレクトアタックされた気分の俺は、顔に熱が集まるのを感じながら、カイトを馬車まで連れて行く。
「カイト……」
馬車に乗り込み、それでも抱き上げ続けていると、カイトの震えが治まっていることに気づく。そして……。
「すぅ……」
「今日は、疲れたな。ゆっくり休むと良い」
安心したような表情で眠るカイトに、俺は笑みを浮かべて、優しくカイトの頭を撫で続けるのだった。
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