我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第二章 反撃のサナフ教国

第百三十一話 異常と相談

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「にゃ。にゃあ(一つは騎士達が良く行く場所の情報。もう一つは、異常な場所の情報なのだ)」


 タロがもたらしたその情報は、あまり重要性を感じるものではなかった。


「騎士の動向はディアムが掴んでいるしなぁ。一応、後で詳しく聞くが、まずはその『異常な場所』について詳しく教えてくれ。どう異常なんだ?」


 騎士の動向に関しては、後でディアムの情報とタロの情報を照らし合わせた方が早いだろうと思い、後回しにした俺は、もう一つの情報の方へと興味を示す。ディアムの報告では、そんな場所の情報はなかったように思う。


 ……ただ単に、猫目線で異常と思えるだけで、本当はなんでもないのかもしれないがな。


 しかし、大した期待もせずに聞いた俺は、次の瞬間、意識を変えることとなる。


「にゃー(そこは、死の気配が溢れているらしいのだ)」

「何?」

「にゃーにゃ……にゃあにゃあ(そこに出入りする人間達は確かに居るようなのだが……入って行く生き物の数と、出てくる生き物の数が合わないらしい)」


 どうやら、これはまた穏やかではなさそうな情報だ。この情報が、ただ単に動物を虐待して楽しむ人間の仕業というだけなら、そこまで深刻に捉える必要はないだろう。しかし、タロは『人間』と言った。一人ではない、複数の人間が、それに関わっているとなると、ただの動物虐待ではない可能性が出てくる。


「場所は?」

「にゃあにゃ(騎士の詰め所の奥にある建物で、地下らしいのだ)」


 それを聞いて、俺は嫌な予感に駆られる。そんな場所に、人間達が生き物を運んで、戻ってきたら、生き物の数が減っている。そうなると、それはミルテナ帝国が何らかの動物実験を行っているかもしれないという考えに行き着く。明らかに重大情報だ。


「分かった。それは、ディアムにまた調べてもらおう。他にはないか?」

「にゃ……にゃあ(他……その、少し相談したいことがあるのだ)」


 相談? タロが?


 珍しいこともあるものだと、タロをマジマジと見つめると、タロは耳をしゅんと垂らして俺を見上げる。


「にゃにゃー(マウマウが多すぎて苦しんでいる同胞を、どうにか助けてあげたいのだ)」


 それは、とてもタロらしい相談だった。


「そんなにマウマウは多いのか?」

「にゃ(アルトルム以上に多いのだ)」


 さすがにマウマウのことにまで意識を向けていなかった俺は、タロの言葉でアルトルムでのことを思い出す。


「まさか、またチャーみたいに、猫がマウマウに脅されてるってことはないだろうな?」

「にゃ。にゃー(それは多分ないのだ。マウマウは昔から多かったそうなのだ)」


 『我輩、ちゃんと聞いてきたのだ』と褒めてほしそうにするタロに、俺はとりあえず喉をくすぐってやる。


「ゴロゴロゴロ(気持ち良いのだ)」

「ふむ、となると、人間がマウマウの退治に意識を向けられない状況が原因かもしれないが……昔というのがどれだけ前なのかが問題だな」

「にゃ? (うむ?)」

「まぁ、でも、対策は考えておいてやるから、安心しろ」

「にゃっ(分かったのだっ)」


 猫の昔は、一月前なのか、一年前なのか、それとももっと前のことなのか分からない。人間のようにその日その日を記録しているわけではないから、きっと同じ猫にどれだけ前のことなのかを尋ねても、上手い答えが返ってくることはないだろう。
 ただ、マウマウは人間にとって疫病を持ってくる害獣でもある。そのマウマウが多いとなると、一番に考えられるのが、マウマウを退治する力が人間になくなっているということだ。理由としては、そこに住んでいる人間が少ないだとか、病が流行って動ける人間が少ないだとか、迂闊に外に出られない状況に置かれているなどだろう。とにかく、人間が動かないことで、マウマウの繁殖に拍車がかかるのは確かだ。
 そして、ここ、元サナフ教国においては、きっと、騎士が巡回していて、迂闊に外に出られない人間が多いことが原因だろう。つまりは、クーデターさえ成功すれば、そして、国民の生活が安定してくれば、マウマウも減る可能性があるというわけだ。

 俺に絶大な信頼を寄せて喜ぶタロを見て、俺は、必ずクーデターを成功させなければと改めて感じるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


タロはしばらく出ないとか言っておきながら、それなりに出てますね……。

ちょこっと出せたら良いなぁがガッツリになった形でしたが、まぁ、これはこれで良いのかもしれません。

そして、お気に入り登録が着々と増えていて、嬉しい限りです。

この『反撃のサナフ教国』は、『アルトルム王国の病』よりも長くなりますが、楽しく書いていきますので、面白おかしく読んでもらえると嬉しいです。

それでは、また!
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