我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百九十三話 見つけたのだっ!

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 バルディスは情報収集。我輩とマギウスはともに欠片の持ち主捜しをして、一週間以上の時が過ぎた。しかし、収穫は全くと言って良いほどなく、お互いに疲労だけが溜まっていた。


「にゃー……(見つからないのだ……)」


 今日も今日とて、欠片の持ち主捜しに繰り出した我輩とマギウスだったが、なぜかマギウスは遠巻きにされ、欠片の持ち主など見当たらない。


「少し休むか」


 耳を垂れてとぼとぼと歩いていると、マギウスはそう言って、近くの喫茶店へと向かう。ゆっくりと歩いてくれるマギウスに我輩、しっかり着いていくと、ふいに、何かが引っ掛かる。


「にゃ……? (これは……?)」

「ん? どうしたんだ?」


 何が引っ掛かったのか分からない我輩は、思わず足を止める。すると、マギウスはそんな我輩に気づいて、しゃがみ込んでくる。


「に、にゃあ……(これは、この、匂いは……)」


 そう、匂い。それが引っ掛かったのだと自覚しつつ、我輩、その懐かしさに大きく目を見開く。


「にゃっ! (急ぐのだっ!)」


 頭の中で答えが出る前に、我輩、駆け出していた。その匂いの元は、どうしても確認しなければならなかった。


「えっ? お、おいっ」


 走り出した我輩を見て、マギウスも即座に立ち上がって駆け出す。ただ、今の我輩には速度制限などなかった。とにかく、匂いの元に辿り着きたい一心で、マギウスを引き離していることにも気づかずに走り続ける。そして……。


「にゃあぁっ! (みっ、見つけたのだーっ!)」

「む?」


 我輩の声に振り返ったのは、黒目黒髪の男。なぜかこの世界の人々の中に居るその男は、前に会った時と比べて、随分と年を取っているように見えたものの、間違えるはずがない。


「にゃあーっ! (飼い主ーっ!)」


 勢い良く飛びかかった我輩は、そのまま飼い主の胸へと突進する。


「っ、タロ!?」


 名前を呼び、しっかりと受け止めてくれた飼い主に、我輩、頭を埋めて何度も何度も鳴く。


「にゃあ、にゃあ、にゃあぁぁっ(飼い主、飼い主、飼い主ぃぃっ)」


 会いたかったのだっ。ずっとずっと、会いたかったのだっ!


 尻尾をフリフリ、大好きな飼い主の香りを目一杯吸い込んで、スリスリと頭をすりつける。


「おぉっ、タロ。私も会いたかったぞっ」


 背中を撫で撫でしてくる飼い主に、我輩、夢見心地になりながら、夢ではないことを確信したくて飼い主のほっぺをソロリと舐める。


 うむ、やはり、飼い主なのだ。


 くすぐったがる飼い主に、我輩、とてもとても安心する。理由は分からないものの、ここに飼い主が居るということは、我輩にとって何よりも重要なことだった。
 そうして、マギウスが捜しにくるまでの数分間、我輩と飼い主は、往来のど真ん中でお互いに再会を喜び合うのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


もうちょっと再会までを引き延ばすというのも考えたのですが、今後のことを考えると早く再会させた方が良いかなぁということで、再会しました!

やっと、飼い主に会えて大喜びのタロでした。

それでは、また!
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