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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇
第五百三十九話 潜入の始め
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「それで、具体的に協力してもらいたいことなんだが……リリーヌ公爵家の不正を暴くために、潜入の手助けをしてほしい」
そう言ったハーレは、なぜか大きなワカメを取り出して、指を指す。
「リリーヌ公爵家っていうのはここで、ここが現在地なんだが、見て分かる通り、うちの騎士舎とリリーヌ公爵家はかなり近い位置にある」
なるほど、ワカメは紙の代わりか……。
そう納得して見てみると、ワカメが薄く削られて、確かに地図のようになっている。……紙に慣れていると、だいぶ見にくくはあったが。
「近過ぎて、警戒されている、とかか?」
何とか位置関係が分かった俺は、顔を上げてハーレへと尋ねる。
「いや、まぁ、それもあるんだが……何よりも、ここの使用人に顔を覚えられてるってことが問題なんだ」
「……なるほど」
確かに、頻繁に近所で会っている者が潜入するというのは難しい。と、いうことは……。
「俺達に潜入しろってことか?」
「うっ、それは、その……」
「できれば、それが一番です」
言葉に詰まるハーレの代わりに、フィフィーが前に出て答えてくれる。
潜入か……だが、そうなると、ディアムは無理だな。
残念ながら、今の俺達は魚人姿にはなっているものの、顔までは変えていない。……いや、あのタロの『幻術』によって変えられた顔になるのは、もう遠慮したいところだが、とにかく、顔は本来のものなのだ。つまりは……。
「すまないが、ディアムはその作戦からは外させてもらう。こいつは、あまり潜入には向いてないからな」
「にゃ? (うむ?)」
俺の意図が分かったらしいディアムはコクリとうなずき、同意してくれる。タロは俺の言葉に疑問を持ったようだが、今は無視だ。
「そう、か? そうは見えなかったが……まぁ、こちらから頼んでることだからな」
訝しげにしながらも納得してくれたハーレ。フィフィーの方は、ディアムをジーッと見ていたが、しばらくすれば視線を外してくれるだろう。
「それで、不正というのは、具体的にどんなものがあるか推測できる状態なのか?」
不正といっても、どんな不正を暴こうとしているのか、知っているのと知らないのとでは少しばかり勝手が違う。知識は多いに越したことはない。
「あぁ、それなら、横領と、地上の人間との不正取引だな」
横領は、説明されずとも分かる。しかし……。
「不正取引?」
それが、いまいち良く分からない。
「まだ、取引したモノが何かはっきりはしていないのですが、恐らくは、人間を奴隷として購入していたのではないか、というのが推測されています」
「奴隷……」
「他国がどうかは知らないが、この国では奴隷制度なんてないし、奴隷の売り買いは厳罰の対象だ。だから、その証拠が見つかれば、奴らを失墜させることも可能だ」
奴隷、ルビーナ商国との関係悪化……これは、無関係なのか?
奴隷制度を持つ国の中には、他国の人間のみを奴隷として扱う国もあると聞く。それも、嫌悪感情を持つ国の人間を手酷く扱うのだと。
ルビーナ商国への悪感情が高まれば、そして、戦争にでもなれば、奴隷制度ができるかもしれない。
それで得をするのは誰か、と問われれば、リリーヌ公爵家が上がる可能性は高い。
……考え過ぎ、か?
まだ、この国の情報をしっかりと把握できているわけではない以上、この推測は考え過ぎであるかもしれない。しかし、どうにも引っ掛かるのは確かだった。
……戦争、か……。
そこまで考えて、俺は一度思考を切り替える。今は、そのことを掘り下げていても仕方がない。
「分かった。できる限りのことはしよう」
そうして、俺達は話を詰めていくのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回、ちょっと多めの投稿。
うーん、でも、これ、仕事がある日は辛いかも?
それでは、また!
そう言ったハーレは、なぜか大きなワカメを取り出して、指を指す。
「リリーヌ公爵家っていうのはここで、ここが現在地なんだが、見て分かる通り、うちの騎士舎とリリーヌ公爵家はかなり近い位置にある」
なるほど、ワカメは紙の代わりか……。
そう納得して見てみると、ワカメが薄く削られて、確かに地図のようになっている。……紙に慣れていると、だいぶ見にくくはあったが。
「近過ぎて、警戒されている、とかか?」
何とか位置関係が分かった俺は、顔を上げてハーレへと尋ねる。
「いや、まぁ、それもあるんだが……何よりも、ここの使用人に顔を覚えられてるってことが問題なんだ」
「……なるほど」
確かに、頻繁に近所で会っている者が潜入するというのは難しい。と、いうことは……。
「俺達に潜入しろってことか?」
「うっ、それは、その……」
「できれば、それが一番です」
言葉に詰まるハーレの代わりに、フィフィーが前に出て答えてくれる。
潜入か……だが、そうなると、ディアムは無理だな。
残念ながら、今の俺達は魚人姿にはなっているものの、顔までは変えていない。……いや、あのタロの『幻術』によって変えられた顔になるのは、もう遠慮したいところだが、とにかく、顔は本来のものなのだ。つまりは……。
「すまないが、ディアムはその作戦からは外させてもらう。こいつは、あまり潜入には向いてないからな」
「にゃ? (うむ?)」
俺の意図が分かったらしいディアムはコクリとうなずき、同意してくれる。タロは俺の言葉に疑問を持ったようだが、今は無視だ。
「そう、か? そうは見えなかったが……まぁ、こちらから頼んでることだからな」
訝しげにしながらも納得してくれたハーレ。フィフィーの方は、ディアムをジーッと見ていたが、しばらくすれば視線を外してくれるだろう。
「それで、不正というのは、具体的にどんなものがあるか推測できる状態なのか?」
不正といっても、どんな不正を暴こうとしているのか、知っているのと知らないのとでは少しばかり勝手が違う。知識は多いに越したことはない。
「あぁ、それなら、横領と、地上の人間との不正取引だな」
横領は、説明されずとも分かる。しかし……。
「不正取引?」
それが、いまいち良く分からない。
「まだ、取引したモノが何かはっきりはしていないのですが、恐らくは、人間を奴隷として購入していたのではないか、というのが推測されています」
「奴隷……」
「他国がどうかは知らないが、この国では奴隷制度なんてないし、奴隷の売り買いは厳罰の対象だ。だから、その証拠が見つかれば、奴らを失墜させることも可能だ」
奴隷、ルビーナ商国との関係悪化……これは、無関係なのか?
奴隷制度を持つ国の中には、他国の人間のみを奴隷として扱う国もあると聞く。それも、嫌悪感情を持つ国の人間を手酷く扱うのだと。
ルビーナ商国への悪感情が高まれば、そして、戦争にでもなれば、奴隷制度ができるかもしれない。
それで得をするのは誰か、と問われれば、リリーヌ公爵家が上がる可能性は高い。
……考え過ぎ、か?
まだ、この国の情報をしっかりと把握できているわけではない以上、この推測は考え過ぎであるかもしれない。しかし、どうにも引っ掛かるのは確かだった。
……戦争、か……。
そこまで考えて、俺は一度思考を切り替える。今は、そのことを掘り下げていても仕方がない。
「分かった。できる限りのことはしよう」
そうして、俺達は話を詰めていくのだった。
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今回、ちょっと多めの投稿。
うーん、でも、これ、仕事がある日は辛いかも?
それでは、また!
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