我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百五十四話 テッテ

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 馬車でガタゴトと揺られること、一週間。我輩達は、ようやく、ルビーナ商国の首都、テッテに辿り着いた。
 潮の香りのするそこは、ルビーナ商国において最も大きな港を有する場所で、本来ならば、活気に満ち溢れた場所であったのだろうが……魚が獲れないという話は本当だったらしく、人も疎らで、静まり返っている。


「これは……かなり深刻なのかもな」

「昔、この国に来たことがあるけど、この国がここまで静かなのは初めてだよ」


 バルディスとマギウスの言葉に、我輩、一週間前から持ち続けている使命感がさらに強くなるのを感じる。


「ここまで聞いた限りでは、『宵闇の一日』にボスティア海国の姫が誘拐されて、ボスティア海国ではそれがルビーナ商国の仕業だと、ルビーナ商国では魔王の仕業だと主張が食い違っているということまでですね」

「進展、なし」


 ラーミアとディアムのまとめに、我輩、ガックリとうなだれる。


「にゃー(手がかりがなさ過ぎるのだ)」


 ルビーナ商国において聞こえてくるのは、ことの起こりと、ボスティア海国に対する不満のみで、情報らしい情報がない。姫が誘拐されたという場所も、王宮だったり、町外れだったり、はたまた、国を出て、ルビーナ商国に来ていたなんて情報もあったりで、どれが本当なのか分かったものではない。

 馬車から降りて歩いていると、なぜか注目を集めている我輩達は、どこかで宿屋を取ろうと話し合う。すると、どこからともなく、何やら怒鳴りあう声が聞こえてきた。


「だーかーらっ、無理だっ、つってんだろっ!」

「無理でも何でも行かなきゃならないんですっ! お願いしますっ! 船を出してくださいっ!」


 そんな声につられてそちらを見てみると、一人の少女が懸命に屈強な体の男性に食い下がっていた。


「まぁた、やってるよ」

「あの子も懲りないねぇ」

「今は、海は危険だってのに、何の用事があるんだか」


 どうやら、少女がこうして男に食い下がるのは、今日が初めてではないらしい。しかし、我輩、それ以上に見逃せないことを見つけてしまった。


「にゃ、にゃ(バルディス、バルディス)」

「ん? どうした? タロ?」


 なぜなら、彼女の気配は……。


「にゃあ(欠片の持ち主を見つけたのだ)」


 神珠の欠片の持ち主が、彼女だったのだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


前章は中々欠片の持ち主が出てきませんでしたが、今回は早めに登場。

さぁ、彼女は何者なのかっ。

それでは、また!
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