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第一章 アルトルム王国の病
第五十三話 和解
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「バル、ラーミア、タロ、無事?」
「えぇ、皆無事です」
騎士達を全て倒したディアムは、我輩達に合流すると、魔族が消えた場所を見てわずかに眉を潜める。
「転移?」
「えぇ、それも、かなり遠い場所までですね」
話し込むディアムとラーミアを横目に、我輩、バルディスの方へと駆け寄る。
「にゃあ? (バルディス、腕はもう大丈夫なのであろうか?)」
「ん? あぁ、まだ万全とは言えないが、とりあえず動ける。大丈夫だ」
言いながら肩を回してみせるバルディスに、我輩、ホッとする。腕を落とされた時はどうなるかと思ったものの、どうやら腕というものは存外簡単にくっつけられるものだったらしい。
「それで、質問なんだが……どうしてここに、いや、それ以前に、どうやって俺達がここに居ると知った?」
朗らかな表情から一転、真剣な表情になったバルディスから問われて、我輩、思わずディアムへと視線を向けてしまう。
「? あぁ……バル、タロ、宿屋から一緒、着いてきた」
「何っ!?」
「にゃあ。にゃーにゃー(そうなのだ。姿を隠して、ずっと着いてきてたのだ)」
やはり、ディアムは我輩のことに気づいていたらしい。
ちょっとばかり残念なのだ。もしも、誰にも気づかれないようであれば、いずれ、誰かに食べ物を隠された時に活躍すると思ったのだが……。
まさか我輩がそんなことを考えている思わないバルディスは、我輩を見て、信じられないといった表情を浮かべる。
「タロが隠れていたことに、気づけなかっただと?」
ショックだと言わんばかりのその物言いに、我輩、ちょこっとカチンとくる。
うむ、ここは、言いたいことを言ってしまうのだ。
「にゃあにゃー(我輩、バルディスが思っている以上に強いのだ)」
「……あぁ」
「にゃにゃ(我輩、役に立つのだ)」
「そう、だな」
「にゃっ! (追い払うなんて酷いのだっ!)」
「……すまない」
うむ、謝罪は受け取ったのだ。気分も落ち着いたのだ。だが、それでは足りない。
「うにゃん(我輩、ささみ肉で手を打つのだ)」
「さ、さみ? ……ぷっ、くははははっ」
「にゃーっ。にゃにゃあっ(なぜ笑うのだっ。ささみ肉は美味なのだぞっ)」
突然笑い出したバルディスに、我輩、憤慨してテシテシとバルディスの足を叩く。
「にゃーっ。にゃっにゃっ(これっ、笑うでないっ。ささみ肉を寄越すのかどうか、答えるのだっ)」
「ははははっ、はぁ、ぷっ、くははっ、はぁ、はぁ……わ、分かった。分かったから、宿屋に戻ったら、ちゃんと用意してやるから。はぁ、それで、仲直りだな?」
ようやく笑いの発作が収まったバルディスは、我輩にそう約束してくれる。
「にゃあ。にゃあ。にゃ(うむ、そうなのだ。ありがとうなのだ。バルディス)」
会話が一段落すると、ディアムとラーミアがバルディスに我輩との会話を聞き出し、我輩に謝罪とささみの献上を約束してくれる。ただし……なぜか全員が笑うのだが。
ディアムもラーミアも、隠しているつもりだろうが、肩が震えているせいで笑っているのが丸分かりなのだ。
そうして、納得がいかないながらも一息吐いた我輩は、ふと、何か頭の中で引っ掛かるものを感じる。
「にゃ? (何か、忘れているような?)」
「どうした? タロ?」
「にゃーにゃあ(何か大切なことを忘れている気がするのだが、何か分からないのだ)」
「何かと言われてもなぁ……まぁ、そのうち思い出すだろ」
その後、宿屋に戻った我輩は、宿屋の前でしょんぼりとしたその者の姿を見て、ようやく思い出す。
「にゃあぁあっ(師匠ぉぉおっ、どこ行ってたんですかぁぁあっ)」
「にゃーっ(す、すまないのだーっ)」
我輩、チャーのことを忘れていたのだ。守るためにも一緒に居ようと言っていたにもかかわらず、置いてきてしまっていたのだ。
涙目で抗議するチャーの姿に、我輩、今後は忘れまいと、猛省するのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
書けるかどうか、と思っていましたが、どうにか書けました。(やったね)
そして、ファンタジー小説大賞も始まりましたね。
この作品も応募しているので、よかったら投票してください。
それでは、また!
「えぇ、皆無事です」
騎士達を全て倒したディアムは、我輩達に合流すると、魔族が消えた場所を見てわずかに眉を潜める。
「転移?」
「えぇ、それも、かなり遠い場所までですね」
話し込むディアムとラーミアを横目に、我輩、バルディスの方へと駆け寄る。
「にゃあ? (バルディス、腕はもう大丈夫なのであろうか?)」
「ん? あぁ、まだ万全とは言えないが、とりあえず動ける。大丈夫だ」
言いながら肩を回してみせるバルディスに、我輩、ホッとする。腕を落とされた時はどうなるかと思ったものの、どうやら腕というものは存外簡単にくっつけられるものだったらしい。
「それで、質問なんだが……どうしてここに、いや、それ以前に、どうやって俺達がここに居ると知った?」
朗らかな表情から一転、真剣な表情になったバルディスから問われて、我輩、思わずディアムへと視線を向けてしまう。
「? あぁ……バル、タロ、宿屋から一緒、着いてきた」
「何っ!?」
「にゃあ。にゃーにゃー(そうなのだ。姿を隠して、ずっと着いてきてたのだ)」
やはり、ディアムは我輩のことに気づいていたらしい。
ちょっとばかり残念なのだ。もしも、誰にも気づかれないようであれば、いずれ、誰かに食べ物を隠された時に活躍すると思ったのだが……。
まさか我輩がそんなことを考えている思わないバルディスは、我輩を見て、信じられないといった表情を浮かべる。
「タロが隠れていたことに、気づけなかっただと?」
ショックだと言わんばかりのその物言いに、我輩、ちょこっとカチンとくる。
うむ、ここは、言いたいことを言ってしまうのだ。
「にゃあにゃー(我輩、バルディスが思っている以上に強いのだ)」
「……あぁ」
「にゃにゃ(我輩、役に立つのだ)」
「そう、だな」
「にゃっ! (追い払うなんて酷いのだっ!)」
「……すまない」
うむ、謝罪は受け取ったのだ。気分も落ち着いたのだ。だが、それでは足りない。
「うにゃん(我輩、ささみ肉で手を打つのだ)」
「さ、さみ? ……ぷっ、くははははっ」
「にゃーっ。にゃにゃあっ(なぜ笑うのだっ。ささみ肉は美味なのだぞっ)」
突然笑い出したバルディスに、我輩、憤慨してテシテシとバルディスの足を叩く。
「にゃーっ。にゃっにゃっ(これっ、笑うでないっ。ささみ肉を寄越すのかどうか、答えるのだっ)」
「ははははっ、はぁ、ぷっ、くははっ、はぁ、はぁ……わ、分かった。分かったから、宿屋に戻ったら、ちゃんと用意してやるから。はぁ、それで、仲直りだな?」
ようやく笑いの発作が収まったバルディスは、我輩にそう約束してくれる。
「にゃあ。にゃあ。にゃ(うむ、そうなのだ。ありがとうなのだ。バルディス)」
会話が一段落すると、ディアムとラーミアがバルディスに我輩との会話を聞き出し、我輩に謝罪とささみの献上を約束してくれる。ただし……なぜか全員が笑うのだが。
ディアムもラーミアも、隠しているつもりだろうが、肩が震えているせいで笑っているのが丸分かりなのだ。
そうして、納得がいかないながらも一息吐いた我輩は、ふと、何か頭の中で引っ掛かるものを感じる。
「にゃ? (何か、忘れているような?)」
「どうした? タロ?」
「にゃーにゃあ(何か大切なことを忘れている気がするのだが、何か分からないのだ)」
「何かと言われてもなぁ……まぁ、そのうち思い出すだろ」
その後、宿屋に戻った我輩は、宿屋の前でしょんぼりとしたその者の姿を見て、ようやく思い出す。
「にゃあぁあっ(師匠ぉぉおっ、どこ行ってたんですかぁぁあっ)」
「にゃーっ(す、すまないのだーっ)」
我輩、チャーのことを忘れていたのだ。守るためにも一緒に居ようと言っていたにもかかわらず、置いてきてしまっていたのだ。
涙目で抗議するチャーの姿に、我輩、今後は忘れまいと、猛省するのであった。
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