我輩は紳士である（猫なのに、異世界召喚されたのだが）

第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百五十八話 からかい

「邪魔するぞ」

「っ、バルっ」


　船を売る売らないで揉めていた二人の間に、我輩達は入り込む。すると、ラーミアは安心したような表情になり、対して、ラーミアと言い合っていた男は青ざめる。


「バル、私では埒があきませんわ。交渉を頼めますか？」

「あぁ、分かった」


　ラーミアの横に立ち、青ざめた男と対峙した我輩達。ちなみに、男は今にも失神するのではないかというくらいに震えている。


「船を売ってくれないか？」

「ひっ、あ、あんた、達、そっちの、嬢ちゃんとは、ど、どういう関係なんだっ」


　バルディスの問いかけに、なぜか別の問いかけをする男。
　思わずといった様子で、ラーミアとバルディスは顔を見合わせる。そして……。


「大切な奴なかまだ」

「えぇ、そうですわね」

「大切な、奴おんな……い、いけねぇっ！　嬢ちゃん！　何があったかは知らねぇが、あんた、そいつに騙されてるぞ！」

「にゃー？　（ラーミアが、騙される？）」


　良く分からない言いがかりをつけてきた男に、我輩、首をかしげる。


「騙されてなどいませんわ」

「いいやっ、絶対騙されてるねっ！　ほら、悪いことは言わないから、そんな奴らについていくのは止すんだっ」


　必死の説得をする男を前に、なぜか、ラーミアもバルディスも楽しそうだ。


「ラーミアを俺達から引き離すつもりか？　それが、どういうことか分からないわけじゃないよな？」

「ひぃっ、そ、それは……」


　ラーミアへの先程までの勢いは、バルディスが口を挟むことによって完全に失われてしまう。屈強な体をしている男は、可愛そうなくらいにプルプルと震えていた。


「……にゃ？　（……これは、弱い者いじめ？）」


　もしそうだとするなら、我輩、紳士としてバルディス達にも立ち向かってみせる所存なのだ。しかし……。


《違う、ただからかって遊んでるだけだ》


　そう言ったバルディスに、我輩、ひとまず爪を戻しておく。


「大切な仲間を引き離そうだなんて、地の底まで追われても文句は言えないぞ？」

「な、なかま……仲間！？」

「そうです。私達は、同じ冒険者仲間です」


　ラーミアが自信満々にない胸を張って……っ、な、何だか寒気が？　と、とにかく、ラーミアがそう言うと、男は何やらハッとした直後、魂が抜けたような状態になる。


「俺は見た目で悪人と思われがちだが、別に悪どいことをやっているわけじゃない」

「私も、子供ではありませんわ」

「俺……なんでもない」


　最後、会話に加われなかったディアムが声を上げようとしたものの、何も思いつかなかったのか途中で打ち切る。


「と、いうわけで、話を戻そう。船を売ってくれないか？」


　ニヤリと笑ったバルディスは、男にそう告げるのだった。


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ラーミア、どこかから拐われてきた幼女くらいに思われていた模様(笑)

マフィアのドンや赤い戦隊服の変人が登場すれば、誰でもそんな反応になるのかも？

そして、バルディス達はわりと今の姿に順応しているような……。

それでは、また！