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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百二十九話 黒装束との取引(二)

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「ラーミアって、あの薬師殿か?」

「あぁ、お前が思ってる奴で間違いない。ラーミアも、つい最近まで操られていたが、今はタロに術を解いてもらっている」


 どうやら、ラーミアは聖騎士達の中でも知られているらしい。


「いや、しかし、薬師殿が操られていたとは、いったい……」

「ラーミアは、教皇を助けるための薬ではなく、毒を盛るよう指示を受けていたらしい。あぁ、今は問題ないぞ? ちゃんと解毒薬を処方しているはずだ」


 『毒を盛る』というくだりで縛られているにもかかわらず立ち上がりかけた男に、バルディスはすぐさま現状を伝えて制止する。


「……ならば、教皇陛下は助かるのだな?」

「いや、それがそうでもない」

「何?」

「その教皇陛下は、呪いを受けているらしい。それもお前達を操った奴が裏で糸を引いているようだがな」

「ちょっと待て! ついさっき、解毒薬を処方していると言ったではないかっ! 話が違うぞっ!」


 バルディスに掴みかからんばかりの勢いで話す黒装束に、バルディスはあくまでも冷静に返す。


「具体的には、毒と呪い、両方を受けていたんだ。それで、ラーミアは毒の方を何とかしてくれているってわけだ」

「そ、そんなっ……」


 事態がどれほど深刻なものであるかを知らされた黒装束の男は、蒼白な顔でうつむく。


「……俺達も、まだ操っている奴の全容は把握できていない。ただ、聖騎士の半数以上がそいつに操られていて、何かの召喚陣のために生け贄を集めていることは知っている」

「召喚……陣?」

「そうだ。『入らずの祠』の奥に仕掛けがあって、その先に召喚用の魔法陣と、無数の生け贄となった者達の遺体が転がっている。そこに居る男も、その遺体の一つにされそうだった人間だ」


 その言葉に、黒装束の男ははじめて、青年の姿に気づいたらしい。驚愕の表情を浮かべて、じっと青年を見つめる。


「彼が……生け贄に?」

「『操術』で操られて、自殺を命じられていたらしい。自殺をしそうになったところで、タロが助けてくれたらしいぞ」

「にゃ(そうなのだ)」

「もしかしたら、聖騎士達に一般人を連れてこさせて、『操術』をかけては殺していたのかもな」

「なっ!? そ、そんな。俺達は、俺達は、何て、ことを……」


 バルディスの推測に、心当たりでもあるのか、黒装束の男は今にも倒れそうなほどに顔を青くする。


「そこで、相談だ。俺達は、この事件の中心となっている奴を捕らえて報復したい。もしくは、殺害してしまって、後顧の憂いを絶っておきたい。そうすれば、ラーミアは安全だろうからな。それに対して、お前達は何がなんでも操られた雪辱を果たしたい、だろう? なぁ、俺達は、協力できるとは思わないか?」


 そう問いかけたバルディスに、黒装束の男はショックが抜けきらない状態のまま、うなずくのであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


更新が遅くなるかと思っていましたが、いつも通りに更新できました。

よかったよかった。

さてさて、それでは今回の話についてですが……ちょっぴりバルディスが悪役に見えるような……?

いや、これでも魔王だから、これで良いのかも?

次回も引き続き『黒装束との取引』です。

それでは、また!
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