我輩は紳士である(猫なのに、異世界召喚されたのだが)

星宮歌

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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百十五話 タロとラーミア(四)

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 ラーミアが元に戻った。そのことに喜びを胸一杯に感じた我輩は、感極まってラーミアへとすり寄り、声をかける。


「にゃあっ。にゃ――(ラーミアっ。ラーミ――)」


 ギュム。

 しかし、なぜか、我輩、ラーミアに体を掴まれた。


「に、にゃ? (ラ、ラーミア?)」


 我輩、ラーミアにモミモミされ、抱っこされ、撫で回される。


「このモッチリ感」


 モッチリ感!?


「このズッシリ感」


 ズ、ズッシリ感!?


「紳士服を着てもなお、はみ出す白い肉の塊」


 しっ……白い、肉、の……塊!?


「まさしく、タロですね」

「ふ、ふにゃ……(よ、容赦ないな……)」


 大満足といったラーミアとは対照的に、我輩、心に大きな傷を負って呆然とする。


「とりあえず、ここも人気はありませんが、より人が来ない場所に移りましょう」


 そんな声が聞こえた気がしたが、我輩、ラーミアに抱きかかえられたまま、身動き一つ取れないほどに打ちひしがれるのだった。








「さて、この辺なら良いでしょう」


 地面にそっと降ろされて、我輩、フラフラと数歩歩く。


「現状の説明をお願いしたいのですが……その前に、あの猫は協力者ですか?」

「に、にゃあ(う、うむ、そうなのだ)」


 ショックが抜けきらないままに問いかけられ、我輩、とりあえず首肯して返事をする。しかし、そこではたと気づく。


 これ以上ブチを巻き込むのは良くないこと、であろうか?


 今の問題は、我輩達の問題でしかない。そこにブチをいたずらに巻き込むのは、ブチ自身を危険に晒すことと同義だ。ブチには色々と助けてもらいはしたものの、ここらが潮時かもしれない。


「にゃ……(ブチ……)」

「ふにゃん。ふにゃあ。ふにゃ(俺はそこら辺を警戒して来よう。話し合いが終わったら呼んでくれ。ちゃんと道案内役は果たす)」


 ブチにこれ以上関わらせないために、どう言葉を尽くそうかと考える前に、我輩、ブチからそんな申し出を受ける。それはまるで、我輩の心を見透かしているようでもあったが、不思議と嫌な気持ちにはならない。


「にゃ(よろしく頼むのだ)」


 気を利かせてくれたブチに感謝の念を覚えながらも、それを口にすることなく、ただ頭を下げる。


「ふにゃん。……ふにゃ(任せとけ。……でも、マウマウに襲われる前に来てくれよな)」

「にゃあ(もちろんなのだ)」


 この教皇庁にマウマウが居る気配はないものの、ここが敵地である以上、何が起こるか分からない。我輩、ブチの危機には必ず駆けつけようと決意して、ブチの後ろ姿を見送る。


「にゃ(お待たせなのだ)」

「あの猫は、よかったのですか?」

「にゃ(大丈夫なのだ)」


 ブチの姿が見えなくなってから問いかけてきたラーミアに、我輩、大きくうなずく。


「では、私が念話をすると今は感知される恐れがあるので、『人化』をしてもらっても良いですか? 状況を詳しく知りたいので」

「にゃ(もちろんなのだ)」


 我輩、一にも二にもなくうなずくと、『人化』を発動させるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……にゃ、あ? (……感動の、再会は?)」

………………そんなものは、予定プロットになかった、です。

「……にゃ? (……感動のハグとか、は?)」

……頑張って、脳内補完してください。

「……にゃー(……ダメージばかり受けた気がするのだ)」

大丈夫っ。

タロは強い子!

「にゃあ……(感動の再会……(涙目))」

…………そ、それでは、また!
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