我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第百九十四話 バルディスの冒険(一)

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「……不味いな」


 ディアムから『くれぐれも変なことをしないように、勝手に調査に向かわないように』という内容の厳重注意を受けていた俺は、大人しく宿屋で待機しているところだったが、ディアムとタロの二人がラーミアの捜索に向かった直後、俺はある危機を思い出していた。


「もう、路銀が少ない」


 そう、アルトルム王国で宿屋に泊まったり食料を調達したりした分と、サナフ教国でラーミアに別れ際渡した分、そして、このセイクリア教国でアルトルム王国と同じことをしたことで、持っていた路銀は少なくなっていた。


「管理はラーミア任せだったからなぁ」


 アルトルム王国では、ファルシス魔国から持ってきていた価値のあるものを、ラーミアが切り売りして路銀を稼いでいた。俺もディアムも、どんな店が良心的な価格で取引してくれるのか分からないし、店の者とのやり取りも上手くできない。それを全て理解し、一手に担っていたのがラーミアであったため、今、俺は大変困っていた。


「残りの宝石を売るにしても、下手に悪徳な商人に捕まって騒ぎになっても困るしな」


 魔族であるため、極力目立つ行動は避けねばならない。そうなると、穏便な取引ができるかどうか不安な俺達では、持っている宝石を売買することはできない。こんなことなら、サナフ教国で換金してしまえば良かったとも思ったが、結局のところ、後の祭りだ。後悔しても何の解決にもならない。


「となると、他の稼ぐ方法……冒険者ギルドなら、ぼったくられることもないだろう」


 誰も居ない宿の部屋で、勝手に今後の方針を決めると、俺は早速ローブを被って部屋から出る。すでに、ディアムからの注意は頭にない。


「宿の主人、少し出掛けてくる。連れが先に帰ってきたら、鍵を渡しておいてくれ」

「はいっ、いってらっしゃい」


 万が一、ディアムより後に帰ってくることになった場合を考えて、俺は宿の主人に鍵を渡しておく。


「あぁ、それと、冒険者ギルドはどこだ?」


 そうして、冒険者ギルドの場所を聞き出した俺は、ラーミアやディアムが一緒に居れば絶対に止められるであろう冒険者登録に向かう。目的はただ一つ。手っ取り早く路銀を稼ぐためだ。


「ようは、目立たない程度に色々狩ってくれば良いわけだからな」


 俺の頭にあるのは、ただひたすら目立たないこと、のみ。目立ったせいでラーミアの捜索を妨害するわけにはいかない。

 宿屋の主人に聞いた道を行き、冒険者ギルドへと辿り着いた俺は、意気揚々とその扉を開くのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


今回は久々の(?)バルディス視点です。

いやぁ、冒険者ギルドは絶対に出したかったので、とても良い機会でした。

どんな冒険になるかは、次回以降でまた楽しく書いていきますね。

それでは、また!
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