我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第五章 ルビーナ商国とボスティア海国の闇

第五百四十四話 潜入捜査(三)

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 リリーヌ公爵家の侍女として仕え始めて三日目。案外早く、私は手がかりとなりそうな存在を見つけた。


「隠し扉、ですか……」


 仕事の合間に屋敷内を探索しているうちに見つけたそこは、見つけた当初、怪しい男達が入っていった場所だ。
 壁にかけられた絵を外すと現れる魔法陣。恐らくは、特定の魔力を注げば道が開かれるようになっているのだろう。このリリーヌ公爵家の当主であるローストを筆頭に、三人の男達が、魔力の注がれた魔法陣によって壁に現れた地下へと続く階段へと消えていったのだ。


 さて、このまま後をつけるか、一旦引くか……。


 私一人の潜入で、しかも、他と連絡がつかないという状態でなければ、私は迷わず前者を選択したことだろう。しかし、今、後をつけたことで私に何かあっても、誰も気づけないという事実が、私に行動をためらわせていた。


 ……ここは、慎重に行動することにしましょう。


 考えた結果、やはり、私は見送ることを選択する。せめて、バルディス達に連絡が取れる状況を作っておかなければ、今はどうにもならない。
 私は何食わぬ顔で元来た道を引き返し、お嬢様ことクリープに頼まれたお菓子を厨房に取りに行く。そして……。


「おそいっ、おそいおそいおそーいっ! いったいどこでちちくりあっていたのっ? かおがいいからって、おとこをたらしこむようなあばずれがわたしのじじょだなんて、よもすえねっ!」


 いったい、彼女はどこでそんな言葉を覚えてくるのだろうかと不思議で仕方なかったものの、青い鱗の尾をビッチビッチと跳ねさせて不機嫌を露にするぽっちゃり体型なお嬢様(?)を前に、私はにっこりと笑ってみせる。


「お褒めいただき、ありがとうございます」

「っ、どこがほめてるっていうのよ!」

「だって、顔が良いと言ってくださったではないですか? それは褒め言葉に他ならないでしょう?」


 そう皮肉を返せば、お嬢様は丸い顔を歪める。


「っ、あんたなんかきらいよ! あっ、そうだわ! あんた、にわをぜんぶそうじしてきなさいっ。おわるまで、ごはんはぬきよっ」

「かしこまりました」


 ここで、普通の使用人ならば絶望するところ、らしい。何でも、ボスティア海国では魔法を使える者はごく一部らしく、一介の使用人が使えるような力ではないらしいのだ。
 しかし、私は魔法が使える。しかも、水属性。海中をその魔法で掃除するなど、容易いことだった。しかも、時間がかかると思われているため、私はその空いた時間をたっぷり調査に使える。


 案外、あのお嬢様は単純バカなんですよね……。


 最初はどうなることかとも思ったが、案外、相性は良さそうだった。


 さて、今日こそ、連絡を取れるように頑張りますか。


 そうして、私は泳ぎ始めたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ラーミア、強い(笑)

いやぁ、バルディスもディアムも心配していますが、その必要はなさそうですよね。

さてさて、次回もラーミア視点です。

それでは、また!
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