我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第四百九十話 取り合い

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 周りが水だらけで、とてもとても恐ろしいものの、レディの前で醜態をさらすわけにはいかないと、今はかろうじて自制が効いている状態だ。そんな中、我輩はというと……。


「ほら、これも食うか?」

「ちょっと隊長? 次は私の番ですよっ」


 二人のレディに小魚を与えてもらい、ご満悦なのだった。


「にゃー(もう満腹なのだ)」

「ほら、この生き物も急かしてますっ」

「いや、餌箱を蹴ったから、もう腹一杯ということじゃないか?」


 地上の同胞達を差し置いて魚を食べたということが判明すれば、我輩、確実に命はないだろう。しかし、ここの魚は美味し過ぎる。ついつい、食べ過ぎてしまったのだ。


 飼い主の話だと、我輩の体重が変わることはないようだから、思う存分食べられるのだ。


 しっかり食べたら眠くなった我輩は、日当たりが良くて、空気がある場所をつい探してしまう。


「あぅ」

「ほら、やっぱり腹一杯の合図だったじゃないか」


 餌箱から離れると、フィフィーは酷く残念そうにする。しかし、許容量を越えて食べるということは、紳士としてあるまじきことなのだ。だから、レディには悪いが、ここは我慢してもらうしかない。


「にゃあ……(どこか良いところ……)」

「はぁ、それにしても可愛いですね。何ていう生き物なんでしょう?」

「さぁな。地上の生き物は良く知らないしな。そのうち、専門家にでも聞いてみるか」

「はい。そうですねっ。……って、そうだっ! 隊長! 書類仕事!」

「ちっ、忘れてなかったか」

「今、舌打ちしました!? というか、この書類、隊長しか処理できないんですから、しっかりやってくださいよっ」

「あー、分かったよ。やるから、もうちょっとだけこの生き物で癒させてくれ」

「ダメですっ。ピィちゃんは私のものですっ」

「っ、リィちゃんは私のものだっ」


 昼寝に良さそうな場所を探していると、二人の言い争う声が聞こえて、我輩、思わず足を止める。


 ピィちゃん? リィちゃん? それは……我輩の名前なのだろうか?


 覚えのない名前。しかも、ちゃんづけで呼ばれるその名前に、我輩、悲しくなってくる。


 我輩は、紳士を目指しているのだ。可愛い名前はダメなのだ。


「にゃー(我輩はタロなのだ)」

「ピィちゃんっ」

「リィちゃんっ」


 自己紹介しても聞こえていない二人のレディは、我輩の声に、同時に声を上げ、どこか血走った目でこちらを見るのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タロの取り合い発生(笑)

次回は多分、少し話が進むはずです。

それでは、また!
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