我輩は紳士である（猫なのに、異世界召喚されたのだが）

第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百四十二話 侍従の募集

　侍従は募集していないという言葉によって、俺はすごすごと元来た道を戻り、ハーレ達が居る騎士舎へ向かう。


「バル？　戻ってきたのか？」

「あぁ、侍従は募集していないそうだ」


　ハーレの執務室へと通された俺は、早速訝しげに尋ねられ、そう返答する。


「うん？　それはおかしいな……確かに、侍従募集となっていたはずなんだが……」


　そう言って取り出したワカメには、何が書いてあるのか分からないが、ハーレはそれをじっと見て眉間にシワを寄せる。


「副隊長フィフィーです。報告に参りました。入ってもよろしいでしょうか？」

「あぁ、入ってくれ」


　ワカメから視線を外して、入り口の方を見たハーレにつられて、俺もフィフィーが入ってくるであろうその場所を見つめる。


「失礼します。？　バル？　なぜここに居るのですか？」


　ハーレと同じことを問われて、俺は同じ解答をする。すると、やはりフィフィーも眉間にシワを寄せて何事かを考え込む。


「フィフィー、とりあえず、それは後だ。報告を聞かせてくれ」

「あぁ、それじゃあ、俺はどこか別の部屋に行っておこうか？」

「そうだな。頼む」


　さすがに、機密に関わるかもしれない話を聞くわけにはいかない。もちろん、知れることなら知っておきたいが、今はその必要はないだろう。

　部屋を出れば、長い廊下がずっと続く通路に出る。


「さて、タロでも捜すか」


　一人で潜入したラーミアが心配ではないのか、と問われれば、ラーミアの実力を知っているため、さほど心配はしていないというのが本音だ。唯一、食事に関してはボスティア海国のものをそのまま食べれば腹痛を起こすこと間違いなしなので、心配ではあったものの、そこら辺は上手くやれるはずだ。


　それよりも、侍従を募集していたはずなのに、追い返された理由が分からないな。


　単純に、人員が集まったから、というのも考えられるが、侍従の募集はわりと多くあったはずなのだ。しかも、その募集自体、始まって二日しか経っていないという状況でもある。


「……ディアムと一緒に探るか」


　一応、ハーレに許可を取ってから探るべきだろう。主に、これから侍従として仕えようとする者の素性を。


「何が出てくることやら」


　少なくとも、何かはあると判断した俺は、フラフラと泳ぎながらタロを捜して時間を潰し、ハーレから呼び出されるまで泳ぐのだった。


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さて、バルディスが追い返されたのには、何か裏がありそうですね。

それでは、また！