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第八章 告白まで
第百十七話 再び観劇デート(ライナード視点)
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今日はいよいよ、観劇デート。雪祭りデートができなかった分の埋め合わせを、この日はきっちりして、それ以上にカイトを楽しませてあげたいと、準備万端で待っていたのだが……。
「カイト?」
「う、ん?」
「まだ、悩んでいるのか?」
カイトはどこか上の空だ。この前から、カイトが悩んでいるらしいことは知っていたのだが、残念ながら、その悩みを教えてもらえていない。カイトの悩みなら、何だって解決してあげたいのだが、カイトはまだ話せないのだと繰り返すばかりだった。
「カイト、今だけは、その悩みを忘れて楽しんでほしい」
馬車の中で、カイトの手をギュッと握れば、カイトはビクッとした後に、上目遣いでこちらを眺めてくる。
「ライナード」
「む」
どこか、乞うような声に、俺はとうとう悩みを話してもらえるのだろうかと居ずまいを正して……。
「あのー、着きまし……失礼しました!」
いつの間にか止まっていた馬車。中々出てこない俺達に痺れを切らした御者が呼びに来て、カイトの何かを話しそうな雰囲気は霧散してしまう。
「……行くか」
「うん」
きっと、デートが始まればカイトの悩みも一時的に吹き飛ぶだろう。そう考えたのは、間違いではなかった。
「ライナードっ、ライナードっ、劇、すごかったな!」
「む。カイトが喜んでくれたのなら、嬉しい」
劇の後編は、弟王子を想い続ける婚約者と、危険な森で、必死に片翼を想って生き残る弟王子が、嘆き悲しむ歌から始まった。
兄王子は、弟王子を追放したことによって王の地位を得て、真面目に政務に励む。対して、弟王子は、森を脱出するために必死な毎日を送り……ある日、兄王子の方に変化が現れる。そう、兄王子にも、片翼が現れたのだ。しかし、その片翼は魔族ではなく人間で、家族をとてもとても大切にする者だった。だからこそ、兄王子に求婚されても、弟王子を死に追いやった酷い魔族としか見られずに苦悩するようになる。
兄王子は、もう、王の地位などどうでも良くなり、弟王子を捜すために力を尽くすことになる。
弟王子の方は、疑心暗鬼に駆られて、何度かやってくる騎士達を刺客だと思い込み、必死に逃げ続ける、すると、森の中で、とある一軒家に辿り着く。まだ危険な森であるにもかかわらず、そこに家があるという不自然さに警戒しながら入れば、そこには、先々代魔王であった男が、自らの片翼と一緒に仲睦まじく暮らしていた。『お前の求めるものはなんだ? それに従って、行動するが良い』そんな言葉をかけられた弟王子は、先々代魔王の力で愛しい片翼の元へと転移する。
突然やってきた弟王子に、片翼である兄王子の婚約者……いや、今では妻となった彼女は驚き、喜び、戸惑った。そして、その場に兄王子がやってきて、同道していた騎士達が、弟王子に牙を剥く。
兄王子は、騎士達を止めようと。片翼の彼女は、弟王子を守ろうと、弟王子は片翼を守ろうと、それぞれ動き出し……悲劇が起こる。弟王子を庇った片翼。そして、その彼女を庇った兄王子は、騎士の剣で胸を刺し貫かれてしまうのだ。
『兄上っ、兄上っ、なぜっ、こんなことにっ』響く弟王子の慟哭に、騎士達は逃げ去っていく。『すまない。すまない。私は、お前にとても残酷なことをしてしまった。私も、片翼を見つけたから、分かる』
そうして舞台は暗転し、次の場面では、手と手を取り合う弟王子と兄王子の妻であった女性。そして、王位に就いたらしい弟王子達を民達に紛れて足を引きずりながら眺める兄王子とその片翼の人間の少女。それぞれのハッピーエンドが描かれたその光景を最後に、舞台は華やかな歌と踊りで彩られることとなった。
「やっぱり、ハッピーエンドの話が良いよなっ。バッドエンドだと、気分が落ち込んじゃうし」
「む、基本的に、劇の多くはハッピーエンドだ」
「そうなのか? それなら、その……次、とかも……」
どこか恥ずかしそうに言うカイトに、これは脈ありなのではないかと少しばかりドキリとする。
(いや、カイトは、元男という意識が強いのだから、すぐに俺の気持ちに応えてくれるようなことは、ないだろう)
自分で思っていて悲しくなるが、同性に抵抗があるものは、人間には意外と多い。ここは、少しずつカイトの心を解していかなければならないだろう。
「もちろんだ。次の演目は、二週間後だから、ぜひ行こう!」
「二週間後……うん」
次を約束した瞬間までは目を輝かせていたカイトだったが、二週間後と告げると、どこか残念そうな表情になる。
「カイト?」
「い、いや、何でもない」
「……カイト、俺は、その間にもデートの予定を入れたい。雪祭りは終わってしまったが、街の散策をするのも楽しいだろうし、雪像は一ヶ月は保存されるから、まだまだ見れる。一緒に行きたい店は山ほどあるし、暖かくなればピクニックにだって行きたい」
俺の希望的観測かもしれないと思いながらも、カイトは、デートの予定が思ったより先なことに落胆したのだと考え、少しだけデートの打診をするつもりが……欲望が暴走してしまった気がする。
「そ、そうだなっ」
ただ、カイトはそれで、どこか嬉しそうな表情になったので、きっと間違ってはいなかったのだろう。
(早く、カイトに好きになってもらいたい……)
口づけもしたいし、それ以上のことだって、カイトとしたい。しかし、それもこれも、カイトが俺を好きだと言ってくれるまでは待たなくてはと、俺は、自分の気持ちを抑えるのだった。
「カイト?」
「う、ん?」
「まだ、悩んでいるのか?」
カイトはどこか上の空だ。この前から、カイトが悩んでいるらしいことは知っていたのだが、残念ながら、その悩みを教えてもらえていない。カイトの悩みなら、何だって解決してあげたいのだが、カイトはまだ話せないのだと繰り返すばかりだった。
「カイト、今だけは、その悩みを忘れて楽しんでほしい」
馬車の中で、カイトの手をギュッと握れば、カイトはビクッとした後に、上目遣いでこちらを眺めてくる。
「ライナード」
「む」
どこか、乞うような声に、俺はとうとう悩みを話してもらえるのだろうかと居ずまいを正して……。
「あのー、着きまし……失礼しました!」
いつの間にか止まっていた馬車。中々出てこない俺達に痺れを切らした御者が呼びに来て、カイトの何かを話しそうな雰囲気は霧散してしまう。
「……行くか」
「うん」
きっと、デートが始まればカイトの悩みも一時的に吹き飛ぶだろう。そう考えたのは、間違いではなかった。
「ライナードっ、ライナードっ、劇、すごかったな!」
「む。カイトが喜んでくれたのなら、嬉しい」
劇の後編は、弟王子を想い続ける婚約者と、危険な森で、必死に片翼を想って生き残る弟王子が、嘆き悲しむ歌から始まった。
兄王子は、弟王子を追放したことによって王の地位を得て、真面目に政務に励む。対して、弟王子は、森を脱出するために必死な毎日を送り……ある日、兄王子の方に変化が現れる。そう、兄王子にも、片翼が現れたのだ。しかし、その片翼は魔族ではなく人間で、家族をとてもとても大切にする者だった。だからこそ、兄王子に求婚されても、弟王子を死に追いやった酷い魔族としか見られずに苦悩するようになる。
兄王子は、もう、王の地位などどうでも良くなり、弟王子を捜すために力を尽くすことになる。
弟王子の方は、疑心暗鬼に駆られて、何度かやってくる騎士達を刺客だと思い込み、必死に逃げ続ける、すると、森の中で、とある一軒家に辿り着く。まだ危険な森であるにもかかわらず、そこに家があるという不自然さに警戒しながら入れば、そこには、先々代魔王であった男が、自らの片翼と一緒に仲睦まじく暮らしていた。『お前の求めるものはなんだ? それに従って、行動するが良い』そんな言葉をかけられた弟王子は、先々代魔王の力で愛しい片翼の元へと転移する。
突然やってきた弟王子に、片翼である兄王子の婚約者……いや、今では妻となった彼女は驚き、喜び、戸惑った。そして、その場に兄王子がやってきて、同道していた騎士達が、弟王子に牙を剥く。
兄王子は、騎士達を止めようと。片翼の彼女は、弟王子を守ろうと、弟王子は片翼を守ろうと、それぞれ動き出し……悲劇が起こる。弟王子を庇った片翼。そして、その彼女を庇った兄王子は、騎士の剣で胸を刺し貫かれてしまうのだ。
『兄上っ、兄上っ、なぜっ、こんなことにっ』響く弟王子の慟哭に、騎士達は逃げ去っていく。『すまない。すまない。私は、お前にとても残酷なことをしてしまった。私も、片翼を見つけたから、分かる』
そうして舞台は暗転し、次の場面では、手と手を取り合う弟王子と兄王子の妻であった女性。そして、王位に就いたらしい弟王子達を民達に紛れて足を引きずりながら眺める兄王子とその片翼の人間の少女。それぞれのハッピーエンドが描かれたその光景を最後に、舞台は華やかな歌と踊りで彩られることとなった。
「やっぱり、ハッピーエンドの話が良いよなっ。バッドエンドだと、気分が落ち込んじゃうし」
「む、基本的に、劇の多くはハッピーエンドだ」
「そうなのか? それなら、その……次、とかも……」
どこか恥ずかしそうに言うカイトに、これは脈ありなのではないかと少しばかりドキリとする。
(いや、カイトは、元男という意識が強いのだから、すぐに俺の気持ちに応えてくれるようなことは、ないだろう)
自分で思っていて悲しくなるが、同性に抵抗があるものは、人間には意外と多い。ここは、少しずつカイトの心を解していかなければならないだろう。
「もちろんだ。次の演目は、二週間後だから、ぜひ行こう!」
「二週間後……うん」
次を約束した瞬間までは目を輝かせていたカイトだったが、二週間後と告げると、どこか残念そうな表情になる。
「カイト?」
「い、いや、何でもない」
「……カイト、俺は、その間にもデートの予定を入れたい。雪祭りは終わってしまったが、街の散策をするのも楽しいだろうし、雪像は一ヶ月は保存されるから、まだまだ見れる。一緒に行きたい店は山ほどあるし、暖かくなればピクニックにだって行きたい」
俺の希望的観測かもしれないと思いながらも、カイトは、デートの予定が思ったより先なことに落胆したのだと考え、少しだけデートの打診をするつもりが……欲望が暴走してしまった気がする。
「そ、そうだなっ」
ただ、カイトはそれで、どこか嬉しそうな表情になったので、きっと間違ってはいなかったのだろう。
(早く、カイトに好きになってもらいたい……)
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